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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
陰謀編

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税金と商工ギルド

 簡単に税金の話をしよう。

 この世界にも様々な種類の税金がある。例えば、住人一人一人に掛けられる人頭税や地代等々。

 ただこのエルフの町はそれらが比較的に緩い。

 それには大きい要因が二つある。

 一つ、税金という概念は王都を中心とした人間が考え出した制度であり、エルフや獣人にその概念は薄い。

 二つ、大陸全土に広がる大森林。その中に存在しているエルフの町。王国内にありながらも、アバンセがいる事により、非公式ではあるが自治権を得ていた。

 しかし今回……


「シノブ。商工ギルドからよ」

 お母さんの手には一通の手紙が。

「ついに来たんだ? もう中身は見た?」

 今まで好き勝手やってきたが、すでにうちの商品は交易都市や王都の方でも使われている。王国の商工ギルドも無視は出来ないって事だ。

 ちなみに商工ギルドとは商人達の相互扶助の為に作られた団体であり、要するに俺達も商工ギルドへ加われって連絡だろ。

「シノブも自分の目で確かめなさい」

 俺は手紙を受け取り、目を通す。

 まずは商工ギルドへの加盟。加盟をしなければ俺の商会の商品は王国内で販売が出来なくなる。それは分かる。だが、そのギルドへの加盟金……目玉が飛び出る程に高い。今まで貯めた分が全て吹き飛ぶぞ。むしろ足りなくない? さらに。

「年間で売上の10パーセントを王国、8%を商工ギルド、合計で18%も納めろだって」

「そうね」

「私の記憶が確かなら、他の商会は合計で2~3%の間だったと思うんだけど?」

「そうね」

「お店が成り立たないんだけど?」

「そうね。でも続きを読んで」


 ……ちょっと待てや。

 パル鉄鋼の独占を止める事により、加盟金や売上税の下方修正を検討するらしい。

 つまりこれは『パル鉄鋼を寄越さなきゃ商売はさせない』という嫌がらせだ。

「……ねぇ、お母さん。こんな事が成り立つの?」

「シノブのお店は後ろ盾の無い、まだまだ小さな商会だから。それにパル鉄鋼はそれだけ価値のあるものなの。倫理や規則を無視してでも手に入れたいの」

「じゃあ、もう充分に稼いだし、仕事辞めちゃう?」

「ちゃんと全部読んだ?」

「まだだけど……」


 ……塞いでくるね~逃げ道を。

 返答によっては、商工ギルドを通さず商売をした事により罰金が発生するそうです。罰金を払わない場合は懲役刑も。

 今あるお金を従業員に配って終わりというワケにはいかねぇ。

「シノブはどうするつもり?」

「まずパル鉄鋼の扱いを止める。あれは個人的にパルから仕入れてて、他に回すのは無理だし」

「でもそれじゃ商工ギルドは納得しないでしょうね」

「だから私もお母さんの言う後ろ盾を得ようと思って。大きな商会に身売りするよ。実は前々から考えてたんだよね。それでこっちの意見を強引に捻じ込むつもり」

 長い時間があれば少しずつ商会を大きくする事も出来た。ただ急激な売上増加に、商会の成長が付いていかない。

 何処かでこうなる気はしていた。

「でもここまでうちの名前が有名になれば、取り込まれても簡単に潰す事は出来ないだろうし。それに乗っ取られたら乗っ取られたで、また最初から始めれば良いよ」

「そこまで考えているなら、お母さんは何も言わない。当てがあるのね?」

「うん。スヴァル海商。あわよくば大陸の向こう側も狙っちゃおうかなって」

 王国には四大商会と言われる、特別に大きな商会が四つある。その一つがモア商会。本当ならお母さんの仲介でモア商会と繋がりが持てれば良いんだけど、現状では無理っぽいし。

 そしてもう一つがスヴァル海商。名前の通り、海路を主に利用し、大陸の向こう側とも商売をしている大きな商会である。

「会えるの?」

「まぁ、ヤミに相談すれば大丈夫だと思う」

「麗しの水竜ヤミ? まさか知り合い?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「初耳よ。まさか自分の娘が五竜のうちの四人と知り合いなんて……全く、あなたって子は……」

