第75話
『それとそれも薬草だね。』
新たに仲間になったポイズンスライムのライムに薬草を教えて貰っている。判別はかなり出来るようになったが、まだ、パッと見では判断できるほどにはなっていない為、マディーナ森林からの帰り道に採取しながら戻っている。道中、ライムがいるせいか、森林にいる魔物達は様子を伺いつつも襲ってはこない。そもそも、ライムを探している最中ですら魔物は襲ってすら来なかった。
『んん・・・。何でだろうね。』
疑問に対してライムが答えてくれたが分からないみたいだ。
「魔物って相手の強さ分かるのか?」
魔物が相手の強さが分かるなら危険と感じて襲ってこないという事は考えられる。
『強さというか自分にとって危険かどうかぐらいは分かるよ。』
「ほむ。でも、俺達は魔力とかは隠しているはずなんだが、何故分かるんだ?」
マナ探知だろうか。自分が持つマナは完全に消すことは出来ない。マナは全ての事象の源だ。つまり、マナを消してしまうと存在する生きているという事象を起こしているマナをも消してしまうと死んでしまうからだ。マナを隠すなら魔力で覆うなり、違う物で隠さなければならない。マナを感じ取る事が出来るのは極々一部の者だけというロシィの言葉に、魔力などを隠し、マナに関しては特に隠す行為は何もしていない。
『ん~。気配?何て言うのかな。特に君には逆らったら駄目って本能が言ってくる感じ?たぶん、皆同じような感覚だと思うよ。』
「・・・本能なら仕方がないの・・・かな?」
本人もいまいち分かっていない。
『普通、人間を見たらここの皆は襲い掛かってるしね。君に何かあるんだよ。たぶん。』
「まぁまぁ、いまいちよく分からないことはもう置いといて、ライムは何が出来るの?」
ロシィは話が進まないのに飽きて来たのか、話を変えて来た。
『えっとね。溶かすことができるよ。』
「他には?」
知ってるという感じで流すロシィ。
『毒出せるよ!』
ドヤ顔するライム。雰囲気的に。
「他。」
冷たい反応にショボンライム。
『・・・何でも食べるよ!』
「ねぇ、まだ街は見えてこないの?」
「もう少しのはずだけど・・・。あ!見えて来たよ!」
ロシィのぼやきにリリィが答える。
「よし、競争だ!」
「あ、待ってー!」
テテテテーと駆け出すロシィ。それを追いかけるリリィ。
「リリィ!走らなくてもいいじゃないか。」
「リリィ様ー!」
「勝負なら負けん!」
その後をエリィ、ティエ、シルヴィが追いかけて行く。あっという間に見えなくなり、夢叶とライムが取り残された。
「・・・ドンマイ。」
『・・・グスン。』
涙目に(なっている気がする)ライムの体をポンポンと叩く。
――――
「おっそーい!」
「おっそーい!」
歩いてマディーナの入り口に行くとロシィとリリィがブーブー言ってきた。
「「ブーブー」」
苦笑いしながら二人の頭を撫でると二人ともはにかんだ。
マディーナの街に戻ってくると日が沈みかけていた。
「ライム、小さくなってくれ。」
『これぐらいで良い?』
ムニムニと丸まるように小さくなるライム。圧縮圧縮、体を圧縮。その大きさはロシィの両手に収まる。
人目がある方に背中を向けて死角を作り、掌を合わせると掌から淡い光が出ると共に革袋が現れた。創造魔法だ。
「ほい。悪いが暫くの間、この中に入っていてくれ。」
『わかったよ。』
ピョンと革袋の中にポスっと入った。
――――
カランカラン
ギルドに入ると視線が集まる。どこの世界でもそうだったし、これはもうギルドはこういう物だと割り切るしかない。
「おい。あいつ、昼間に冒険者登録していきなり亜種のスライムを討伐しに行った奴等だぜ。」
「おいおい。新人が亜種相手にもう帰って来たのか?」
「逃げ帰って来たんだろ?」
「「「ククク。」」」
酷い言われようだ。
「すいません。」
受付の元に行くと昼間の受付のお姉さんではなく、犬耳のお姉さんになっていた。柴犬を思い出すような色の髪の毛にそこから耳が生え、そしてふさふさの尻尾がある。
「あ、昼間の新人さんですね。やはり、亜種のスライム討伐は難しかったですか?」
察するに、新人が亜種のスライムを倒すのには早過ぎる帰還らしい。それにしても何で知ってるの?という顔をしていると。
「奥で作業しながら少し騒がしかったのでこっそりと覗いていたんですよ。」
と照れ苦笑いをしながら教えてくれた。
「えーっと。討伐というか。亜種のスライムから脅威がなくなれば、別にそれでもいいんですよね?」
