第26話「強大」
「常套策は一撃離脱だろうな。まともにやりあってはだめだ。レイは迫ってくるヒトを警戒しつつ援護を頼むぞ。」
燐のその通信に紬、レイ、ロベルトが了解し、各々が武器を構える。
「作戦会議はもうよいのか?」
小馬鹿にするようにクスクスと笑いながらアマテラスが問いかけてくる。
「行くぞっ!」
その問いを無視して、レイを除く3人がアマテラスに向けて飛び出す。ロベルトは正面に、燐と紬はそれぞれ左と右に分かれる。
「おおおっ!!」
最初にアマテラスと接触したロベルトが振り下ろした斧は、掲げた手の先の障壁に阻まれ、彼は一旦距離をとる。
そして、彼が離れた瞬間に、燐がアマテラスの正面に飛び込み、彼女に向けて剣を突き出す。アマテラスはそれを避け、少しの時間差で雷の剣を振り下ろす紬を見据えると、障壁で止めてから吹き飛ばした。
避けられたものの体制を立て直した燐は、下から斜め上に剣を振り上げる。死角からの一撃であったが、それも障壁に受け止められ、燐は舌打ちをして離脱する。
近接戦闘組が体勢を立て直す隙を作ろうと、レイのレーザーがアマテラスに殺到する。
だが、それも傘で雨を防ぐように障壁に阻まれ、彼女は涼しい顔で浮いている。
「貴様らそんかものか。拍子抜けじゃの。」
アマテラスは、剣を手にして舞うように一回転し、その剣を上に掲げる。
「祭祀・雲割く陽光」
彼女の剣を中心に、レイにも負けぬ光線の弾幕がまき散らされる。
紬が思わず防御姿勢をとる中、ロベルトと燐は弾幕を掻い潜りながらアマテラスに向けて突撃する。
ふたりが切りかかると、アマテラスは弾幕を止め、ふたりと切り結ぶ。
「お前の障壁は攻撃中には機能しないようだな。」
「その通りじゃが、そんなものは些細な問題よ。」
周囲の空間ごと切り裂くように剣が振るわれ、激しい金属同士のぶつかる音が高速で鳴り続ける。
異次元の斬り合いを演じるふたり。
それをしっかりと見つめつつ、紬は三千世界の杭を抜き、ライフルを生成する。
「今っ!!」
アマテラスの剣を燐が大きく弾いた瞬間に、紬は引き金を引く。
雷のエネルギーが凝縮された弾が、体勢を崩した彼女に迫る。そして、それが命中しようとした瞬間。
「喰らうとでも思ったかの?」
仰け反ったような体勢ながら、腕を思い切り振ってアマテラスは体を捻る。
そして、空いた腕と体の隙間をギリギリで紬の放った弾はすり抜ける。
「隊長っ!」
その様子を見送る前に、ロベルトが燐に向けて叫ぶ。その意図を理解し、燐はアマテラスから距離をとる。
「開拓する双斧!!」
幻影開放を放とうと斧を振りかぶるロベルト。そこに蓄えられた力が極大へと達しようとした時──
「祭祀・懐中の太陽」
辺りを白い暗闇で覆うような圧倒的な輝き。アマテラスを中心として放たれたその光により、ロベルトは目を潰され、彼女が見えなくなる。
「クソがっ!!」
見えない中でも先程までアマテラスのいた方向に斧を振り下ろす。
そこから放たれた一双の鎌鼬は空を斬り、遥か彼方へと減衰しながら飛んでいく。
「アマテラスっ……どこだっ!」
目を瞬かせ、なんとか視界を取り戻そうとするロベルト。思わず出たその問いかけに応える声が。
「妾はここじゃ。」
焦点の定まらないロベルトの正面で、ニタッと嗜虐的に笑うアマテラス。
「天ノ御柱」
振り下ろされたアマテラスの腕の先から光の柱が立ち、ロベルトのT-AXの胴体を捉える。
装甲を抜かれはしなかったものの、柱はロベルトを地面まで叩き落とした。
「ク…ソッ……。」
ロベルトは、薄れゆく意識の中で太陽を背に嗤うアマテラスを目にして悔しそうに顔を歪めるのであった。
『ロベルト(さん )!!』
守護隊の悲鳴のような叫びが響き、アマテラスは満足そうに唇の端を舌でなめる。
「さあ、次は誰じゃ?」
悔しさと怒りを混在させたような3人を見回してそう言う彼女に、燐が再度斬りかかる。
紬はフェリスティナの制御による砲台を放ち、援護の姿勢に入る。
「フェー、3番も同時に制御できるか?」
「私を誰だと思ってるんですか?もちろんですっ!!」
その返事を聞き、紬は背にある三本目の杭を引き抜くと、紬の手に顕現した爪状の武器を全て空中に放つ。それは、数十の雷のミサイルへと変貌し、燐を迂回してアマテラスに殺到する。
「フェー、誘爆!」
「はいっ!」
そのミサイルに向けて砲台が弾を放つと、それはミサイルを炸裂させ、それが連鎖してアマテラスの周囲は雷の爆炎に包まれる。
バチバチと空気中でスパークする音が響き、煙も上がる。そこへ燐が飛び込み、微かに姿が見えるアマテラスを斬りつける。
だが、それは彼女がギリギリのところで剣で受け止め、力を込めて弾く。
燐は軽く舌打ちをして距離をとった。
少し焦げたような跡のある服を見て、アマテラスは小さく舌打ちをする。
「少し焦がされたか。じゃが、妾を殺すには力が足りんぞ!」
そう言って燐と紬の方へ、紬の攻撃を受けたからか、頭に血が上ったように突っ込んでくるアマテラス。
その背後から声が響く。
「魔法の旋律!」
数多の光線がレイによって放たれ、それが全てアマテラスに迫る。
彼女の感情が揺れ動いた一瞬を狙った一撃。タイミングには文句なし。だが──
「八咫鏡」
打って変わって冷静な表情で、冷酷な目でレイの方へと振り返ったアマテラスは、迫る大量のレーザーに向けて手を翳し、一言呟いた。
その手の先に顕れたのは巨大な鏡。
レイのレーザーがそこに突き立つと、動きを止め、鏡と接触している先端がが大きく湾曲する。
そして、その進路を反転し、レイに向けて自身で放ったレーザーが降りかかる。
「えっ……?嘘っ!!」
想定してなかった出来事に体が一瞬硬直したレイだが、慌てて回避行動をとる。
しかし、鏡を中心に拡散するように向かってくるレーザー群を避けきれず、レイの機体をレーザーが捉える。
腕部、脚部の装甲が溶解し、背部のブースターも撃ち抜かれて小爆発を起こす。
「きゃああっ!」
「レイさんっ!!」
悲鳴を上げるレイを見て、フェリスティナが思わず声を上げる。
地面に向けて落ちていくレイは、空偵隊の機体に受け止められ、地面との衝突は避けられた。
「さあ、厄介な虫はあと2匹じゃな?」
紬と燐の方を睥睨し、そう呟くアマテラス。
「絶対に負けない……!」
雷の剣を手にそう呟き、紬はアマテラスに向けて飛び出した。