「夢はでっかく世界征服ですから」

「それも初めて聞いたわ」

 お母さんは笑うのだった。


★★★


 今回は遠いのでサンドンの所の瞬間移動装置を使わせてもらう。ちょうど目的地にガーガイガーの道場があるみたいだしな。

 毎度だけどサンドンを紹介したら、みんな度肝を抜かれていたよ。

 ちなみに今回もお店はレオにお任せ。そのレオも伝手で商工ギルドに探りを入れてくれるらしい。助かるわぁ~


 巨大な湖の中心。

 そこに一つの都市が浮かぶ。

「凄く綺麗な所です……」

 キオは周りを見回す。

 いくつもの清浄な水路が走る水都。

「この美しさ、観光地として人気があるのも分かりますね」

 ホーリーの言う通り、水都はこの大陸全体で見ても有数の観光地。日の光が水路に反射して、全てがキラキラと輝いて見えた。

「姐さん、ヤミとも知り合いなんてマジっすか?」

「マジっす」

 この水都を有名にするのはその美しさだけではない。ここは麗しの水竜ヤミの住処でもあるのだ。

「サンドン様にヤミ様……もうシノブ様にどんな交友関係があっても驚きません」

 そんな事を言ってるホーリーだけど、アリア様とも会った事あるなんて言ったら、やっぱり驚くんだろうな。


★★★


 そこはまるで神殿。

 白い石に網目の模様が入る。大理石だろうか。滑らかな美しい石で神殿は造られていた。

 高く太い柱が何本も立ち並ぶ。高い天井にはいくつも窓が取り付けられ、明るい日の光が建物の中を満たしていた、その中心。大理石で作れたらプールの中。

「シノブ、ヴォルフラム。久しぶりね」

「久しぶり」

「会ってくれてありがとう、ヤミ」

 光と水の中、美しく輝く青白い鱗。麗しの水竜はそこにいた。

「そちらの方々は?」

「私のお店を手伝ってくれるキオとミツバさん。こっちはメイドのフレアとホーリー」

「初めまして。ヤミよ」

「キ、キキ、キオです……」

「そんなに緊張しないで……キオは珍しい目をしているのね。カトブレパスの瞳かしら?」

「は、はは、はい、そ、そうです」

 ヤミはキオをジッと見詰めて……優しい声で言う。

「それに可愛いわ」

「あ、ああ、あああああっ」

「ちょっとキオ、落ち着いて。悲鳴みたいになっちゃってるから。ほら深呼吸、すーはー」

「すーはー、あ、ありがとうございます」

「シノブとの関係は上手くいっている?」

「当り前じゃん。ねぇ、キオ?」

「は、はい……わ、私もそう思います……」

「シノブの事は好き?」

「も、もちろんです……シノブさんは私を助けてくれた……す、凄く大事な人です……」

「そうなの。羨ましいわ。そんな素敵な関係が築けて」

 荒々しい姿をするアバンセやパルとはまるで印象が違う。穏やかな美しい竜だ。ヤミは言葉を続ける。

「フレアとホーリーは姉妹ね」

「はい、姉のフレア・ファイファーです」

「妹のホーリー・ファイファーです。二人ともシノブ様のメイドをやらせていただいております」

「姉妹の仲は良いのかしら?」

「……悪くは無いと思います」

 一瞬だけ、ホーリーの回答が遅れる。質問の意味を計り兼ねたのだろう。

「あなた達にとってシノブはどんな存在かしら?」

「まだメイドとなり期間は短いのですが、それでもシノブ様は一生を賭けて仕える価値のある方だと思っています」

「それは主としてでしょう? 人としてシノブをどう思っているの?」

 少しだけ間を置いてホーリーは言う。

「生意気な妹でしょうか」

「ちょっと、ホーリー?」

「でも……優しく、誰かの為に行動するシノブ様を年下ながら尊敬もしております」

 そのホーリーに続けてフレアは微笑みながら付け加える。

「大好きです」

 普段はあまり喋らないフレアだからこそ、その言葉は嬉しい。

「仲良しメイド姉妹にシノブとキオ……美しいわ」

 ヤミは呟いた。

「俺がミツバっす。ドワーフやってます」

「そう。ところで、話は手紙で知っているけど、私は仲介するだけ。シノブに有利になるような口利きはしない。それで良いのね?」

「もちろん。話を通して面会の機会を作ってくれただけでも充分過ぎる程だよ」

 スヴァル海商の創始者はこの水都で産まれ育ち、今の代表は三代目。三代前からヤミとの繋がりがあるのだ。

「ヴォル兄、ちょっと俺の反応だけ冷たくないっすか?」

「ヤミの性格はちょっと変わっている、ってシノブが」

「それが関係しているんすかねぇ……」

 そんなヤミへのお土産がこれである。

「ヤミ。ヤミにこれを持って来たんだけど」

「本……かしら?」

「そうだよ」

「この姿では読み辛いわね」

 ヤミの姿が光に包まれる。そして次の瞬間、その光の中から現れたのは全裸の女性だった。

 年齢的には二十代の真ん中くらいに見える。均整の取れた女性らしい体付き、整った顔立ち、そして日の光に輝く青白い髪。水の中に佇む彼女の美しさに、みんな一瞬言葉を失う。

 この世界で俺に美女を二人挙げろと言われたら、一人は女神アリア様、そして麗しの水竜ヤミかも……ま、まぁ、俺もお姉ちゃんも負けてはいないと思うけどね!!

「……凄ぇな……」

 ミツバが感嘆の声を上げるが、そのミツバの前にフレアが立つ。

 そしてホーリーが静かに言う。

「ミツバ様、少し後ろを向いてて下さいね」

「お前、だってあんな姿、滅多に」

「ミツバ様」

「はい……」

 ヤミの足元から水が生物のように立ち登る。それはヤミの体に巻き付き、服を形成した。揺れる水のローブだ。

「ありがとう。でもどうしてこの本を私に?」

「読んでみたら分かるよ」

 俺はニコッと笑った。

 そしてヤミはページを捲って……

 ……

 …………

 ………………

「……ちょ、ちょっと、シノブ……これは何? 今はこういうお話の本があるの?」

「少ないけど昔からあったよ。ただヤミはこういうのと接点は無いだろうと思ったから、お土産に良いんじゃないかなってね」

「素敵だわ……素敵過ぎる……」

「ぜひお納め下さい」

 それは女性と女性の恋の話。濃厚な性的描写も有りの百合物語。

 最初に会った時から感じていた……麗しの水竜ヤミはガールズラブが大好きなのだ!!


 とにかく俺はこうしてスヴァル商会三代目、オウラー・スヴァルと顔を合わせる事になるのである。

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