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第37話 夢羽として


 静まり返った治療室。とらえどころのない状況の中、俺は自分がこれから実行しようとしている事をオリビア先生、エリカ、アリシアに伝えた。


「それは……本気で言っているのか?」


「俺はいったて、真面目です。今からならまだ変更可能だと確信しています。

 しかし、前提としてオリビア先生の後押しがあればの話ですが」


 先生はこめかみに手をあて、大きなため息を吐いた。そして再度、意思の確認のために問いかけてきた。


「お前のその行為になんの意味がある?」


「そうですね……。これは完全に自己満足で、ただの憂さ晴らしですよ。周りからすれば、意味はないと思います」


 エリカは、まだ傷が癒えていないようで、無理をしてベットから上体を起こし、俺のハチャメチャな提案に反論を入れてきた。


「ちょっと……待って! 最初から意味不明よ。私は何も納得してない。

 なんで、私がアンタと一緒に試験を受けないといけないの、意味がわからない」


「勘違いするな。あくまでも、俺の正式な試験協力者兼、道具として参加してもらうだけ。今回の試験内容に則ったものだ」


「はぁ? アンタが何を考えて、物を言っているか知らないけど、前にも言ったでしょ。自己満足のために、私達を利用するなって。ふざけるのもいい加減にして!」


「あぁ、覚えてるさ。それに反対されるのもわかってた。だけど、お前には俺に借りがあっただろ?」


「アンタに借りなんて、作った覚えないわ!!」


「少し前にアリシアは救ってやったやつだ。お前が幾ら嫌であっても、その恩は今日返してもらう」


「……お前はどこまで私達を」


 恩といっても、エリカはもちろん、アリシアも、恩など感じてないだろうし、あの場では助けなど不要であったのは間違えない。


 しかし、エリカにとっては、人間に些細な借りをつくることなど耐えられない。特に今の心情では絶対にだ。だが此処でさらにひと押しで落とす。


「いやなら、エリカでなくても結構だ。代わりにアリシアに参加してもらうことにするよ」


「っ! 何をいって……。

 あぁ……私が参加すればいいんでしょ。お前に利用されてやるわ。それで満足? クソ野郎!!」


クソ野郎か……心に来るものがあるな。


「よし決定だな。あとは……」


 俺は先生の方をチラチラと横目で見て、訴える。先生は困った顔をしていたが、観念してくれた。


「まったく、困った教え子を持ったものだ……。ほんとうにいいのかエリカ? 

 ユウはこう言っているが、別に無理する必要ないぞ。コイツはいつも思いつき行動するからな」


「いいんです。こんな奴に、借りなんておいておいたら、後が怖いので」


「……わかった。許可を貰えるかは判らないが、とりあえず試験実行委員会に進言はしてみる。だが、許可を得られる可能性は低いと思っておけよ」


「ありがとうございます。お願いします!!」


 さて、試合まで数時間しか猶予はないだろうし、許可が下るかもわからん。


 だが、やれるだけのことをやってやる。



         ・

         ・

         ・


 第一闘技場、会議室に試験実行委員の内、数名が集まっている。


「オリビア君、いくら君の頼みだとしても、当日に試験内容の変更は認められない」

 

 なんとか教え子の力になって上げたい考えていたが、やはり駄目かと……オリビアは落胆する。


 でも、まだ諦めるわけにはと、オリビアは食い下がらない。


「サルバン副学長……無理なお願いをしているのは承知しています。ですが、どうかお願いいたします。私の教え子の切実な希望なのです」


「ふ〜む……元々、彼の提出してきた魔術は特殊であるし、他の受験生の事も考えると。

 こちらとしては許可を下すのには、相当な決意と覚悟がいるのは、わかっているのかね?」


 頭を深く下げたオリビアを見ても、サルバンは顔をしかめて、否定的な態度をとる。


「はい……理解しております」


 何も言い返せなくなっていたオリビアに変わって、その場に居合わせた一人の若い男が、口を割り込ませる。


「副学長……ご意見申し上げます」


「なにかね?」


「はい、この学院の試験は、自由で受験生一人一人の表現力を試すものだと、大々的にうたっているではありませんか?

 そんな自由意志尊重の観点からすれば、協力者に設定していた魔術兵を受験生の一人に変更するなど、些細なことでは?

 それにオリビア先生がおっしゃる通り、試験自体に深刻な影響はないかと」


「いや、しかしだね。変更など認めては生徒の平等性を損なうだろう……」


「ですが、副学長。

 確か……昨日、試験内容の変更を許可された生徒がいらした気がしましたが……」


「……口を慎みたまえクロードくん。あの件とこの件とは全く関係がない」


「そうでしょうか? 私にはとても似通った事例だとー」 


「わかった! この試験の運営委員長のクロード教授が責任を自ら背負うと、そう仰るなら特別に許可とすることにしよう」


 サルバンから許可を得たあと。

 オリビアは、退席しようとするクロードに感謝を述べた。


「クロード教授、先程はありがとうございました。ご負担をおかけして、もうしわけございません 」


「いや、構わないよ。君が教え子が大切に思うように、私も元教え子が頭を下げているのに、動かない訳にはいかいないだろ?」



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