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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第八章 魔獣には決して餌を与えないでください
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「アタシとは友達ってことでいいでしょ? ――べ、別に困ったりはしないわよね?」


「……」


 だから、上目づかいで聞いてくるのは止めてくれませんか?


 わざとやっているとしか思えない。これはアレか、誘い受けってやつか? 意外とヘルミオネってマゾだったりするのか?


 程良く赤面した彼女は、両手を合わせてモジモジしている。うん、やっぱり確信犯じゃなかろうか。いくら何だって我慢の限界があるぞ。

 なので、


「そうでもないよ」


「へ……」


「ヘルミオネと仲良く出来ないのは、凄く困る」


「――」


 彼女は口を開けたまま、その場で固まってしまった。

 固まりたいのはこっちも同じだけど、ここは相手の返事を待つことにしよう。


「そ、その、アタシそんなに可愛くないわよ? シビュラに比べると出るところ出てないし……」


 比較対象が悪すぎる。

 現に今、付近を通過した女子生徒がヘルミオネのことを睨んでいた。一目見る限りでは平均的なスタイルの生徒で、眼差しには妬みどころか殺意が籠っている。


「あ、あと、料理もそんなに得意じゃないし、寝癖も悪いし、お洒落もあんまりしないし……」


「――」


 周囲からの嫉妬は増していく一方。軽く俯いたまま自分を卑下するヘルミオネは、そんな異常事態にコレっぽっちも気付きやしない。


 世界中の男性を代表して、彼女の自己評価は間違っていると断言しよう。――口に出すのは恥ずかしいので勘弁願いたいが。

 しかし、肯定するのが最良の薬なのは言うまでもないわけで。


「とりあえずさ、ヘルミオネ」


「な、何?」


「多少好みの影響はあると思うけど、君は凄く美人だよ?」


「っ――」


 茹でダコみたいに、耳の端まで真っ赤になった。


 集まっていた女子生徒達は呆れて去っていく。残していく言葉はだいたい負け犬の遠吠え。こっそり俺の方に手を振る生徒もいたが、ヘルミオネの方が大事なので一礼するだけに留めておいた。


「じゃあヘルミオネ、大迷宮に行こう。急ぐに越したことはないんだから」


「そりゃそうだけど……なんか、不公平だわ」


「は?」


「は、恥ずかしがってないじゃない、ユキテル君。アタシはそういう気持ちになってるのに、ズルいわ」


「――」


 何を言い出すかと思えば、そんなことか。

 でも内心、さっきの台詞は尾を引いている。もし直ぐにでも再現しろと言われたら、素直に行える自身はない。その場の勢いで言えたようなもんだし。


 しかしヘルミオネは本当に不機嫌そうだ。頬を朱色に染めているため、まるで説得力はなかったが。


「……確かシビュラが言ってたわ。ユキテル君は割と初心だって」


「でも初心だったら、さっきみたいなこと言わないよね」


「じゃ、じゃあどっちなのよ!?」


 答えるわけにはいかない。彼女に反撃する機会を与えることになる。

 俺は逃げるように靴を履き替え、校門に向かって全力でダッシュした。遅れてヘルミオネも出てくるが、距離は次第に離れていく。


 ……何だか、妙だ。加護のお陰で身体能力は上がっている筈だけど、それにしたって距離の開き方が尋常じゃない。


 こちらと彼女で、体感している時間の流れが違っているかのように。


「……新しく発現したりしたのかな?」


 足を止めて、自分の身体を観察してみる。

 ヘルミオネが追い付いてきたのは、それから数分後のことだった。

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