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33.ホワイトフェザー

だが私は謝らない

byグルーパー

 

 

 

「第七試合、開始ィ!」

 MCの声とは裏腹に、恐ろしく静かな開戦だった。

 

 バレットはエアロの足に捕まると低空飛行をして陣取りを始める。

 市街地フィールドの半分は頭のイカレタやんちゃな二人組が既に爆破されている。

 

「俺が狙撃するなら……時計塔だな」

 

 時計塔のてっぺんにある展望台を見る。

 

 キラリと太陽光が反射するのが見えた。

 

 

 時計塔までの距離はおおよそ800メートル、ここまでの距離なら約1.5秒で撃ち抜ける。

 発砲を察知してからバレットがエアロから手を放すのに0.5秒、約1秒落下することができる。

 攻撃を避けるには十分な時間だ。

 

 低空飛行もあり、石畳に電車道を作りながら着地すると建物と建物の隙間に隠れる。

 

 

「あっちのキルゾーンは800メートルってところか……マジモンのスナイパーじゃねえか……こっちは森の中でしかまともな射撃したことねえっっての」

 バレットが持つ狙撃の技術は白い森の中では腕が立つ方だが、キルゾーンはせいぜい200m程度だ。それ以上の距離を狙撃した事が無い。

 

「やれるかかな?」

 地面に降り羽休めしているエアロに聞く。毛繕いのような仕草を止めて静かにバレット見る。

 空はすっかり暗くなっている。開始が日没ということもあるが、ピンチでありチャンスでもある。

 エアロはバレットの持つライフルの上に飛び移る。そして羽を折りたたみ鳥の形を変えてライフルのスコープに変化する。

 

「やれってことか」

 

 ボルトを少し引き弾が込められていることを指で確認する。

 相手の位置は時計塔の展望台、それ以上具体的な場所はわからない。

 

 

「やるしかねえ!」

 

 路地を飛び出し、スコープをのぞき込む。

 

 

 レンズ越しに見えた世界は、仲間が繋いだ勝利への方程式だった――

 

 地形を破壊し、絶好の場所をあえて作り追い込む。

 

 そして最後に振りかけた液体は、毒でも酸でも無かった。

 

 

 太陽の光を吸収し、暗くなると蛍光する塗料だった。

 

 レンズを必死にのぞき込むミザは気付かない、自分が優位であることを確信していたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 撃鉄が降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火薬の炸裂とストック越しに伝わる反動。風に吹かれて香る硝煙が鼻につく――。

 

 

 

 

 スキル『キャットアンドマウス』

 

 ホワイトフェザー専用スキル。その効果は足音が無くなり、装備品から出る音が聞こえなくなる。

 

 

 

 バレットの目の前にポップ画面が現れる。

 

 

『新たな職業ホワイトフェザーに覚醒しました』

 

 ポップ画面をタップして消すと、白い羽が広がりながら、バレットのかぶっている帽子に集まり白い羽飾りとなった。

 

 

 ボルトを引いて薬莢を取り出し、次の弾を装填する。

 

 

 

 

「勝者! バレット! ワンショット・ワンキル。まさに最高の狙撃、そしてここに来て再び白い森、ユニークジョブの覚醒だぁ! まるで小説の主人公だ!」

 MCの熱烈な声が会場に響いている。

 

 

 

 

 バレットは、ライフルを抱えて薄紫の空を眺めながら静かに息を吐く。

 

「あと一人だな」

 

 

 

 

 

 

「それではいよいよトワイライト連邦最後の一人、剣聖のランドが市街地フィールドに降り立ちます!」

 

 

 建物の屋根に登り、ランドがフィールドに入るのを待つ。

 腰を下ろし、片膝を立ててライフルをその上に乗せる。

 

 

「では、最後の試合、始めッッ!!」

 

 

 

 バレットは引き金に指を入れると静かに引き絞る。

 

 スコープの中心には全身に分厚い金属フルプレートアーマーを着込み、身の丈より大きな剣を肩に背負い込んだ男がいる。

 

 乾いた撃発音と共に弾丸はフルプレートアーマーの頭部にある視界を確保するための僅かなスリットに弾丸がねじ込まれる。

 

試合終了のコールが鳴る。

 

 

 

「これも……ワンショット・ワンキル……一撃です……」

 

 

 

 全ての試合が終了しバレットはコロシアムに戻される。勝利者インタビューを受けるも柄にも無いことであるため一蹴して控え室に向おうとした。

 踵を返すとグルーパーが代表として現れ、インタビュアーの前に立つ。

 

 

 

「よし、これで、俺たちの勝ちだ! ふっはっはっはっは!!」

 

 悪役ムーヴを一貫していた。

 

 だが、よくよく考えると、こいつは言うだけ言って控え室で酒をたらふく飲んでわいわいがやがやしているだけだ。

 その上、グルーパー以外の二つ名をクソほど適当にイジりながら付けたという罪科もある。

 

 白い森一同はグルーパーに対し、なんだかとてつもない殺意を覚え始めた。

 

「トワイライト連邦の諸君、また戦いましょうやぁ(物凄い煽りボイス)」

 イキリ倒しているグルーパーの前に、流石に苛立ったのか、トワイライト連邦側の選手が全員ぞろぞろと出てくる。

 

「クソ、バカにしやがって!」

 音速卿ソニックが血管を浮かせて怒髪天を衝く。

 

「なんだぁ敗北者ぁ?」

 グルーパーはいよいよ調子に乗っている。

 

 

 

「俺たちも加勢するぜ」

 

 グルーパーが振り返ると白い森の六人がニッコリと微笑みながら並んでいる。

 

「FOOO!! 流石俺たちの仲間だぜ!」

 

「何言ってんだグルーパー、13対1だぞ?」

 メロカルは右手の親指を地面に向けてにこやかに軽快な口調で言う。

 

 

「いや、それは、えっと、そ、そうこれはパフォーマ――」

 

 

 

 

 

 

 閉会式が始まる。

 

 会場は、コロシアムのど真ん中で正座させれて石のプレートを膝の上に乗せられた上、首に看板を掛けられた瀕死のグルーパーを見て最高潮の賑わいを見せていた。

 ちなみに看板には『私は、仲間にイカレタ二つ名を付けた上、トワイライト連邦の方々に不快な思いをさせました』と書かれている。

 

 

 締まらない幕引きだったが、ライトニングから問題なく『緑青のアヴァロン』を渡して貰えることが約束された。

 

 

 

 

 

 迫害女と大闘技編 完

 

 

 

 


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