第76話 デレました
ピョコピョコ。
街中を歩くその物体に街の人達の視線が集中する。
ピョコピョコ。
少女の頭の上に存在する、ちょんまげの様に生やしたそのプルプルした物?を怪奇、いや、畏怖、恐怖の視線が集まる。
「なぁ、あれって・・・。」
「魔物だよな?」
「い、いえ。魔物がこんな所にいるわけが・・・ないわよね?」
「きっと被り物よ。」
ミョーン。
街の人達がそれぞれひそひそ話をする。被り物と言った声が聞こえた時にはぐるりとその物体は回ったり、飛び跳ねて少女から少女の頭に乗り移ったりと何とも言えない不気味な動きをしたり、器用に皺を作っては目と口を作ったりして、周囲に魔物だと悲鳴が広げさせる。それを見てロシィとリリィがニシシといたずらな笑みを浮かべ、夢叶にエリィとシルヴィ、エティの4人もその反応には笑いを隠し切れない。
なぜ、こんな事をしているのか。魔物を奴隷として扱うのは前代未聞らしく、ライムが他の魔物と同じように扱われないよう、討伐されないようにお披露目をした方が良いと受付の猫耳お姉さんから言われたので実行しているのだ。
討伐はしていないが、害となる亜種のスライムに対処したという事で依頼は達成となり、金貨3枚手に入れた。この国でも金貨は銀貨10枚分。銅貨なら100枚となっているようだ。1泊1人当たり平均銀貨4枚らしい。
「この通り、奴隷の首輪?も嵌めているの大丈夫ですよ~。」
「このスライムは私達の仲間なので間違えないでください。」
リリィとエリィが声を上げ周知に努めてくれている。
「・・・なぁ。何か忘れている気がするのは気のせいだろうか?」
お披露目の為に歩きながら夢叶はそう呟く。
「ん~?何かあったっけ?」
「何かあったはずなんだよ。物凄く頭がモヤモヤしてるんだよな~。」
う~ん。とロシィに返事して思い出そうとする。
「言われてみれば、確かに何か忘れている気がする。」
ロシィも一緒にう~んと首を捻る。
「ユウ。ロシィ。それは賊の事じゃないか?」
「「それだ!」」
賊とは、ライムと出会う前に女メンバーに如何わしい事をしようとして返り討ちにし、身ぐるみを剥いで素っ裸でマディーナ森林に放置していた8人の男達だ。剥いだ鎧も重たく、近くに一緒に放置している。
――――マディーナ森林
「早く戻ってきてくれー!」
「死んじまうー!」
「馬鹿、叫ぶな!魔物が寄ってきたらどうする!」
素っ裸で涙目に夢叶達の帰り待っている賊達。
不気味に響き渡る鳥の鳴き声。
心から早く戻ってきてくれと願うことしかできない賊達であった。
――――
「しまったー!大切な資金源がー。」
少し大袈裟に頭を抱えて言う。
「早く行かないと、男達死んじゃってるかもね。」
「正直、鎧とかさえ残っていれば良い。」
「冷たいのね。」
ロシィに対して賊はどうでも良いと答えるとティエが少し冷たい視線で言ってきた。
「っふ。当然だろ?仲間に手を出そうとした下衆を助ける程、俺は優しくないんだぜ。逆に、仲間が危険に合えば全力で助けるから安心してくれ!」
夢叶は決め顔でそう言った。
「はいはい。」
流された。
「さて、今現在。日は落ちてきている。今から、もう一度あそこに普通に行こうとしたらまず無理だ。・・・さて、どうする?」
「・・・なるほど。丸投げか。」
シルヴィが珍しくツッコミを入れて来た。いや、ツッコミのつもりはないのかもしれない。いつもの表情だし。
「テレポートで取って来て、出すの忘れてたと鎧とかは言えるけど、流石に賊は無理だからなぁ。」
「放置でいいんじゃね?」
「それでいいんじゃね?」
ロシィの言葉にライムを乗せたリリィが上目遣いで便乗してきた。
「何の話か知らないけど。」
適当に言っていただけだった。
「いや、賊を回収するの忘れたっていう話なんだが。」
「それなら大丈夫。」
「おお!?何かあるのか?」
「流石リリィ様!」
リリィの大丈夫発言に皆喜びを上げる。一瞬だけ。
「私も忘れてたから。」
テヘペロとあざとい。気持ち的にはギャグマンガの様にずっこけたい気分だ。
「ギルドに戻って報告すればいいのでは?」
「そうするかー。」
エリィの言葉に潔くギルドに戻る事にする。
ピョコピョコミョーン。
ライムを宣伝しながらギルドに戻る。再び街に悲鳴が響き渡るのであった。
――――
カララン。
ガタガタガタ!
