第2話:〔スタープローブ〕
村へと近付くサクマに後ろから誰かが声をあげた。
「あ…アナタ!」
まさかバレてる!?
〔違う落ち着け!〕
恐る恐る振り向くと、10代くらいの少女が心配そうにコチラを見ていた。
「大丈夫!?傷だらけだよ!」
少女は持っていた荷物を下ろしサクマに近寄り、腕を優しく手に取り質問する。
「魔物に襲われたの?」
「う…うん」
「お腹も傷でいっぱいじゃん!ちょっとついてきて!私のお父さん治療のスキル使えるの!」
〔サクマ。ここは従った方が良い。〕
わかった…
言われるがままにサクマは少女について行く。道中で村民に変な物を見るかのような目つきで睨まれたが少女の家に着いた。
少女は扉を勢いよく開け父親を呼ぶ。
「お父さん!この人の傷治療してあげて!」
その言葉に帰ってきた返事は父親ではなく母親の言葉だった。
「あらどうしたの?お父さんなら出かけてるわよ。」
「え!どこに?」
「確か、森の方へ薬草を取りに行ったわ。」
「えぇ!薬草なら買えば良いじゃん!」
「そぉ…私に言われてもねぇ。多分お店に売ってない貴重な薬草でも取りに行ったんじゃない?それと結構時間がかかるとも言ってたわ」
「うーん…じゃあ私呼んでくるからアナタはここで待ってて。」
少女はサクマを椅子に座らせ出ていこうとするが
「ま…待ってボクも行くよ!」
サクマは着いていこうとする。
「ダメだよ。怪我人は大人しくしてなきゃ…」
それに母親がこう答える。
「その森に出てくる魔物は弱いとは言えミーナ、一人じゃあ危ないわ。」
「その方の応急処置をするから一緒に行きなさい。」
今度はコチラを見て話す。
「ごめんなさいね。怪我人なのに動かしちゃって。でも私の旦那に会えたらすぐに治してもらえると思うから。」
「は…はい…」
「ミーナ!包帯に傷薬、それと…」
一瞬チラリとサクマを見て言葉を続ける。
「ミロッドを2本!」
「はーい。いま持ってくるね。」
ミーナと呼ばれた少女は部屋の奥へとむかう。聞き慣れない単語にサクマは首を傾げた。
「ミロッド?」
「あら、知らないの?ミロッドって言うのは自衛用の小さい杖で、炎や氷等の属性を杖に入れ込む事により、MPやスキルを持たない物でも属性攻撃が出来るものなのよ。」
「使えても数回程度だけど放出をコントロール出来るようになれば細かい攻撃を数十発と放てたり、纏めてでかい弾にして放つ事も出来るわ。」
〔MPが少ないサクマには丁度良いな。〕
「なるほどぉ…」
「お母さん!持ってきたよ。」
「ありがとう。私はミロッドに属性を入れ込むからミーナはこの方に包帯を巻いてあげなさい。」
「うん!」
そこから数分、全身に包帯を巻かれたサクマは少しだけ体力を戻していた。母親は炎属性を入れ込んだミロッドをサクマに。氷属性をミーナに渡し、玄関の外まで見送った。
その道中でミーナはサクマにいくつかの質問をする。
「その…アナタってどこから来たの?」
「え?…」
サクマはどう答えようか考える。
「…ハルカドル?それともワンターン?」
「もしかして……」
「異世界からだったりして?」
カレン!?コレは!ホントにバレてる可能性があるッ!
