46.なんでハードロック黙ってんだよ
Q.白い森の人たちをどう思いますか?
A.筋金入りのクソ野郎共ですね。
byフローレンス
トレーラーに揺られることはや一週間が経過した。
ようやく新天地にシガレットたちは狂乱の丘に到着する。
ライトニングのお使いで狂乱の丘の首領であるオルカと対談の席を設けているし、ライトニングが事前に使いの者を出しているため入国も容易だった。
海賊団があるように風光明媚なヴェネツィアのような港町が広がる。
シガレットはつくづくこれが仕事で無ければ一週間ほどここでのんびり酒と煙に巻かれながらのんべんだらりと過ごしたいとつくづく思っていた。
さらに数時間トレーラーを走らせているとエルドラゴ海賊団の本拠地に到着する。
「何用でしょうか?」
門番のNPCが聞く。
「ライトニングの紹介で来た。白い森だ」
そう言うと門番が納得したのか正門が開く。トレーラーはそのままエルドラゴ海賊団の敷地にある駐車場に停車するとメイドのNPCが館に案内した。
応接室に通されると男性プレイヤーが既に高級そうな椅子に座っている。
シガレット、ハードロックが対面の席につく。なおヴォトカはこういった会議が面倒臭くなしサボタージュを極め込んでトレーラーで眠っている。
なお当人の建前は運転に疲れたの一点張りだ。
「ようこそ狂乱の丘へ、私はエルドラゴ海賊団副首領サーディンです」
「白い森、シガレットだ」
サーディンが差し出した手をシガレットは素直に掴み握手する。
「ここでは感染対策しなくていいですからね」
「仰る通り、さて本題といきたい」
シガレットは席に座ると目を細めた。
「ええ、と言っても概ねの情報は既に頂いておりますのでスムーズに話が進むと思います」
「ほう、それは良かった。こちらも手短に共同戦線を取り計らえて頂けるのはありがたいですからね」
シガレットはサーディンの言うことを鵜呑みにしない。表面では取り繕う言い方をしているが探りは欠かさない。
「提示されている条件も特に問題ないです。しかし、一点担保として確約して欲しい事項があります」
「確約ですか?」
「ええ、エルドラゴ海賊団首領であるオルカの身柄の奪還を計画に組み込むことです」
「すみません、こちらはFSS史に疎く、そちらの首領の状況を存じていません」
「現在オルカはエルダー合衆国に収監されております。手段は問いませんがあの国からあの人を解放させて欲しいです」
「それが実現可能かまた了承の可否を私どもは裁量を持ち合わせておりません」
「であればこの共同戦線の話は無しだ。持ち帰るのも以ての外、ここで決めて下さい。白い森、あなた方をライトニングを随分と買っていたようだ。それにフローレンスもだ」
サーディンは目の色を変えていた。
「……こっちに選択肢を与えないつもりか?」
「ええ、その通りですシガレットさん」
「質が悪いなぁ。止めてくれよそんな理不尽」
「こっちもこればっかりは譲れないんです」
交渉がもつれ込んだ場合について、シガレットとグルーパーにはとある取り決めがあった。
それはシンプルに二つ。
服従か抵抗だ。
文字だけ見れば服従するか抵抗するかと書いてあるように見えるがその意味ではない。
服従させるか。
抵抗させた上で服従させるか。
結局は暴力で解決。これに収束する。
「ふざけるなよ?」
シガレットは懐からリボルバー拳銃を取り出しサーディンの眉間に押しつける。勿論虚仮威しなどではなく実包が装填された拳銃だ。
「ふざけおりません」
サーディンは眉一つピクリとも動かさず平然と答える。
撃鉄を起こすと、シガレットはもう一度言葉を放つ。
「その要求はここでは飲めない」
「飲んで頂きたい。首領が我々には必要なのです」
サーディンは言う。
シガレットはグルーパーの性格を思い出す。
それから拳銃を懐に戻すと静かに椅子に座り直す。
「わかった。その話引き受ける。と言っても期待しないでくれ。あくまでうちのグルーパーならこう言うだろうと代弁しているだけだ。もしも反故するようなことがあっても吊るし上げるのはグルーパーにしてくれ」
「ありがとうございます」
サーディンの一言でまず一つ目の議題が解決する。
「じゃあ次だ。白い森側の事情になるがとあるアイテムたちを探している。詳しく話すと――」
「その話はライトニングから聞いております。ありますよ『浅緋のニライカナイ』が」
サーディンはニヤリと笑う。
シガレットはその言葉を聞いた瞬間、露骨に、それはもう苦虫を噛み潰したというのが当てはまるような顔をした。
サーディンはシガレットの恫喝に対し『薄緋のニライカナイ』の話を持ち出さなかった。オルカの身柄にこのカードを切ってもよかったはずだがサーディンは胆力だけでこの切り札を温存したのだ。
それは何故か、簡単であるもう一つある厄介事を白い森に擦り付けたいからだ。
「要求は?」
「とある令嬢の護衛です」
その一見すれば簡単そうな任務が前途多難な珍道中になるとはまだ誰も知らない。
そして、この男はそんな現状を知る由も無く、トレーラーで眠っていた。
「うーふぁー……よく寝た」
ヴォトカはそう言いながら目を覚ますをウォッカをラッパ飲みする。
それから布団で眠ったままの幼女エルフ、サニーの顔を見に行く。
そこには静かに外を眺めている幼女の姿があった――。
「やっべえ、サニー目覚めてんじゃん」
ヴォトカは半笑いでウォッカを更に勢いよく煽った。




