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異世界で必要なものは運だけでした。  作者: 白昼夢
二章 新たな種族とメグルの夢
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僕は下手して劣勢ですが、これは果たして決闘ですか?



僕は一旦、そこで言葉を切ったのち、言い放つ。


「人間を怖れず歩み寄ろうとするリースより、現状にしがみついて安心してるだけのあなたの方が、よっぽど臆病に見えますが?」


その言葉を言いきった瞬間、僕は頭を抱えてのたうち回りたくなった。

明らかな中二病だよねこれ。ステータスの称号のあたりに、『イキり中二病者』とか出てるよね!?

右腕のセイグリッドドラゴン以来の黒歴史だぁ……!!!


だがのたうち回ることは叶わなかった。

僕の体が崩れ落ちるより早く、ミャフェイトンさんが、「決闘だぁ」と、静かに、しかし怒りのこもった言葉を発したからだ。


「あーぁ、あの子死んだわね」


アンビーさんが憐みの目を向けてくる。

僕は呆然と呟いた。


「決闘って…?」


それに答えたのは、リース。


「決闘。この国の中で唯一認められている、私刑の方法だ。

 通常、決闘では、敗者はその立場と社会的信用を失い、勝者に従う。」


そこに声をかぶせるようにして説明を引き継いだのは、ほかならぬミャフェイトンだった。


「お前にはぁ、死罪だの実験だのと言う手段ではぁ、生温い。

 私が直々にぃ、人格すらぁ、破壊してあげるよぉ」


暗くドロッとした感じがする。

これが、殺気か。魔力を感じれない僕が分かるほどとは。さっきのリースしかり、この人たちの魔力量どうなってるんだろう。


そんな、楽観的なことを考えていた時期が、僕にもありました。

僕がいるのは、”決闘場”と呼ばれる舞台。周りは奈落、その下には森。

そう、ここは来る時に見た絶壁、そこに張り出した岩を加工して作られたコロッセオ。



僕はあの後、あれよあれよという間にここへ連れてこられ、「決闘用の武器だ」と刀を返してもらい、そして今ここでミャフェイトンさんと向かい合っている。

彼の武器は、いわゆる錫杖。明らかに鈍器になりうる形状に一瞬ひるむ。

が、ソウレンさんのよりましだと自分を励まして刀を抜刀する。


「はじめ!」


リースの合図と同時に、ミャフェイトンさんの詠唱が始まる。


浮遊魔法(フロート)


その一言で僕は、その場から動けなくなった。

正確には足が地面から離れ、いくら動いても移動できない状態だ。


そして悠々と、ミャフェイトンさんが歩いてくる。

刀を正眼に構えるが、踏ん張りがきかないのは分かり切っている。

その上彼が「拘束魔法(チェイン)」と唱えた瞬間、刀がその空間に縛り付けられたように動かなくなった。

その間に僕の眼前に立った彼。


「どうしてあげようかなぁ…?

 あぁ、安心していいよぉ、体が傷ついたらぁ、回復魔法(リジェネレィト)で直してあげるからねぇ。君の心が壊れたらぁ、従属魔法(ファミリア)でぇ、正気に戻してあげるからねぇ。」


相変わらずねちっこい声で、余裕たっぷりの笑みを浮かべて彼は言う。

どうせなら蜂蜜たっぷりがよかったな、と僕は思う。現実豆腐だ。間違った、現実逃避だ。


「じゃあまずはぁ、眼球にぃ、細っそぉい針でも刺していこうかなぁ?」


そう言って地面の石を拾い、「重力魔法(グラビティ)」と重力で圧縮して針のように引き延ばすミャフェイトンさん。


「覚悟はぁ、いーい?」


ゆっくりと近づいてくるミャフェイトンさん。

全力でもがく僕。

でも何もできないまま、距離がどんどんと狭まっていく。


 絶 体 絶 命


その四文字が、僕の頭の上で踊り狂う。

せめて、と、ぎゅっと固く目をつぶる僕。


そして――――。





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