〔だから落ち着け!〕
「ごめん、冗談だよ。言ってみたかっただけ。」
「でも本当にどこから来たかは気になるの。その格好も見慣れないし…」
………。
「異世界だよ。」
〔む!言いふらされる可能性もあるんだぞサクマ。〕
わかってる。
「え?」
ミーナは戸惑う。
「ホントに。異世界から来た。」
「冗談が本当になっちゃった…」
サクマの言葉を冗談半分で受け止めミーナはいくつか質問をする。
「アナタのいた異世界ってどんな所なの?」
「そうだね。ボクが元いた世界にはスキルが無いかな」
「え!?それじゃあどうやって生活してるの?」
「便利なスキルが無い代わりに化学が発展したんだ。」
「カガク?」
「うん。言葉で説明するのは難しいからこの世界と比較してみようか。」
「この世界ではもし切り傷が出来たらどうする?」
「それは治療のスキルでほわ〜って回復するよ」
「でもボクがいた世界では出来た傷を瞬時に治す言葉できない、薬を塗ったり、絆創膏と呼ばれる物を貼ったりして、傷が自然に治るのを待つしかないんだ。」
「ええ!大変じゃん!もし骨折だとか肉ぎえぐれちゃう程の大怪我とか負ったりしたらどうするの?」
「その時は手術をするんだよ。」
「へぇ〜…なんか凄い大変な世界だね。」
「でもいい事も沢山ある。例えば移動方法とか。この世界では遠くへ行くためにどうしてる?」
「馬車とか、移動速度上昇のスキルとか?」
「ボクの世界は自動車とか飛行機とかがあるんだよ。」
「ジドウシャ?ヒコウキ?」
「自動車は自動で動く鉄の馬車かな?飛行機は鳥のような形をしていて空を飛べるんだ。」
「空を!?ホントに!?」
「よく鳥が空を飛んでるでしょ?あれと同じ感じで飛ぶかな?」
「へぇ〜翼を羽ばたいて飛ぶんだ」
「ごめん。翼は羽ばたかない。ジェットエンジンって物で空を飛ぶんだ。」
「それにね。ロケットっていう物で雲よりもはるか上、宇宙に行くこともできるんだよ!」
サクマは嬉々として話す。
「ウチュウ?」
「あ。」
もしかしてとサクマは考える。
「雲の上って天界なんじゃないの?女神様とかが住む場所。」
「あ、あー…」
サクマは戸惑うがミーナはクスッと笑ってこう言う。
「ふふっ…おとぎ話なのはわかってるよ。だからウチュウがどんなものなのか教えてよ。」
「宇宙は無限に続く可能性の世界なんだよ。色んな惑星があったり銀河があったり…今は空を見上げると太陽があるじゃん?」
サクマは太陽を指差す。
「うん。とても眩しい。」
「あの太陽以外にも光り輝いてる惑星も沢山ある。」
「そうなの?でも太陽みたいに輝いてるならここからでも見えるはずじゃないの?」
「さっきも言ったけど宇宙は無限に続いてるんだ。ずっとずっと永遠に。だからここからじゃあ見えない程遠いところにある。」
「それ以外にも水の惑星だったりガスの惑星。それにダイヤモンドで出来た惑星だってある!」
「すごい!アナタはこの星以外の星に行った事あるの?」
「……。ボクの夢は宇宙飛行士なんだ…」
「それって宇宙に行く人の事?」
「うん。」
「そうなんだ。でも夢って事は……」
「そう。宇宙飛行士になる前にこの世界に来ちゃったから……」
「だから……もう……宇宙飛行士には……」
「今からでも遅くないよ!」
「え?でもこの世界の技術レベル的には無理だと思う……」
「ふふ…この世界には『スキル』があるんだよ!」
「だから、アナタの知識とスキルを合わせれば宇宙…行けると思う!」
「ボ…ボクの知識じゃあ無理だよ…」
「そんな事ない!アナタは私の知らない事沢山知ってた。だからそんな事は無い!」
「それに…私も宇宙行きたい…雲の上がどんなものなのか実際に見たい!この目でしっかりと!」
サクマは思い出した。自分がどんな理由で宇宙飛行士を目指したのか。この少女と同じように誰かから教えられ、それに憧れた。
「そうだ、名前聞くの忘れてた…私の名前はミーナ。まぁ知ってると思うけど…アナタは?」
「ボクは…」
〔待てサクマ…本名は言うなよ。偽名を使え。〕
え、でも……。わかった。
「ボクは………アキって言うんだ。」
〔季節の秋か?〕
「アキ…ね。よろしく!」
「うん…よろしく。」
そしてミーナからこの世界のモンスターについて色々聞いているうちに、父親がいる森に着いた。この森の名前は『オレスト』と言う名前らしく、草木が豊富で薬草が特に多いらしい。
「えーと…薬草地帯はこっちだね……」
土に埋められた看板を見て父親がどこに居るかを推測する。この森はある程度道が整理されてる為迷子になる事はそうそう無い。
2人は看板の道筋に従い奥へと進む。
何分か歩いていると開けた場所に着いた。
「お父さんどこだろう……」
ミーナが辺りを見渡す。
「いた!」
サクマも同じ方を見る。そこには薬草を入れた袋を握りしめた父親らしき男が背を向け立っていた。ミーナは男に手を振りながら近付く。
「お父さーん!」
声掛けに男はゆっくりと振り向くと、口を少しだけ開けた無表情な顔が露になる。
「…お父さん?」
何かの異常を察したのかミーナは立ち止まる。
〔サクマ。あの男に近づいてくれ。〕
わかった…
ザッ…ザッ…と。草を踏みしめながら歩く。
〔………〕
近づけば近付く程違和感を覚えていく。
〔……!サクマ!アイツの口を見ろ!〕
目を凝らし、よーく見てみると男の口の中に…
なにか…蛇のようなナニカが潜んでいた。
〔まずい!サクマ!アイツからミーナを遠ざけろ!〕
え!
