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「アタシとは友達ってことでいいでしょ? ――べ、別に困ったりはしないわよね?」
「……」
だから、上目づかいで聞いてくるのは止めてくれませんか?
わざとやっているとしか思えない。これはアレか、誘い受けってやつか? 意外とヘルミオネってマゾだったりするのか?
程良く赤面した彼女は、両手を合わせてモジモジしている。うん、やっぱり確信犯じゃなかろうか。いくら何だって我慢の限界があるぞ。
なので、
「そうでもないよ」
「へ……」
「ヘルミオネと仲良く出来ないのは、凄く困る」
「――」
彼女は口を開けたまま、その場で固まってしまった。
固まりたいのはこっちも同じだけど、ここは相手の返事を待つことにしよう。
「そ、その、アタシそんなに可愛くないわよ? シビュラに比べると出るところ出てないし……」
比較対象が悪すぎる。
現に今、付近を通過した女子生徒がヘルミオネのことを睨んでいた。一目見る限りでは平均的なスタイルの生徒で、眼差しには妬みどころか殺意が籠っている。
「あ、あと、料理もそんなに得意じゃないし、寝癖も悪いし、お洒落もあんまりしないし……」
「――」
周囲からの嫉妬は増していく一方。軽く俯いたまま自分を卑下するヘルミオネは、そんな異常事態にコレっぽっちも気付きやしない。
世界中の男性を代表して、彼女の自己評価は間違っていると断言しよう。――口に出すのは恥ずかしいので勘弁願いたいが。
しかし、肯定するのが最良の薬なのは言うまでもないわけで。
「とりあえずさ、ヘルミオネ」
「な、何?」
「多少好みの影響はあると思うけど、君は凄く美人だよ?」
「っ――」
茹でダコみたいに、耳の端まで真っ赤になった。
集まっていた女子生徒達は呆れて去っていく。残していく言葉はだいたい負け犬の遠吠え。こっそり俺の方に手を振る生徒もいたが、ヘルミオネの方が大事なので一礼するだけに留めておいた。
「じゃあヘルミオネ、大迷宮に行こう。急ぐに越したことはないんだから」
「そりゃそうだけど……なんか、不公平だわ」
「は?」
「は、恥ずかしがってないじゃない、ユキテル君。アタシはそういう気持ちになってるのに、ズルいわ」
「――」
何を言い出すかと思えば、そんなことか。
でも内心、さっきの台詞は尾を引いている。もし直ぐにでも再現しろと言われたら、素直に行える自身はない。その場の勢いで言えたようなもんだし。
しかしヘルミオネは本当に不機嫌そうだ。頬を朱色に染めているため、まるで説得力はなかったが。
「……確かシビュラが言ってたわ。ユキテル君は割と初心だって」
「でも初心だったら、さっきみたいなこと言わないよね」
「じゃ、じゃあどっちなのよ!?」
答えるわけにはいかない。彼女に反撃する機会を与えることになる。
俺は逃げるように靴を履き替え、校門に向かって全力でダッシュした。遅れてヘルミオネも出てくるが、距離は次第に離れていく。
……何だか、妙だ。加護のお陰で身体能力は上がっている筈だけど、それにしたって距離の開き方が尋常じゃない。
こちらと彼女で、体感している時間の流れが違っているかのように。
「……新しく発現したりしたのかな?」
足を止めて、自分の身体を観察してみる。
ヘルミオネが追い付いてきたのは、それから数分後のことだった。




