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天罰戦線の殺神者  作者: 有栖
第六章『旧東京偵察戦』
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第19話『発令』


-2527年10月10日-AGF極東支部第四階層-集会場-


紬と燐の訓練から一週間が経った。

今から為されるかつてない作戦を前に、AGF極東支部の隊員が集会場に集められていた。


新人としてこのAGFに入ったときに紬が見た、整然と同じ制服が並び立っている光景。しかも今回は新人だけではなく、全隊員が揃っている。そんな光景を目の前に、紬は冷や汗をかいていることを自覚する。

当然だろう。彼が立っているのは、あの日とは違って壇上であり、AGF全隊員を見下ろしているのだから。

そんな彼の斜め前では、燐が演説を行っている。


「あの日、我々は神によって地上を追われた。皆が大切なものを失い、地下で苦汁を飲み続けた。我らを完全に滅ぼさんとする神に抗い、戦い、そこでも多くの仲間が失われた。しかし、我らは唯一の聖域である地下を守り続けることができた。そして、それは今このときのためのことであった。」


燐の言葉に、失った家族や仲間を思い出して目を伏せる者などを見回し、燐は改めて覚悟を決めたように宣言する。


「神の攻め手が薄くなった今こそ、この作戦を行う時だ。その名も、『旧東京偵察戦』。我らのかつての首都であった東京の現在の状況を把握し、奪還を目指す。」


その作戦に、集会所はざわめきに包まれる。

その声の中には、興奮したようなもの、悲観したようなもの、諦念につつまれたようなものなどさまざまなものがあった。

そんなざわめきを掻き消すように、燐の鋭い声が響きわたる。


「確かに、今までの我々なら無謀であっただろう。だが、今は違う。神を倒すことができる唯一の希望、神楽紬。そして、彼に付き従うフェリスティナ。このふたりの存在によって状況は変わっているのだ。」


壇上の紬は、その言葉で自分にたくさんの視線が集まってきたことを自覚する。その圧力に思わず目をそらしうつむきそうになったが、彼の頭に声が響く。


『下向いちゃだめですよ紬さん!こういうときはちゃんとドヤッとかないと!!』


場にそぐわない明るい声に励まされ、紬は少し苦笑いをしつつもそらしそうになっていたその目をしっかりと前に向ける。


『その方がかっこいいですよ~!』

『うっせえ!』


まだしゃべり続けようとしたフェリスティナを頭の中で制し、燐の演説に改めて耳を傾ける。


「今こそ、地上の奪還に動く時なのだ。だからこそ、まずはこの作戦で目標となる東京の現状を把握する。そして、この作戦に従事するのは少数精鋭だ。神楽紬と、七瀬・M・レイの二名に出撃してもらう。」


そう言って燐はチラッと紬と、その横にいるレイに、『いいんだな?』と言いたげなアイコンタクトを送る。

紬と燐はそれに頷いて応える。

それを見て少し笑顔を浮かべて正面を向き、再び鋭い眼光を隊員達へ向けた。



「偵察隊の出撃は本日未明。彼らが帰ってくる場所を我々は守り抜くのだ。ここの防衛を含めてが作戦だ。いいなっ!」


その燐の声に応じるように、集会所全体から雄叫びのような声が上がる。


「現時刻より、旧東京偵察戦を発令する。総員、自らの役割を果たせっ!!」




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