椅子が大きな音を立てて立ち上がる冒険者達。
いつものようにギルドに入って来た者を確認する為、チラっと目にするとそこには人ではなくドア枠いっぱいに広がる紫色の何か。その何かはモゾモゾと動くと上の方に隙間が出来ると、そこから滑り落ちるように誰かが入ってくる。シュタッ、シュタッとポーズを決めて現れた二人の少女。ロシィとリリィ。そして、ライムの本来の大きさと説明すると安堵する者と何だあいつは、何故魔物がと動揺している者と別れ、動揺している者達は安堵している者達にそれぞれ説明されて関心を示しながら落ち着き、席に着く。
「すいません。」
ライムが小さく手のひらサイズとなり夢叶も入る。その後ろにシルヴィ、ティエが続き、周囲の者達は美人、可愛い女性を侍らせて何と羨ましいと凄い視線で見てくる。しかし、エリィの実力を見ている為、手が出せないでいる。
「なぁ、お嬢さん達。そんな男ほっといて俺達のパーティに入らないかい?」
エリィの事を知らないで近づく、キラーンと白い歯を輝かせながら言う、金髪で短髪の爽やかな男。
「「いらなーい。」」
「遠慮する。」
「結構だ。」
「きもい。」
即答で全員に断られる。
「お、お前等!人が下手に出てやっているというのに何だその態度は!」
「下手とか知らないんですけど。」
「逆切れ乙。」
リリィとティエの態度に顔を真っ赤にする爽やかな男。
「やめときな。マサイ。」
爽やかな男マサイを止めに入るハーゲンオジサン(仮)。
「何だ?このギルドのトップ5であるハゲノ・オージとも言うお方が怖気づいてでもいるというのかい?」
あざ笑うかのようにいうマサイ。そして、オジサンから王子と出世しながら若返るハゲノ。
「ああ。他の者はどうか知らないが、そこの女剣士はやばい。もしかしたら、1位と同等、それ以上かも知れん。」
真剣な眼差しで言うハゲノ。
「まぁ?5であるお前の事を疑う訳じゃないが、俺は3だ。お前にはそう見えるだけだ。このお嬢ちゃん達もそこのパッとしない少年より、俺の強さに惹かれるのは目に見えている。そして、この美形!」
フッと前髪をかき上げる。すると後ろから女性の黄色い声が上がる。モテモテの様だ。
「きもい。」
わざとらしいその仕草についボソっと言ってしまうティエ。キザな男きもいというのがティエの印象だ。
「何だと!?お前ちょっと痛い目に合わせてやろうか!?」
ティエの胸ぐらを掴もうと手を伸ばすマサイ。しかし、それを寸前の所で夢叶の手によって止められてしまう。
「マサイさんとか言いましたっけ?女の子の胸ぐら何かを掴もうとしたら駄目ですよ。触れてしまったらどうするんですか?」
「んだと!?この!?」
手を掴まれた反対の方の手でマサイは夢叶に殴りに掛かろうとするが、何が起こったのかも分からずに仰向けに倒されていた。
「「「「な!?」」」」
「足元がお留守ですよ。」
ドヤァ。
「きもい。」
ティエに言われた。何?きもいって単語流行りなの!?
