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「エーテルっていうのは、この世界を構成する物質よ。神子が加護を発動させる際のエネルギー源にもなってる。大抵は食事を取ったり、睡眠でも確保できるわ」
「ふむふむ」
要するにMPってやつか。あるいは魔力。それぞれの所有量が決まっていたら、本格的にその例えが通る。
試しも兼ねてか、ヘルミオネは足元にある石を拾い上げた。
「まだ小さいけど、これがネクタル石ね。もっとエーテルを吸い込めば、光を発するようになると思う」
「どうして発光するの?」
「中に蓄積されてるエーテル同士が摩擦して、じゃなかったかしら? 神殿の方に備蓄があるでしょうから、試してみるといいわ。刺激を与えたりすると発光するのよ」
こんな風にね、と彼女は手に持っていた石を落とす。
床に当たった瞬間、確かに淡い光が発生していた。自分達を頭上から照らす光に比べれば、かなり小さいものではあるけれど。
「ネクタル石は応用も出来るから、頭の片隅にでも置いといて。……神級の神子じゃ、無用の長物でしょうけどね」
「分かった、どっちも覚えとく」
それからまた、俺達は揃って歩きだす。
……本当はもう一つ尋ねたいことがあった。が、長々と質問ばかりなのも迷惑だろう。ここがそういう場所なんだと理解すれば、疑問は一つもないんだし。
――率直に言って、大迷宮は大迷宮と呼べる空間ではなかった。
建築物があって、住居がある。その名称は遺跡と呼んだ方が相応しい。自分がイメージしているような、入り組んだ通路は見当たらない。
ひょっとして魔獣の作った文明だったりするんだろうか? ここが彼らの生息地域なら、有り得る話ではあるが。
「……」
想像を膨らませながら、ヘルミオネの誘導に従って歩いていく。
「――よく考えたら、地下迷宮に見て楽しむようなものはなかったわね。観光気分で、ってのはさすがに言い過ぎだったかしら」
「そんなことないよ。地形だけでも覚えられるのは有り難い」
「ならいいけど……あ、疑問質問があるなら遠慮なくね。アタシ的には、存分恩を売っておきたいし」
「それはシビュラのことで? それとも生徒会ギルドのことで?」
「よ、容赦のない質問ねえ……まあここは、両方って答えておきましょうか。アタシは迷惑掛けてると思ってるし、今後は協力関係を作りたいと思ってるし」
純粋な本音。無償の奉仕など、突き詰めれば詭弁に過ぎない。
お言葉に甘えて遺跡のことを尋ねたいが、もう一つ新しい疑問が出てきた。




