第二十話 「三姉妹とレオニード」
レオニードは、三姉妹の村で、子供たちに剣術を教えることになった。
かつては王都の冒険者部隊に所属し、その力をひけらかしていた男が、今では辺境の村で、子供たちの笑顔に囲まれている。
レオニードは、剣術の腕前だけでなく、その真面目で優しい性格で、すぐに子供たちや村人たちに慕われるようになった。
特に、フィオナとは、剣術の腕前を競い合い、お互いを高め合う、良いライバル関係を築いていた。
「レオニード! 次は、あたしが勝つからな!」
「ははっ! お手並み拝見だ、フィオナ!」
二人の声は、学校の校庭に、元気よく響き渡った。
ルナは、レオニードの行動を、温かく見守っていた。
レオニードは、村にやってきた当初は、まだどこか自信に満ち溢れていたが、村人たちと触れ合い、子供たちと交流するうちに、その態度が、少しずつ変わっていった。
傲慢さは消え、謙虚さが芽生え、村のために尽くすことに、喜びを感じるようになっていた。
(レオニードも、変わったのね)
ルナは、そう思いながら、レオニードが教えている子供たちの剣術を見て、微笑んだ。
そんなある日のこと。
村の商業は、さらに発展し、近隣の村々からの商人で、村は活気に満ち溢れていた。
その様子を見て、ルナは、あることに気付いた。
「このまま商業が発展し続けたら、この村だけでは、食料が足りなくなってしまうかもしれないわ」
ルナは、そう考えていた。
この村の農業は、特別な鉱石のおかげで、豊かになった。
しかし、その鉱石は、無限にあるわけではない。
ルナは、新たな食料の供給源を確保する必要性を感じていた。
ルナは、フィオナとミリア、そしてレオニードを集め、自分の考えを話した。
「食料問題を解決するために、新たな土地を開墾したいの。……この村から、さらに奥にある、誰も近付かない森を、開墾して、畑にしたいと思うわ」
ルナの言葉に、フィオナとミリアは、驚きの表情を浮かべた。
「え! あの森を!? 魔物がたくさんいるよ!」
ミリアが、不安そうに言う。
「大丈夫よ。私たち三人なら、きっとできるわ」
ルナは、ミリアを安心させるように、微笑んだ。
しかし、レオニードは、ルナの言葉に、深刻な表情を浮かべた。
「ルナ様。……あの森は、ただの森ではありません」
「どういうこと?」
ルナが、レオニードに尋ねる。
「……あの森の奥には、古代の竜が、眠っているという伝説があるのです」
レオニードの言葉に、ルナ、フィオナ、ミリアは、息をのんだ。
レオニードは、続けて話した。
「私は、銀翼団にいた頃、その伝説を耳にしました。……あの森は、昔から、誰も近付かない。……それは、魔物だけではなく、その古代の竜を恐れてのことです」
レオニードの言葉は、三姉妹に、重く響いた。
ルナは、深く考え込んだ。
この村の未来のためには、新たな土地を開墾する必要がある。
しかし、その土地には、古代の竜が眠っているかもしれない。
「……ルナ姉、どうするの?」
ミリアが、不安そうな表情で、ルナを見つめる。
ルナは、二人に言った。
「……レオニード。その伝説は、本当なの?」
「……はい。ですが、あくまで伝説です。……誰も、その竜を見たことはない。……ですが、もし、その伝説が本当なら、危険すぎる」
レオニードは、ルナに、森へ行くことを、思いとどまるように言った。
ルナは、しばらくの沈黙の後、口を開いた。
「……伝説が本当かどうか、確かめに行きましょう。……この村の未来のために」
ルナの言葉に、フィオナとミリアは、うなずいた。
「ルナ姉が、そう言うなら、あたしも行くよ!」
「私も、ルナ姉と一緒なら、怖くない!」
二人の言葉に、ルナは、微笑んだ。
しかし、レオニードは、ルナの決断に、賛同できなかった。
「ルナ様……危険すぎます! もし、伝説が本当なら、命を落とすことになります!」
「レオニード。……私は、この村の領主として、村の未来を、守る義務があるの。……危険だからといって、何もしないわけにはいかないわ」
ルナは、レオニードに、きっぱりと言い放った。
ルナの言葉に、レオニードは、何も言えなくなった。
三姉妹は、翌朝、森の奥へと向かうことを決意した。
それは、村の未来をかけた、命がけの冒険だった。
そして、その冒険は、彼女たちの運命を、大きく変えていくことになる。