その瞬間男の服の中に隠れていた蛇のようなナニカが飛び出し、ミーナを襲う。
そのナニカはミーナの首にロープの様にまとわりつき、グッと絞める。
「ミーナ!」
〔サクマ!もう一体が迫ってくるぞ!〕
男に視線を戻すと再び服の中からナニカが首めがけ飛びついて来た。
「ぁがッ!」
首を絞められ、息ができない。グググと絞める力が増していき、痛みも増していく。
〔サクマ!振りほどくんだ!〕
カレンにそう言われるが身体が言うことを聞かない。首に手を持っていこうとするも震えて動かない。
まずい……
もう…限界かもしれない…
………
〔サクマ…サクマ!〕
意識が飛びかけたその時、
「ミロッド……フロスト…!」
掠れた声でミーナはサクマに付くナニカめがけ放つ。
「シャーー!」
氷属性の攻撃を食らったナニカは鳴きながら落ちる。
「ゲホッ!ゲホッ……」
呼吸を整えミーナを見ると既に意識を失っていた。
「ミーナ……ミーナ!」
〔サクマ!ひとまずアイツからはなれろ!〕
……。
ナニカが潜む男から目を離さないようにこの場から離れる。そしてその男は首だけを動かしコチラの動きを観察するかのように見つめる。
ある程度離れ近くの木に身を隠して、カレンにどうすればいいのかを聞く。
カレン…あの蛇…どう対処すればいい?ボクのロケットショットじゃあ大雑把すぎて当たらないと思う……
〔だったらミロッドを使え。ただ放出はコントールしろよ。ヤツらの正確な数は不明だが、おそらく何体もいる。〕
そんな事言われてもコントールなんかできないよ!使ったこともない。
〔ああ。オレもわからん。だが大抵そーゆーのわなぁ意識の問題だ。意識をミロッドの先っぽに集中させるんだ。針に糸を通す様な感覚だ。〕
……やってみる……
サクマはミロッドを取り出し握る。木影から顔を出し男の動きを伺う。
!
男は何もせずジッと…コチラだけを見つめてる。
〔なんだ?襲いもせず何もせずただこっちを見ている……〕
〔サクマ。既に罠を張られてる可能性もある。慎重に動け。どんな音も聞き逃すな。〕
わかった。
ゆっくりと慎重にサクマは男に近づく。
………スゥー………スゥー……
サクマの呼吸音。そして草を踏みしめる音のみがこの場に聞こえる。
……ザッ……ザッ……
〔………。〕
「シャーー!」
目の前の草むらの中から蛇が跳んできた。サクマはミロッドを蛇に向け、技を放つ。
「ミロッドマッチ!」
直撃した蛇の体はボウッと音を立て、燃え尽き地面へと落ちた。しかしまだ危機は去っていない。
「サクマ右だ!」
「クッ…ミロッドマッチ!」
すぐさまミロッドの矛先を向け再び放つ。直撃。
〔今度は後ろ!〕
振り向き、炎を放つ。再び直撃。
〔もう1回右!〕
炎を放つ。だが狙いは外れた。
「あぁっ!」
〔下がれサクマ!首をやられるぞ!〕
サクマはステップで後ろに下がろうとするがそれに構わず蛇は飛びついてくる。
「くうっ!」
すかさず左手で首を守ろうとするが、意味は無かった。
〔まさか!〕
蛇の狙いはもとから首では無く…
ミロッド!サクマの右手に握るミロッドだった。
気づいた時には既に遅くミロッドは蛇に奪われ折られてしまった。
まずい…まずいまずい!
