21.怒りの拳
いずれ変革する。俺たちはそれの触媒でしかない。
byグルーパー
俺たちの目的はサニーを助ける。ただそれだけだ。
理由なんて言うもんはそんくらい丁度良い。
理屈を捏ねて、詭弁を振り回したところで、肝心なのは熱いほどの温もりがある血が心臓に通っているかどうかだ。
この国は元々ダメだった。あとは誰かの一押しが必要だっただけ、それがたまたまよそ者だったと言うことだけだ。
「この俺が直々に貴様を討ち滅ぼしてくれる」
第一王子リオンは、堂々たる出で立ちで言い放つがグルーパーは欠伸しながら言葉にならない音で返す。
「癪に障る。殺してくれる」
「これは戦争だ。平等じゃねえ」
「今更それがどうした?」
「いや、先に断るだけだ。第一王子、ここで降参するなら財と名誉の剥奪で済むだろう」
「怖じ気づいたか雑魚め」
グルーパーは耳くそをほじくりながらふぅと指についた粉を吹き飛ばす。それから静かに手袋を装備する。
「怖いさ、ずっと、決闘開始の鐘が鳴らないで欲しいと思っている」
この言葉はグルーパーの本音だった。
だがその言葉はその場にいた誰もがジョークとしか思っていなかった。
六人を除いて――。
始まりの鐘が鳴る。
リオンは剣を両手に持ち、一気に駆け、グルーパーの心臓目掛けて剣を突き立てる。
そしてその剣は乾いた銃声と共に地面を滑った。
それから乾いた銃声が遠くで小さく鳴った。
距離にして800メートル、速度秒速500メートル、重量175グラムの塊がリオンの膝を打ち砕いた。
「……卑怯者め!」
「卑怯? じゃあお前の後ろにいる重装備の兵士は何だ?」
グルーパーは静かに言う。
「クソッ」
「まぁ、と言ってもありゃ、死体か」
ミオリアとシガレットは悪びれることもなく、重装備の兵士に向って致命的な一撃をぶち込んでいた。
「さて、鐘を鳴らしたのは友人のハードロックで、そしてあの鐘がある塔にはもう一人いる」
グルーパーは静かに言う。表情を変えずに。
「おのれ……仕方あるまい、あれを見せよ!」
リオンは部下に指示を出すが、肝心の部下達はもういない。
「さて、呆気ない幕切れだったな」
静かに、それでいて劇場に身を任せながらグルーパーは右の拳を振り上げる。
「どういうことだ……」
「グルーパー、獣人の解放を済んだぜ」
土埃と血でボロボロになったヴォトカとモラセスが頭に耳が生えた子供を抱えている。
「……なっ、どうやって気付いた!」
リオンは奥に隠していた秘策までグルーパーに看破されていた。
「なに、簡単さ、ただ獣人の親が「子供がいない」って俺たちに言ってきた。それだけだ」
グルーパーは平静を装うが、それも既に限界を迎えている。
「雑魚の分際で、晩餐会では我に手も足も出な――」
「そりゃあ、大義が無いからな、今はある」
ただの一撃であったが、その日、フライト王国は大きく動いた。
戦争はさっくりと終結した。そして今いるのは城の会議室だ。
「第三王女ヨルハラ」
第一王女ヨヨは静かに口を開く。
「何でしょうか?」
「率直に言いますと貴方を王位にしたいと考えています」
「断ったら?」
「リオン諸共処刑です」
「拒否権ないのですね……私は王位とかどうでも良くて静かに暮らしたいのです」
「それは出来ません、知っての通り私は王族では無いのですから」
「そうね、知っていたわ、貴方が獣人であること、この国を変えたいことを知っていました」
第二王女ヨルハラは毅然とした態度で言う。
「では何故! 変えようと思わなかったのですか!」
「……私は恵まれていませんでした。知っていますでしょう?」
「それは……」
ヨヨは黙り込む。この二人の会話を聞いても七人はどういうことか理解できなかった。
「ですが、ここまで変わったのなら今更ながら役目を引き受けます」
毅然とした態度は未だ変わらず。それでいて視線は凜としており表情は朗らかである。
「よろしく頼みます」
ヨヨはそう言って頭飾りを外した。
それからの詳細は省くが、リオンは反逆罪で処刑、第二王女は身柄を拘束していたが正式に国のトップになった。
結局、ヨヨは一を騙し続ける呵責に耐えられず、王位継承権を放棄、その代わり半ば脅しで第二王女に獣人の権利を保障することを誓わせた。
「なんか、呆気ないな」
メロカルは帰り道で呟く。
「まぁ、これで月白のマグメルとヨヨさんが確保できたのでとりあえず第一弾はこれでいいでしょう、俺は疲れましたよ」
グルーパーはため息をつきながら言う。
「まぁ、でも、楽しかったな、楽園からはかけ離れているけど」
これにて腐敗した国、完了です。
次回より、迫害女と大闘技編がスタートします。




