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20.一点極化の暴力

え?今からでも入れる生命保険があるんですか!?

「あ、便器(ヨヨ)さん」

「何でしょうか、クソ失礼なグルーパーさん?」

「暇だから冒険者の話でもしてくれや、暇で死にそう」

 この世界ではプレイヤーのことを総称して冒険者というくくりにしている。

「冒険者ですか……そうですね」

 ヨヨは静かに空を見る。

「私は実際に会ったことはないのですが、扶桑という国が出来るまでの話で冒険者がいたのですがその人の話は好きですね」

「どんな話だ?」

「悲しい話です、その人は常に銃を片手に腰に拳銃を持っていた。驚くほど恐ろしい姿をしていながら心優しいがいつも一人。町中どこもかしかも彼を気味悪がっていました。彼は迷惑をかけないように町外れの寂れた館を買い取って暮らしていたそうです。しかし魔物が訪れると銃を取り出して風より早く戦いに赴き、敵を倒して倒して倒して、そして静かに去って行く。そんな話ですね」

「へぇ、無報酬でそこまでやる奴がいるんだな」

 モラセスは茶化すように言う。

「それから程なくして、扶桑皇国がエルダー合衆国から独立する際の戦争で彼は戦死して以来、姿を見た者はいないそうです。エルダー合衆国ではこの男をゴーストと呼んでそれはとても恐れられているとか」

「そんなに強かったのか?」

「全て一撃必殺、狙った獲物は必ず仕留めたそうです。まるで魂を刈り取る幽霊のように逃げても逃げても振り返るとそこにいる……なんて噂も」

 ヨヨは口角を上げて子供のように楽しそうに語っていた。

「……いい話だな」

 グルーパーはそう呟くと、通路から鎧が軋む音を捉える。

「グルーパー!」

 モラセスが拳銃を抜き取りハードロックが大盾を構えヨヨを守るように陣取る。

「おいおい、俺がドアノブ担当かよ」

「丁度良いだろ見せ場だぞ」

「はぁ、クソ……」

「頼むぜ!」

 足音は徐々に大きくなり、ついには荒々しい音と共に扉が破壊された。半月の刃が顔を突き出し、グルーパーの顔を反射させている。

「戦斧か……」

「ここにヨヨがいるな」

 低い声で全身をフルプレートで覆い、巨大な斧を両手で軽々と持っている。身長はグルーパーの170センチメートルをダブルスコアで超えている。

「巨漢だな、ここに王女はいるが、ご用では無いそうだ」

「うるさい、殺すぞ」

「そっちがうるせえミンチにするぞ」

 グルーパーは手袋を装着すると呼吸を普段より細かく小さくする。

「退け」

 グルーパーは言葉を発さずに、にやりと笑い中指を立てて相手を煽った。戦斧を感情のままに振り下ろす。

 しかし、決して大柄とは言えない男は未だそこに立っている。それどころか、戦斧の一撃を手の平で受け止めている

 刃を掴んだ手はがっしりとその場に固定された。男は何とか手を払おうとするが、戦斧は微動もしない。

「クソが!」

「レベルは俺の方が高いがそれ以上にステータスの振り方がちょっとピーキーなんでなッ!」

 グルーパーは左手を握り込み、拳を固める。

 大きく息を吸って、肩甲骨を柔らかくし腹筋を内側に締め上げる。指先は大地を掴むようなイメージで、右手を引くと同時に左手を前に突き出す。

 鎧は大きく宙を舞い、後ろにあった大理石の大きな柱に激突した。

 

 これが全てのステータスポイントを筋力に振り与えた男が放つ一撃である。

 

「25でこんなもんか」

「うわぁバ火力」

「誰がバカだ、何せうちのバディの能力は食した果実の数だけステータスを上げてくれるんだからな」

 グルーパーのバディである水蜜の果実の一種にはHPとMPを全て回復し、グルーパーが食べた時だけ生命力のステータスが上昇する能力がある。

 これをグルーパーは何十個も食べることでステータスを向上させていた。その結果、高耐久、高火力の一撃を実現させた。

「グルーパーのバディ、長いスパンで見りゃ強いよな、このゲームは最大でも100しかステータスを振れないからな」

「モラセスの言うとおりだが戦力皆無だし、ちなみに俺は筋力なら100以上振れるけどな」

「スキルポイントが100しか手に入らねえのにな」

「バレットが言うにはアイテムとかで更に振れるらしいな、俺のもそうだが」

「これで筋力向上の実とか出たら笑えねえよ」

「だな、さて、と、ここまでコイツが来たと言うことはボチボチ、あのクソがなんか言い出してくるだろうな」

 程なくして、第一王子リオンからの使いが一騎打ちの申し出を出してきた。

 既に戦況はメロカルの奮闘もあり圧倒的差でグルーパー側が勝利している。

 

 グルーパーは直ぐさま七匹を集めると、会議に移った。

 

「さて、一騎打ちですが七名で受けましょう!」

 

 畜生共の狂宴が始まる――――。


正直すまんと思ってる

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