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第66話 魔術哲学

 結局、撤去作業は昼休みを半分潰すほど、ギリギリまでかかってしまい。

          

 次の授業の開始時刻が迫り、急ぎ足で講義室に向かうこととなった。

 

 二人には言ってないが、出来れば次の授業は絶対に出席したい。


 この学院に入学して3週間で、様々な講義を受けたが、この学院で俺が一番熱心に授業を聞いていて興味を持っているのが、何かと問われたら、迷いなく答えることができる。


 それは、魔術哲学である。


 いや別に、存在や現象や思想の真理を追求したいとか、そういった事を考えるのが特別好きだという訳ではないが。


 この講義を受けることで、俺が魔術師として、戦うことへのヒントを貰い、答えを導き出せる気がしたからだ。



「はぁ……なんとか間に合った」


 講義室の中に入ると、あまり人気がない講義なのか、まだ今日で3回目だというの空席が目立つ。先生はもう来ており、始まりの刻になるのを待っていた。

 

「どうやら、出席者は全員揃ったようだね。さて、今日の講義をはじめるよ」


 俺達が席に着くのを、確認して先生は教壇に立つ。


 今日の講義のテーマは『魔術式内包の理解から、外的魔術式への転換と算出は可能か』だった。

          ・

          ・

          ・


「ねぇねぇ、ユウが選択するって、言うから何となく合わせて受けてるけど……。この授業、正直おもしろいかな〜?」


 講義が始まり、20分余が経った頃。マナは退屈で眠めたいのか、ポア〜と気だるそうにしている。窓際のポカポカ陽気にあたり、睡魔に襲われているのだ。


 少し思っていたが、マナは絶対つまらないモノには蓋をするタイプだな。


「何言ってだよ。おもしろいし、興味深いだろ。ほら、この前の『魔術による神の存在証明とその正体について』なんておもしろかったじゃんか。

 わからなかったなら、今から俺の解釈を教えてやろうか」


「えぇ〜……めんどくさいから別にいいよ」


「まてまて。せっかく受けてるんだから、面白くなるように、手伝ってやるって」


「ユウって、たまにうっと……。やっぱり何でもない」


「なっ! そこで止めるなよ、気になるだろ!」


「ふたりとも、うるさいっ!! 集中できない!」


 横で授業に集中していたエリカに怒られてしまった。 


「すみません」

「ごめんなさい」


 周りからはクスクスという小馬鹿にする笑い声が聞こえた。恥ずかしい……。熱くなり過ぎた、少し反省せねば。


「後ろの三人……講義中は静かにね」


 先生も優しい物腰で、俺たちを軽く注意した。


 この魔術哲学の授業を受け持っているクロード先生は実は有名人である。まぁ、どちらかというと、悪い方で名が知れ渡っているんだが。

 

 先生は昔、命の魔術師の名で活躍していた研究者であった。

 その名の通り、魔術師の中でも命に関わる魔術を使うことで知られている。


 見た目は若々しく、二十代後半といったところで、銀髪に整った顔。さらに高身長とハイスペックだ。

 ただ、実はこの見た目で齢300を越えており、その年齢に反した若い見た目こそが先生の研究成果の一端であり、人間という生物の領域を超えた罪の象徴ともいえるだろう。

 

 さらに先生は、人としての論理に反する魔術式を沢山、過去に開発しているらしく、真偽は不明だが中には死者を生き返らせる魔術もあったと云われている。


 今、先生の研究は全て、国の管理下の元で実施。そして昔の異端な研究の全て凍結されているとか。


 ちなみに先生が開発した魔術の中で今尚、使用が許可されている魔術は、先生著作の本として数本が出版されているが、特殊な魔術理論なため、本人以外誰にも解読できていないらしい……。


 そして、俺が先生の講義に興味を持ったのは、それらの功績によるものだけではなく。三百年以上も、この人間と魔族が混在した世界で生きてきた人の思考に強く抱いたからである。



 今日の講義が終わったあと。


「う〜ん。結局わかんなかった。あとで解説はいらないから、こたえ教えてよ〜」


 マナは途中から関係のない本を読んでいたくせに、この言いぐさである。


「いやなぁ……哲学に答えはないんだよ。疑問への思考。そして、その過程が一番大事なんだから、自分で考えろって」


「えぇ〜考えても答えが出ないから、困ってるんじゃん」


「お前、さっきサボって推理小説読んでたくせに、考えるのが苦手ってどういうことだ?」


「推理小説の考えると、哲学のそれは別物だって。それに私は読んでる間もほとんど考えてないよ。謎が綺麗に解かれる様を読むのが、好きなの」


「なんて偏った楽しみ方してんだ……」


「そんなの人それぞれだよ。

 さぁ、はやく答えをくださいな」


「はぁ……エリカ教えてやれ」


「なんで、私……。ていうか、答えだけを教えるなんて無理だから」


「えぇ〜! じゃあ、いいよもう〜」


 俺はこの態度を見て、本当にマナの将来に不安を覚えた。


 授業中の居眠りと内職……。それでは、外観だけ真面目な不良生徒だ。

 

 このままいって、一緒に卒業を迎えることができるのか心配だ。


「な〜に、ふてくされやがる。諦めんなよ」


「ムリ…………早く答え、ちょう……だい」


「駄目だコイツは……」


 するとエリカが狙ったように。

「そうだ……。私にいい考えがある」


「なんだよ」


「先生にもう一度、基本を習って、それから考えてみたらいいんじゃない?」


 凄くまともで優等生な発言。でも、それが最も正解なのだ。俺達があーだこーだ言っても、考えるのはやはりマナである訳だから、ならイチから基礎を聞き直し、再び考えるしかない。


 しかし、それはやる気があるから、その考えに至る訳で、考える気もない者にそれは意味があるかは疑問だな。


 ……でもまぁ、やらないよりは確実にマシであるのは間違えない。


「そうだな。俺も一度、先生と話したかったし、放課後行くか」


「いいわね。私も評価稼ぎにいこうかしら」


「えぇ〜。私、まだ行くって言ってないんだけど〜」


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