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第39話 信念

 会場端、エリカが前衛に立ち、俺が遥か後方に立つ形で位置取りは終わった。 


 オリビア先生が試合開始のギリギリまで交渉して、許可をもぎ取ってくれたからか、中々対戦相手は現れない。


 まだ相手への説明や、試験実行委員会で協議しているのだろうか。

 

 それしても、エリカのやつ……。

 まだ完全には納得してない様子だ。顔に不満がにじみ出ている。結果によっては殺されるかもな。


 しかし今日、こうして行動に出たことで、俺の中で一つ吹っ切れた部分がある。


 この世界に来てから、ユウとしての在り方について毎日考え迷ってきた。どう行動するべきかについて。 


 当初、俺はユウの意思を継ぐことを優先し、弔いになると、ユウを思いやった行動をしていくつもりでいた。


 だが、そんな意思は飾りだけで、最初から内装は腐っていた。実際は、俺は心の底ではずっと転生してから、自分のことしか考えていなかった。


 何より、自分を殺し、他人の思想を体現する行為は、意思がある生物として捻じ曲がっており無理があるだろう。


 他人を演じ、周りを欺き続けるなど不可能だし、折角生まれ直したのに、そんな事で人生を、命を費やしたくない。

 費やせれるほど、人間として強くないし、できちゃいない。


 そして今日……初めてアリシアと関わったときより、強くハッキリとした信念で、ユウでは考えられない選択をしている。その事実が俺に変わるきっかけを与えてくれた。


 ユウは、徹底した平和主義者であり、そして、正義の心を持ち合わせた善人だった。

 困っている人、助けを求める人が居れば、自分のことなど頭の勘定にいれずに、必ず助けるようなある意味で狂人的な人間であった。


 しかし、善人とし一部で破綻していた、根底には両親を殺した魔族だけは許せない心があったからだ。


 もちろん俺は、そんなユウとは違う。自分に出来る許容範囲を超えてまで、自分を犠牲にしてまで、他人を助けられるほど善人ではない。


 だが、俺は面倒なやつだった。根底の意思よりも、直感的に浮かんだ感情を尊重し行動する、その場だけの人間。そして、さらに厄介なことに目の前で困っている人がいるのに、手を差し伸ばさないほど、怠惰ではなかった。


 その明確な違いが実感できたことで、時間がかかったが、ユウとして有った記憶の呪縛から解かれた。


 あぁ、そうだ。とっくに結論は出ていたんだ。私が死んで、生きていたユウに乗り移ったのだ。私はユウではない、夢羽だ。


 ……すまないなユウ。お前の夢は、意思はここで捨てる。私はユウとしてのあり方を捨てる。現時点からは夢羽として好きにやらせてもらう。


 本当にごめんな……。


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