第65話 喧嘩両成敗
まさか……また生徒会長室を訪れることになろうとはな。
新しい学生生活が始まり3週間が経過した。
今日の午前は全て選択授業だったため、選択していた授業が一つ終われば、次の講義までかなりの時間的な余裕があるという、暇な日であった。
そんな俺たちは、タイミングを見計らわれたように、ララ会長からの急な呼び出しをうけたのだ。
そして今、俺たちは我が学院の生徒会長室に来ていた。
「う〜ん? 私達、何かしたっけ?」
「どうだろうな……。心当たりがないこともないけどな」
会長からの呼びだし。いじめっ子との事は、少し前だけど、やっぱりその件だろう。
一応、先生からは心配するなと言われたけど。
「何も悪いことはしていないし、堂々としていればいいのよ……」
そういうと、エリカは言葉通り、堂々とした佇まいで会長室に押し入る。
「失礼します」
会長室に入ると、俺達が来るのを待ちかねていたという顔で、会長は迎えてくれた。
「おはよう。また当然の呼び出しで、すまないね」
「いえ、大丈夫です」
俺達が会長の前に真っ直ぐ一列に並ぶのを、確認してから、会長は話を始めた。
「さて入学から3週間、学院生活はどうかな? 楽しんでいるかい?」
そうか。もう3週間も立ったのか……。
学院生活は、日々の講義の中には楽しいものもあるし、訓練はしんどいが、やりがいは感じている。そして、人間関係も順調と言っていい。つまるところ……。
「まぁ……程々に楽しんでますね」
「うんうん、最初はそんなものだよ。慣れることに精一杯だろうからね。
しかし……君達が一緒に行動するとは、面白い組み合わせだね」
エリカは会長の発言にすかさず訂正を入れる。
「それは違います。二人が付き纏ってくるから、仕方なくです」
「付き纏うなんて酷いよ。仲良くしているだけなのに」
「わざわざ寮の部屋まで変えるなんて、やり過ぎよ……」
「でも、エリカ喜んでくれたじゃん」
「い、いま、その話は禁止!」
そんなマナとエリカの微笑ましい会話を聞いた会長は温かな目で見守っている。
「はは、仲が良さそうで、安心したよ」
「違います!! いえ、そのことはいいんです。たった3週間で呼び出されたのは、私達が何か問題を起こしたからでしょうか?」
まぁ、その可能性が一番高いよな……。俺たちを3人セットで呼び出す理由なんて、それぐらいしか正直思いつかない。あの日以来、俺達のよくない噂を耳にすることもあるぐらいだ。
「まぁそうだね。3週間程前のダニエラ君との一件を覚えているかい?」
「はい、でも私……私たちは何も悪い事はしていません。それは信じてください!」
「エリカ、落ち着きなさい。
君たちに非がないのはわかっている。
あの日の事情は、オリビア助教授から聴いているからね。
ただ……何のお咎めなしとはいかない。
学内で問題を起こしたというのは事実であるし、相手に全治一週間の傷を負わせたこともある。
何より魔族絡みだと、どうしても皆んな神経質になってしまってね。不平不満を訴える者が出てくる」
「では、私たちも処罰を受けるという訳ですか?」
「そうなる……納得出来ないかもしれないが、必要なことだ。
既に知っていると思うが、ダニエラ君達は一ヶ月の停学処分を宣告されている。
そして君達には……罰として、私の仕事の手伝いをしてもらおうと思っている」
「え? 手伝いですか?
ララ会長のお手伝いをさせていだくのは、むしろ大変光栄です。
しかし、その……会長の仕事は、自分達の技量ではとても務まらないと思います」
「いや、そんなことないさ。私の仕事なんて、学院の雑用ばかりで、皆の想像とは違い、実際は大したことをしていないんだよ」
「……そうなんですか 」
「そう……だから、お願いしたい仕事も実に簡単な雑用だよ」
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「たしかに……これは雑用だな」
俺達は、今年度から使われてなくなる旧普通科学院棟の不用品の撤去作業を命じられた。必要なものや、扱いが難しいものは、専門家があらかた終わらせているから、残りの細々としたモノの処理といったところ。
「いいじゃない。この程度の雑務で、不問としてくれるならラッキーなぐらいよ 」
「まぁそうだけど……」
「もうダメ〜、こんなの終わんないって〜」
「マ〜ナ、文句言わずに手と足を動かしなさい」
作業に入ってはや2時間、積み上げられた不用品の山が減っているように見えない。
「うぅ〜腕痛い……ひと休みしよ 」
マナは何度目かの小休憩に入った。
「休憩もほどほどにね……じゃないと昼からな講義に間に合わないわ 」
「次って哲学だよね。私苦手だし間に合わなくていいよ 」
「私はいやよ……。これ以上、私の成績に遅刻なんてつけられない。急ぐわよ」
「……うへ〜」
俺たちはそこから急ピッチで作業に取り掛かった。




