僕は下手して劣勢ですが、これは果たして決闘ですか?
僕は一旦、そこで言葉を切ったのち、言い放つ。
「人間を怖れず歩み寄ろうとするリースより、現状にしがみついて安心してるだけのあなたの方が、よっぽど臆病に見えますが?」
その言葉を言いきった瞬間、僕は頭を抱えてのたうち回りたくなった。
明らかな中二病だよねこれ。ステータスの称号のあたりに、『イキり中二病者』とか出てるよね!?
右腕のセイグリッドドラゴン以来の黒歴史だぁ……!!!
だがのたうち回ることは叶わなかった。
僕の体が崩れ落ちるより早く、ミャフェイトンさんが、「決闘だぁ」と、静かに、しかし怒りのこもった言葉を発したからだ。
「あーぁ、あの子死んだわね」
アンビーさんが憐みの目を向けてくる。
僕は呆然と呟いた。
「決闘って…?」
それに答えたのは、リース。
「決闘。この国の中で唯一認められている、私刑の方法だ。
通常、決闘では、敗者はその立場と社会的信用を失い、勝者に従う。」
そこに声をかぶせるようにして説明を引き継いだのは、ほかならぬミャフェイトンだった。
「お前にはぁ、死罪だの実験だのと言う手段ではぁ、生温い。
私が直々にぃ、人格すらぁ、破壊してあげるよぉ」
暗くドロッとした感じがする。
これが、殺気か。魔力を感じれない僕が分かるほどとは。さっきのリースしかり、この人たちの魔力量どうなってるんだろう。
そんな、楽観的なことを考えていた時期が、僕にもありました。
僕がいるのは、”決闘場”と呼ばれる舞台。周りは奈落、その下には森。
そう、ここは来る時に見た絶壁、そこに張り出した岩を加工して作られたコロッセオ。
僕はあの後、あれよあれよという間にここへ連れてこられ、「決闘用の武器だ」と刀を返してもらい、そして今ここでミャフェイトンさんと向かい合っている。
彼の武器は、いわゆる錫杖。明らかに鈍器になりうる形状に一瞬ひるむ。
が、ソウレンさんのよりましだと自分を励まして刀を抜刀する。
「はじめ!」
リースの合図と同時に、ミャフェイトンさんの詠唱が始まる。
「浮遊魔法」
その一言で僕は、その場から動けなくなった。
正確には足が地面から離れ、いくら動いても移動できない状態だ。
そして悠々と、ミャフェイトンさんが歩いてくる。
刀を正眼に構えるが、踏ん張りがきかないのは分かり切っている。
その上彼が「拘束魔法」と唱えた瞬間、刀がその空間に縛り付けられたように動かなくなった。
その間に僕の眼前に立った彼。
「どうしてあげようかなぁ…?
あぁ、安心していいよぉ、体が傷ついたらぁ、回復魔法で直してあげるからねぇ。君の心が壊れたらぁ、従属魔法でぇ、正気に戻してあげるからねぇ。」
相変わらずねちっこい声で、余裕たっぷりの笑みを浮かべて彼は言う。
どうせなら蜂蜜たっぷりがよかったな、と僕は思う。現実豆腐だ。間違った、現実逃避だ。
「じゃあまずはぁ、眼球にぃ、細っそぉい針でも刺していこうかなぁ?」
そう言って地面の石を拾い、「重力魔法」と重力で圧縮して針のように引き延ばすミャフェイトンさん。
「覚悟はぁ、いーい?」
ゆっくりと近づいてくるミャフェイトンさん。
全力でもがく僕。
でも何もできないまま、距離がどんどんと狭まっていく。
絶 体 絶 命
その四文字が、僕の頭の上で踊り狂う。
せめて、と、ぎゅっと固く目をつぶる僕。
そして――――。




