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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第三章 大迷宮・ラビリントス
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4

 一番上には名前と、加護を与えている神の名が記されていた。あとは箇条書きで、ソレっぽい単語が羅列している。


「千里眼、変身、百腕巨神……なんか、まだあるね。天候操作とかまで書いてあるよ」


「ね、色々あるでしょ? 本当はそれぞれ、後ろにDからAまでのランクがついてる筈なんだけど――」


「測定不能、って書いてあるね」


「言ったでしょ? 振り切ってるって。Aより断然高いと、そういう表記がなされるのよ。百腕巨神なんてレア中のレアだしね」


「一応聞くけど、ヘカトンケイルのこと?」


「そ。千里眼は周囲の空間を把握する能力。変身は読んで字のごとくね」


 成程、いずれもゼウスに関係している能力だ。

 ギリシャ神話において、かの神王が姿を変えることは珍しくない。ヘルミオネの祖母であるレダを始め、女が絡む時には恒例として使っている。彼女らの夫に化けるのはもちろん、雨にも姿を変えるとか。


 少し使ってみたい気はするが、百腕巨神ヘカトンケイルと千里眼しかやり方が分からない。案外と叫べば出来たりするんだろうか?


「――変身!」


 が、変化は起こらない。

 むしろ冷えた視線が突き刺さってくる。何だあの痛々しいやつ、と言わんばかりだ。お願いです無視してください。


「……何やってんの?」


「直接言われるともっと傷が抉られるね。――まあ、変身能力を試そうと思ってさ」


「あー、ユキテル君の変身能力は自動系みたいだから、意図して発動させるのは難しいわよ。必要な場面になれば、身体が勝手に対応すると思うけど」


「変身が必要な場面って……?」


「さあ? ゼウス様に直接聞いてみたら? 神殿からだったら連絡取れるでしょうし」


「じゃあ、帰ったら試そうかな」


 しかし本当、何なんだ? 変身が必要になる身体の状況って。

 想像を巡らせながら、別の建物に向かうヘルミオネを追っていく。途中ですれ違うのは、女神たちのトラブルを止めようとする関係者ばかり。


 喧嘩の場所からは未だに破滅的な音が聞こえてくる。死人が出たって驚かないようにしよう。


「これから許可証を発行してもらうから、大切にしておいてね。失くすと再発行まで時間が必要になるから」


「了解」


 屋根の下に入ると、やっぱり大勢の関係者がいる。

 ヘルミオネは今度もしっかり手を握り、受付の元へ全速全身。割り込みも辞さない勢いで、加護の詳細が記された紙をたたき付ける。


「大迷宮への許可証を発行してもらえますか? この方、神級の神子なんです」


「!? か、畏まりました、少々お待ち下さい」


 対応してくれた女性は、急ぎ足で奥の個室へと消えていく。――半ば脅しだった気もするけど、早急に終えてくれるなら素直に甘えよう。


「ところで、大迷宮では何を?」


「今日は軽い探索のみにしましょう。ギルドの責務に従うなら、魔獣の討伐と深層の調査を進めないといけないけど……それは貴方が会長になってからね」


 と、話しているうちに受付嬢さんが戻ってくる。新しく持っているのは手のひらサイズのバッジ、だろうか?


 先ほどの紙とバッジを置いて、彼女は改めて話し始めた。背後には気の良さそうな老人が一人。こちらに深々と会釈を送ってくる。


「では本日より、神子様の大迷宮への入場を許可します。所属ギルドは決まりでしょうか? 良ければ専属の――」


「あー、はいはい。そいつはウチの生徒会ギルドに入るって決まってますから。――行くわよ、ユキテル君」


「え、ちょ……」


 言うが早いか、戻る時もヘルミオネに引っ張られていく。

 だが指先の力はさっきよりも強い。誰かから逃げるようで、心なしか歩幅も大きくなっていた。


「急いで出ないと、囲まれるわよ。言ったでしょ? 引く手あまた、って」


「ああ、そういう」


 奥の部屋から老人が出てきたのも、勧誘に基づく対応だったのかも。

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