正直、夢叶少年は弱いと誰もが思っていた。しかも魔法使いと言っているのに近接なら尚更弱いと思っていた。しかし、いくら油断していたからといってマサイがそんな簡単に床に伏せられる訳がないという事はここにいる誰もが知っている。つまり、この少年は魔法使いと言いながらも近接にも長けていてかなりの腕であるという事が周知の事実となった。
「お、お前。魔法使いじゃ・・・?」
ハゲノがわなわなと聞いてくる。
「どちらかと言えば、魔法使いだけど?」
その言葉にハゲノ、マサイだけでなくその場の全員が驚愕する。魔法は更に凄い・・・だと!?と。
「分かった?ユウはあなたよりも強いの。それ以前に、見た目で判断して人を貶すような人となんて一緒に行くと思う?きもいのよ。きもいの。」
大事な事なので・・・。絶対流行りだな。それよりも、ティエが認めてはくれている事に驚愕、感動してじっとティエを見てしまう。
「な、何よ?」
自分の言ってしまった言葉に気が付き、頬を染めてそっぽを向く。可愛い。
「ちょっと!何よあんた!」
「そうよ、少し、パッとしない男の方が強いからってあなた自身大したことないのに威張らないでくれる!?」
マサイの女達であろうか。ティエに突っかかって来た。ロシィとリリィはそれを見て、口元に手を当てあわわとしている。
「その言葉、そっくりそのまま返すわ。」
フンッと言い返す。
「私達はマサイのパーティよ!そこらの人と同じにしない方がいいわよ!」
「そうよ!痛い目を見たくなければ謝りなさい!」
「なら、私はそのマサイをあっさりと床に伏せたユウのパーティよ。謝るなら今の内よ?」
威張るマサイの女達に威張り返すティエ。
「なぁ、ティエどうかしたのか?俺をこんなに持ち上げる何て。」
「きっと、ユウへの気持ちに気が付いたのよ。」
「リリィ様!?変な事言わないでください!」
リリィの言葉に少し驚き、ティエが突っ込むが顔が少し赤い。これは・・・。夢叶は反応に困り、ティエ以外がニマニマする。
「お前等いい加減しろよゴラ!」
照れ隠しかアーギョモードとなるティエ。
「あらあら、ティエ。そんな怖い・・・というか凄い顔をしていてはユウに嫌われてしまいますわよ?ウフフ。」
何故かお嬢様口調のリリィ。
「な!?」
その言葉にティエがハッとして顔を赤くして言い淀む。
「「「「「・・・あれ?」」」」」
冗談でからかっていたつもりが、まさか本当に・・・?
「もう、黙れー!」
ティエが顔を真っ赤にして、風を操り、某アニメの気で相手を吹き飛ばすような爆風を放つ。
「キャー!?」
「ぬわー!?」
「あーれー!?」
マサイやハゲノ達も含め、中の人々が家具ごと吹き飛ばされ、壁に激突する。
「ユウユウ。ティエがめっちゃ可愛いんだけどどうしよう!?」
「うんうん!」
夢叶がサラッと、結界を張るとその中でロシィとリリィがキャッキャしている。
「その言葉には、同意するしかないな。」
「※◇※□!?」
頷く夢叶にティエが声にならない声を上げ、今度は炎を纏った拳で結界を殴りに来る。結界と炎の拳が衝突し、衝撃波が起こり、もう一度中の人達が吹き飛ばされる。
「ユウ、これは仲間入りだよね?」
「お、おお。俺はティエならウェルカムだ。」
「※◇※□※〇!?」
ボンと顔から煙が出て座り込むティエ。
「ほ、本当?」
上目遣いで少し涙目に見上げてくるティエ。こんなにも可愛かっただろうか。あんなにも突っかかっていたティエに一体何があった。まさか、魅了系の魔法にでも掛けられているのだろうか。
「リカバー。」
状態異常回復の魔法をティエに掛ける。
「ちょ!?ちょっとどういうつもり!?」
ティエが涙ながらに怒ってくる。
「い、いや。すまん。あれほど俺を毛嫌いしていたティエが急にそんな態度をとるから何かしらの魔法に掛かっているのかと思ってな。」
しかし、何も魔法になど、状態異常に陥っていなかった。
「な、何?それじゃぁ、私じゃ、やっぱりだ、駄目って事なの?」
今に泣きそうな顔をしている。
「そんなことないぞ。今のでティエの気持ちが本当だと分かったんだ。ティエなら別に何の問題もない。ロシィ達もティエなら歓迎してくれるだろうし。なぁ?」
夢叶の言葉に。
「「「ウェルカム!」」」
まさかのシルヴィも一緒に歓迎する。
夢叶が両手を広げるとティエがそっとその中に入り、ティエを抱きしめる。
ワーっと盛り上がりを見せる夢叶一行。
「な、なぁ。何か話が見えないが、取り合えず、あいつらやばくないか?」
「あ、ああ。ちょっかいを出すのはやめた方がよさそうだな。」
マサイとハゲノの言葉にギルド内にいる全員が全力で首を縦に振った。
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