あれが無きゃ…!
〔落ち着け。サクマ。勝てる手段はまだ残っている。〕
はぁ!?ボクにはロケットショットしかたいんだよ!
〔それだ。その技を応用するんだ。〕
!?
〔オマエのロケットショットはエネルギーを拳に貯め放つ。大雑把だが範囲、破壊力、攻撃力共に優れてる。だから…〕
〔その逆をいくんだ。〕
逆…
〔ああ。エネルギーを指先に貯めて放つ。範囲や破壊力こそ低いが精密性、貫通力は凄まじい。〕
そんな事言われてもそんなスキルなんか無い!
〔じゃあ何故ロケットショットが生まれた!〕
〔やる前から諦めてどうする!?〕
……!
〔勇気を…持て。…サクマ!〕
…わかったよ!やるよ!
サクマは右手を突き出し人差し指をピンと伸ばす。それ以外の指は軽く曲げる。握りはしない。軽く曲げるだけ。そして全意識を人差し指の先っぽに集中させる。
すると指先に白色の…エネルギー…としか表せないようなモヤモヤが浮かび上がる。
「これは……いける!」
~ニュースキル。『スタープローブ』~
〔それでこそだ。〕
「……スタープローブッ!」
「シャーー!」
再び襲ってきた別の蛇にビュゥンッとエネルギーが突き進み…直撃。エネルギーは蛇を貫通し地面にさえ穴をあけた。
「くッ」
〔どうしたサクマ?〕
人差し指が…痺れる…!
〔もう1回その指で放てるか?〕
いや……無理そう
〔となると…おそらくあと9回…〕
じゃあ下手に使わずあの女王蛇を優先した方が良いね…
〔女王蛇………あれの事か。〕
〔男の口の中に潜む蛇!〕
おそらくだけどあの蛇が他の蛇に指示を出してる。じゃなかったらボクのミロッドなんか奪わない。
〔だな。アイツが指揮官であり、女王!真っ先に叩き潰せ!サクマ!〕
ああ!
サクマは中指にエネルギーを貯め男へと近付く。
〔左の指は女王の為に温存しとけ。〕
となると近付く為に使えるのはあと4回か…
〔む!来たぞサクマ!〕
「スタープローブ!」
蛇に直撃。
残り3回!
ザッ……ザッ……!
地を強く踏みしめ近付くが男は微動だにしない。
〔2体同時に来るぞ!〕
ひとまず薬指で片方の蛇を撃ち落とし、後ろにさがる。コチラに跳んできた蛇を腕で防ぐが牙で刺されてしまう。
「ウグッ」
歯を食いしばり、小指にエネルギーを貯め放つ。直撃!
腕の傷を確認した後すぐに親指にエネルギーを貯めて前方を見る。しかしッそこには男の姿は無かった。
「はっ!?」
〔消えた!?周りを確認しろ!〕
左右を見たのち後ろを振り向くと男が立っていた。
「く!…スターァ_」
エネルギーを放つ寸前カレンが制止する
〔待て!それは罠だ!〕
男の口の中を見ると蛇の姿は無かったッ
〔本体は後ろだ!〕
すぐに振り向くが目の前には無数の蛇が飛んでいた。
数体は腕にまとわりつき、身動きを封じてくる。残りの一体は首にロープのように絡みつき絞める。
「グッ……クァッハ………」
首の蛇を解こうにも腕を封じられ動けない。
〔スタープローブだ…サクマ〕
何をッ…言ってるんだ…首のコイツに撃てばボクごと死ぬッ!
