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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第五章 気になるあの子と裸の付き合い
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9

 シビュラの姿を探ってみると、今まで向かったことのない方向へ歩いていた。昨日の夕食時、アテナからは預言官たちの部屋があると聞かされたスペースである。


 追いかけたいところだけど、彼女はこれから着替えるんだろうし。居間の方で待つとしよう。


「おい、ユキテル」


「あれ、アテナ様? 出掛けたんじゃないんですか?」


「お前に改めて聞きたいことがあったんでな。各方面への伝達は預言官達に任せてある」


「聞きたいこと……?」


 アテナは答えることなく、俺が進む予定だった道へと爪先を向ける。

 ふと、彼女の方から腹の虫が鳴った。神様もお腹は減るんだなあ、と益体のない感想を胸にする。


「――今、私のことを馬鹿にしただろう?」


「し、してませんよ!? ただ、神様もお腹減るんだなあ、って」


「そりゃあ私達だって肉体を持ってるからな。というか、何度か飯を一緒にしただろう? 他の理由で栄養を取ってるとでも考えてたのか?」


「そうですね、娯楽の一つなのかな、とは」


「ふむ、そういう表現も有りと言えば有りか。だが安心しろ、私達にはきちんと、食欲も睡眠欲も性欲もある。神級の二倍、三倍の能力があって、老化しない神子だと思えばいい」


「完全に化け物じゃなですか……」


 睨まれたので、これ以上は止めにする。神子の基準から言えば、こっちも化け物なんだろうし。


「で、さっきの話だが」


 家族団らんの場に向かう中、アテナは不意に話題を切り替えた。


「聞きたいのはクソッタレのリュステウスについてだ。アイツ、何の用があって大迷宮に来たんだ?」


「えっと……シビュラを追い掛けて、みたいですど」


「シビュラを? なんだ、あの子はまた無断で入ったのか?」


「ええ、まあ」


 言っちゃ駄目だったろうか?

 しかし処女神は激怒するわけでもなく、額に手を当てて嘆息する。つまりは毎度恒例ということ。――誰だ、シビュラを優等生だなんて言い出したのは。


「注意しても無駄だろうが、後で厳しく言っとくか……リュステウスのやつ、他に何かしてなかったか? どんな細かいことでもいいから」


「うーん、俺の見てる範囲では何も。ちょっと言い争いして、直ぐ引き上げてもらったんで」


「むう、そうか。証拠の一つでも得られれば良かったんだが」


「証拠?」


 疑問に首を捻ると、女神は一枚の紙を渡してきた。恐らく、シビュラが書き記した預言に関係する品だろう。

 だがその内容は、彼女達の会話とはまるで違うものだった。


「父たる簒奪者、闇の底より混沌を招く……?」


「お前がここに来る前、シビュラが授かったとされる預言だ。――ここ最近、リュステウスが怪しい動きを見せているんでな。ヤツを示した預言ではないかと考えている」


「闇の底、って大迷宮のことですか?」


「だろうな。順当に、ヤツが問題をばら撒く、って預言なんだろう。昨日、大迷宮に向かったのはその準備かもしれん」


「何をするか、予想はついてるんですか?」


「いや、まったく分かっていない状態だ。リュステウスはアレでも用心する方でね。肝心かなめの部分は、神殿の情報網にも引っかかっていない」


「……」


 少し、預言の言い回しが引っかかる。

 個人名も組織名も、そこには一切含まれていないのだ。極端なことを言えば、簒奪者たる父、がリュステウスである確証すらない。闇の底についても同じだ。


 もっとも、今朝の預言を聞くに大した課題ではないんだろう。俺がやってきたことで、今日は安全を告げる内容だったそうだし。


「あの、闇の底って大迷宮の下層じゃないですかね?」


「確かに考えられるが……ヤツではそこまで深いところに潜れないぞ? 良くて三層ぐらいだ。混沌を招く、が魔獣のことだとしても、そこまで強力な個体は――」


「抜け道があるって、聞いたことありません?」


「何?」


 初耳らしい。形の整った目を、アテナは大きく開いている。

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