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32.次は任せた

 

 

 木材や藁が腐ったような臭いが立ちこめる。

 

「主さん、臭いっす! 鼻がヒリヒリするっす!」

「ロボ、それ吸い過ぎると死ぬぞ」

 ヴォトカはテイマーのスキルで獣などと会話出来る。

「えええ、マジっすか!? めっちゃヒリヒリするっす!!」

「うん、だから吸わないでね」

「えー、何でっすか!?」

「いやだから粘膜が爛れる」

「マジっすか危ないじゃないっすか!」

「さっきからそう言ってんだよなぁ……」

 この通り、獣と話せるようになってからロボと会話した結果、とんだバカ狼であることが判明した。誰それ構わず尻尾振ってしまう、もはやただの愛くるしいワンコである。

 

「なんか、焦げ臭いっすよ! 鉄砲の匂いがします!」

 ロボの鼻が確かなら、おそらくミザが近いということだ。

「ロボ、時計塔と教会どっちから匂いがする?」

「うーん、教会っすかねえ?」

 

「そっか……じゃあ、離れるぞ」

「え、何でっすか!?」

「おま……さっきまで教会を起点に300m四方に爆薬をばらまいてたじゃねえか」

「え、あれ爆弾なんすか!? ささみジャーキーじゃないんすか!?」

「んなわけねえだろ、サイズを考えろ。ほら走った走った!」

「了解っす!」

 ロボは後ろ脚で地面を蹴る。

 

 

「じゃあ、頼むよ」

 ヴォトカはカンプピストルを空に向って打つ。発射された発煙弾が炸裂し赤色の煙が広がる。

「ご主人! 足音が聞こえるっす! たぶんあの陰キャお人好しトカゲ野郎の物っすね!」

「なんか、モラセスのバディと仲悪いのか?」

「いやご主人様、普通に考えて下さいよバカなんですか?」

「おう? なんだとこのバカ犬」

「あのラプター、寡黙で、気遣い出来て、パワーもあるし、毒持ってるし、餌分けてくれるし、良い奴なんすけど、キャラが! 被ってるっす!」

「いや、被ってるというか向こうが上位互換だな」

「でも、トカゲ野郎よりヨヨさんから餌もらってるっすよ!」

「お、おう、そうか……」

 

 

 そうこうしているうちにモラセスが到着する。

「守備は?」

「設置中に何度か狙撃されてるな、たぶんここもバレてんだろうな」

「位置はわかりそう?」

「さぁな、そいじゃ、かましますか」

 モラセスはポケットからスイッチを取り出し躊躇なく押す。

 

 

 

「ぶっ飛べやクソが!」

 

 

 

 カチッ――。

 

 

 

 花火の炸裂音と言い表すには荒々しくそして殺気が香るほどの危険だ。火柱の赤が見えると衝撃波がロボの毛を逆立て、音が全て終わった後に広がる。

 

 市街地フィールドの半分はこれで更地となった。

 

 勝利のコールは来ないことからミザはまだ生きていると言うことになる。

 

「チッ、逃げやがったか」

 モラセスは顔をしかめる。

 

 

 周囲を見渡したモラセスとラプターは一瞬で目の色を変え、ヴォトカを突き飛ばす――。

 

「あぶねえ!」

 

 遅れて聞こえる銃声はモラセスの胸を貫通する。

 

 

「大丈夫!?」

「持ってけ!」

 そう言うとモラセスは瓶をヴォトカに投げ渡し、消えて行った。

 

「ロボ、走れ!」

 

 大地を蹴り上げ、ロボは加速しジグザグに走行することで狙撃から逃れる。

 ヴォトカが打たれた場所と角度から狙撃地点を割り出し追い込みを掛ける。距離が縮まればミザにも有利だが今は進むしかヴォトカに出来ることは無い。

 

 召喚スキルで増援を呼びだしてもいいがミザの射撃精度ではいい的になってしまう。手札にある最速はロボ以外にいない。

 

 今はただ被弾しないことを祈りながら距離を詰める。

 

 

 瓦礫をかいくぐり、損壊していない市街地に入り込んだ瞬間、ミザの銃に装備されているスコープがキラリと光る。

 

「見つけた十五件先の建物屋上だ!」

「了解っす!」

 

 ロボは全身の力とき放ち、建物の屋上に飛び乗ると建物を超えるように跳ね回る。

 

 肉眼で目を凝らして初めてミザの扱う銃の先端を捉えることが出来る。

 

「見つけた――ッ」

 

 ミザは一瞬で射角を修正し空中にいるヴォトカに狙いを澄ませる。

 

 甲高い炸裂音と共にロボが空中に投げ出された。そのまま地面に投げ出される。

 

「いってえなぁ……」

 

 カチャという音が聞こえる。

 ヴォトカの眉間に銃口が当てられる。

 

「チェックメイトだ」

「俺はポーンだぜ?」

 そう言うとモラセスから受け取った瓶の栓を抜き、中の液体をぶちまける。同時にミザの撃鉄が鳴り響きヴォトカは敗退する。

 

「なんだこの透明の液体は?」

 ミザの言葉を嘲笑うようにヴォトカは消え去る。

 

 

 

 

 

「勝者、ミザァァァ!!!! 煮干しを食べると歯が折れるヴォトカと仲間の不幸は格別旨いモラセスを倒し、一気にトワイライト連邦側が王手に近づくゥゥゥ! 白い森、もう後が無いぞ! トワイライトの誇る魔弾の射手に対抗するのは――!?」

 MCの煽り文句が会場に響く。

 

 

 会場の熱気と裏腹に静かにその男はコロシアムの真ん中に立っていた。

 

 

「後は任せろ――」

 

 男は静かに呟くとスナイパーライフルの安全装置のロックを解除する。

 

 

「早速登場! とろろを食べると即死する男バレットだァァァ」

 

 

 バディの鷹型ロボットのエアロと共に市街地フィールドのバレットは飛び込んだ。

 

 


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