〔あの時のミロッドだ。あれを思い出せ。出力を抑えて細い針のようなエネルギーを放つんだ!〕
………針に…糸を通す…ようにッ…!
右手の親指を首の蛇に向ける。
…ふッ…ふぅー………
途切れながらも呼吸をし精神を落ち着かせる。
やれる……やれる!ボクならやれる!
「スター…」
「プローブッ…」
ビュゥンと首の蛇へとエネルギーが放たれた。
〔やったぞ!〕
サクマの放ったエネルギーは貫通する事無く、蛇を殺すことに成功した。
〔その調子で右腕の蛇を撃ち落とせ。〕
左手の親指からエネルギーを放ち右腕にまとわりつく蛇を撃ち落とす。そのまま右手で残りの蛇をガッシリと掴む。呼吸が整っている分、力が出て剥がす事が出来た。そして小指、薬指、中指から再び放った。
「ふぅ…これで全部_」
〔まだだ!女王をやっていない!〕
すると奥で倒れているミーナが起き上がる。
まさか…ミーナを…!
人差し指に意識を集中させエネルギーを貯める。
意識を朦朧とさせながら起き上がったミーナはなんと驚いた顔をしていた。
良かった………乗っ取られてない……
「アキ!肩に居るッ!」
!?
ミーナの言葉に視線を肩に移すと女王蛇が乗っていたッそのままサクマの口の中へと潜り込んでいく。
「あッ……ぉぇッ……」
「アキ!」
呼び掛けにサクマは気づかない。
「ど…どうしよう!」
ミーナは慌てふためく。ひとまずサクマに近づき、口の中を覗こうとするが、サクマに制止させられる。
「待っ…て……近づいちゃ…だめだ………よ」
「…さきに…お父さんを……おこして…」
喉の奥。内蔵を直接弄られるような不快感に耐えながら言葉を紡ぐ。
「わかった!」
返事をしたミーナはサクマの近くで倒れてる父親を揺らすが、
「お父さん!…お父さん起きて!」
返事はない。
その時、サクマはバタリと倒れるように座り込む。
「ぁあッ……ぁぇッ……」
「どうしよう……どうしようどうしよう!」
「早くしないとアキが!でも…でも…かんがえろ!かんがえろ!」
「今蛇は腹の中!じゃあ腹を外から押す?……それじゃあさらに暴れてしまう!」
「お父さんは起きないし……あと残ってるのは私の…氷のミロッド!」
「………!」
その時何かを閃く。
「もう…考えてる暇は無い!」
ミーナは蛇に折られたサクマのミロッドを拾い上げる。次いで自分のミロッドを取り出し、サクマの腹へ押し当ててこう呟く。
「ふぅ…放出を最小限かつ…慎重に…ゆっくりじっくりと…!……ミロッドフロスト…!」
サクマの腹はゆっくりと徐々に…持続的に冷えていく。
「そしたら…この炎のミロッドで!」
折れたミロッドをサクマの顔の前に持っていく。
「ミロッドマッチ!」
………しかし何も起きない
「嘘!使えないの!」
「やばいやばい!下に潜って行っちゃう!」
「お願いしますお願いします!女神様!どうか私に炎属性のスキルを!」
……その時ミーナの脳内に声が響き渡る。
~『フレイム』を獲得しました~
「ん!いける!これなら!」
折れたミロッドを捨て手のひらをサクマの口の前にもっていく
「フレイム!」
ボウッと手のひらに炎が灯る。
「よし、そしてフロストを強める!」
すると……寒さに耐えかねた女王蛇が温かさを求め口の中から飛び出してきた。
「ゲホッゲホッ!」
「やった!成功した!」
飛び出した女王蛇はこの場から逃げようとする。
「…ゲホッ……ここで……仕留める!」
サクマは残りの左人差し指を女王蛇に向けありったけのエネルギーを溜める。
そして
「スタープローブッ!」
ビュゥンッとエネルギーが突き進み…直撃。
「やった……今度こそ……」
サクマは力尽きたのかその場に倒れ込んでしまう。
「アキ!」
サクマが目を覚ますと真夜中でミーナの家のベッドで横たわっていた。ふと自分の身体を見るとある程度の傷は治っている。多分あの父親が治してくれたのかもしれない。
もう1回ふと左を見ると月明かりが差し込みカーテンが風で靡いていた。その隙間から見える景色はなんとも美しい。
さらにもう1回ふと右を見るとミーナがベッドに突っ伏し寝ていた。
そんな時脳内にカレンの声が響き渡る。
〔サクマ。今後はどうするんだ?〕
最終目標は…あの女神を倒す事だけど…ボクにやれるかな?
