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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第八章 魔獣には決して餌を与えないでください
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1 第二部 始

「じゃあ改めて、生徒会の仕事について説明するけど」


 異世界にやって来て一週間。放課後に生徒会室へ呼び出された俺とシビュラは、副会長であるヘルミオネと向き合っていた。


 室内の様子は以前と同じで、殺風景としか言いようがない。何度か掃除をしたため汚れは目立っていないが、活動を行う上では寂し過ぎるのも事実だった。


 少しはくつろげる空間にしたいなあ、とイメージを膨らませながら、副会長さんの言葉に耳を傾ける。


「人手もこうして入ったわけだし、学園でのイベント運営、ギルドとしての活動。この二つがメインになるわね。後者については既に仕事が来てるから、さっそく取り掛かろうと思うんだけど――いいかしら? ユキテル君」


「俺は問題ないよ。手伝うって約束したんだし」


「ありがと。……じゃあその内容についてだけど、そう難しくないわ。大迷宮の生態系が乱れてるから、直すのを手伝って欲しいんですって」


「……そこはかとなく、責任を追及されてる気がする」


 そりゃあねえ、と相槌を打つヘルミオネ。俺の隣にいるシビュラも頷いていた。


 大迷宮ダンジョンの生態系に異常が生じているのは、以前出会った番犬兄弟の仕業だろう。ああいや、仕業とか言っちゃいけない。彼らはあくまでも被害者なんだから。


「ヘルミオネさん、地上に影響は出てるんですか?」


「まだ多少は出てるわね。先週時点に比べると随分減ってるらしいけど、放置するのは禁物よ。アタシ達の信頼にだって関わってくるんだから」


「――じゃあ頑張ってくださいね、お二人とも!」


 まるで他人事のように言ってくるが、他人事なので仕方ない。

 とはいえ少しずつ、シビュラは訓練を受けているそうだ。先週、彼女の父親から刻印を奪還することに成功したためである。


 年単位で身体から離れていたため、馴染むには一月ほど掛かるらしい。が、シビュラ本人の願いもあって、詳しい使い方を教わっている最中だそうだ。


「シビュラ、悪いけど留守中、アンタにも仕事があるわよ?」


「えっ」


「今度、新入生との対面式があるから。そこで生徒会を含む学ギルドの対抗戦をやるのよ。先生と色々相談することがあるから、よろしくお願いするわ」


「ず、ずるいです! ヘルミオネさんだけユキテル様とデートだなんて!」


「な、何言ってんのよ! これはただの仕事よ! 仕事!」


 ムキになって否定するヘルミオネだが、その大袈裟おおげさな反応がシビュラの餌になっていると気付いてほしい。こっちだって何か期待したくなる。


 二人はいつものように言い争いを発展させていった。が、これまたいつものように、ヘルミオネが白旗を上げる。顔を真っ赤にしたまま、俺の手を掴んだのだ。


「ほ、ほら、行くわよユキテル君! 時間は有限なんだからねっ!」


「ユキテル様ー、あとで埋め合わせしてくださいねー」


「わ、分かった!」


 シビュラはそれから追おうとはせず、生徒会室に戻っていった。


 俺はヘルミオネに引かれて階段を下りていく。途中ですれ違う生徒達は、いずれも興味深そうにこちらのことを見ていた。あの二人付き合ってるの? と小声で語る人には、容赦なくヘルミオネが睨みつけている。赤い顔のままで。


 勢いが落ち付いたのは、昇降口付近の階段に来てからだった。


「はあ、はあ、はあ……」


「何もそんなに焦らなくても……」


「だ、だって、誤解されたら困るでしょ? ユキテル君、シビュラのこと好きなんでしょ?」


「――そりゃあ好きだけど」


 ヘルミオネの反応がわざとらしくて、それどころじゃない。


「……」


 率直な感想は胸の奥に飲みこんで、彼女の容姿を改めて観察する。

 燃えるような赤い髪。プロポーションはシビュラほどじゃないが、年頃の男性を引き付けるには十分すぎる威力がある。平均的な女子生徒から見れば、確実に嫉妬の対象となるだろう。


 ……ヘルミオネが生徒の大半から畏怖されているのは、正直言って好都合だった。


 いや、普通に考えて欲しい。男を近付けさせない美少女と、一緒に活動できるんだぞ? 独占欲を満たすには最高の相手じゃないか。

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