〔さぁ?今のオマエが女神と戦うなんて、ノミが人間に立ち向かう様なもんだぞ。〕
わかってるよ…だから…これからは色んな所を冒険して力を付けたい。
〔まるで物語の主人公だな。〕
うん…ボクはこーゆーの憧れてたんだよ。
〔それじゃあミーナとはお別れだな。〕
………。そうだね。いつまでもここには居られない。時期にボクの正体が知れ渡るしね。
〔ひとまず今日は眠って明日に備えよう。〕
〔朝起きたら周辺の地図を貰ってこの村を出よう。〕
………。
〔どうした?〕
…いや…なんかカレンって似てるなって
〔誰に?〕
前世のボクは自分に自信が無かった。だからなりたい自分像を決めてそれを目標に生きてきたんだよ。
その自分像……勇気のある人間。それがキミと似てるんだ。
〔へぇ…〕
ごめん。なんか変な事言っちゃった。
〔気にするな。〕
それじゃあ今日はもう寝よう。
〔ああ。〕
次の日。目を覚ますとミーナは居なかった。ベッドから起き上がりこの部屋から出ると、ミーナとその両親が居た。
すると初めにミーナが気づいた。
「あっ!おはよう!」
次いで母親が。
「あら。おはよう。元気そうで安心したわ。」
そして父親。
「お!目を覚ましましたか。昨日は私とミーナを助けてくださりありがとうございます。身体の傷は治せる限り治しておきましたのでもう大丈夫ですよ。」
「あっ…こちらこそ…ありがとうございます…」
「そんな…お礼なんて……あ、ちなみに今後の予定はあるのですか?」
「はい。この村を出て…別の……村とか国に行こうかと。」
「そうですか……この辺の村は安全ですけど、さらに遠い村となると、近くの国の哨戒隊が居るのでアキさんの立場となると……」
「ん?名前…」
「あっ…先程ミーナから色々聴きましてね。どうやら異世界から来たと…」
「まぁ…はい。」
「ですので見慣れない格好をしてる貴方が国に近づくとかなり警戒されます。」
「なんせハンドセル以外の国は争っていて…常に厳戒態勢ですから。」
「でも…貴方なら何とかなると思いますよ…このミーナがあんなに楽しそうにアキさんの事を話してくれたんですから。」
「私には分かりませんが雲の上の上、ウチュウを目指してるんですよね?」
「無限に続く可能性の世界…そんなウチュウを目指そうとするなんて凄いですよ……」
「貴方の事はほとんど分からない。ましてや会話は今が初めて。それでも貴方なら…いけますよ…ウチュウ。」
………。こんなに褒められたのは久しぶりだ。言葉で背中を押されたのに、嫌じゃない。
ボクはどんな返事をしようか考える前に自然と口から言葉が出てくる。
「はい…!頑張りますッ!」
「アキ…行っちゃうの?」
「うん。」
「あと………ボクの本当の名前は…サクマ」
「サクマ チダ。これが本当の名前。」
〔………。〕
ミーナは目を見開く
「サクマ……花が咲く…そーゆー意味合い?」
「うん。」
「いい名前!」
「私はミーナ フューツ。」
「ミーナってのはこの世界の言葉で可能性って意味なんだよ。」
「良い名前!」
〔サクマ。そろそろ出発するぞ〕
そうだね。
「それじゃあそろそろ出るよ。」
「そう……わかった。それじゃあね!サクマ!」
ミーナはボクが見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
ある程度歩き進んだ時、
さて……次はどこの村に行こうかな?
〔…。サクマ。地図は?〕
あ。
続く―