「そうですね。しかし、その場合何かしらの証拠がないと報酬は支払う事が出来ません。ですので、コアが一番明確となるわけなのですが・・・その様子だとお持ちではなさそうですね。」
困りましたねと考える受付の犬耳お姉さん。
「あーっと。ライム。出て来い。」
革袋をカウンターの上に置き、そう言って袋を開けると中からピョンと紫色のスライムが飛び出し、無駄にトリプルアクセルをしながらズザーと短く滑り登場する。綺麗に決まり、満足顔のライム。
「・・・え?・・・・・・・・。」
時が止まる。
・・・そして、時が動き出す。
「キャッ!?キャー!?魔物!?」
「何だと!?」
「魔物!?」
「どこだ!?」
周囲の人達が犬耳お姉さんの悲鳴でガタガタと席を立ち上がり、辺りを見回して全員の視線が一か所に集まる。
『そんなに見られると照れるじゃない。』
何故か頬を染めている感じのライム。
チャッ。チャキ。
しかし、照れているライムに金属音と共に剣と杖が向けられ、戦闘態勢に入る。
「ちょーっと待ってくれ。こいつは確かに魔物だが。悪い奴じゃない。現に今も襲ってこないだろ?」
両手を上げ、ストップを掛ける。
「た、確かにそうですが。いつ襲ってくるか・・・。わ、わからないじゃないですか。そもそも魔物を連れて来るなんて前代未聞ですよ!?」
冷や汗が出て、顔を引きつらせながら言う犬耳お姉さん。
「そうだ。意思疎通ができない魔物など、危険以外の何者でもない。直ぐに殺すべきだ。」
そうだそうだという声が広がる。
「意思疎通は俺達なら出来る。ほら、ジャンプ。」
ライムが軽くジャンプする。
おお、と周囲が少しざわつく。
「くるっと回ってターン。こっち来て~。こっち。フィニッシュ!」
一回転からのターン。手を差し出された方をプニプニプニ~と肩まで登り、反対側の手を差し出された掌の上にジャンプして着地する。
おおーと今度は違うざわつきで小さい拍手が起こる。
「やるなぁ。」
いきなりの無茶ぶりに答えてくれたライムに関心する。今はそのドヤ顔を満喫するといい。
「別に、周りがこいつに対して悪い事をしなければ何もしないさ。もし、今後こいつが悪さをしたと言うならばそれは相手がこいつに対して悪い事をしたという事だ。決して、何でもかんでもこいつの・・・ライムのせいにするのだけは許さない。」
エリィが、周りに対して威圧する。しっかりと空気を読んでくれる。
エリィの実力はここでもかなり上位らしく、エリィが発する威圧にほとんどの人が動けずにいた。
「わ、分かりました。威圧するのやめてください。」
犬耳お姉さんの言葉で威圧を解くとフウと息をついたり、息を切らしたり様々な反応があるが、全員が疲れたという共通点はある。
「しかし、何か分かるようにしておかないと・・・今ここにいる皆さんは良いでしょうが、街の人や他の人が見たら確実に騒ぎになりますよ。」
「確かに・・・。」
最もだ。ライムをずっと革袋に入れておくわけにもいかないし。ずっと小さくなるのは疲れるとも言っていたしなぁ。
「見た所、奴隷契約をしていないと思うのですが、どうでしょう?」
この世界では奴隷は、専用の首輪をするようだし、それを付けていると分かりやすい・・・ということか。
「魔物には適用されるんですか?そもそも奴隷契約したことないんですが。」
「魔物に適用できるかどうかは正直分かりません。前例がありませんから。奴隷契約はですね、首輪を嵌めて主人となる人間の血を首輪に認識させることで主人に対して悪さをする事が出来なくなるようにするアーティファクトですね。注意としましては、このアーティファクト、奴隷となった者が何かしらの悪事をした場合、責任は主人の者となりますのでしっかりと躾が必要となりますのでご注意ください。」
「どうする?ライム。」
『別に構わないよ。元々、あんちゃんに従うつもりだったし。ようは、勝手に悪さしなければいいんでしょ?』
「まぁ、そうだな。分かった。」
「え・・・?スライムと会話しているの?」
「まさか。スライムは何も言っていないぞ。」
「会話していると思い込んでいるのか?」
あ・・・何だか、痛い子を見ている目だ。こちらは翻訳アーティファクトで喋っているが他人からすれば、スライムはプニプニと動くような効果音が聞こえているだけで決して喋っているようには全く聞こえていないのだ。
・・・うん。ロシィとリリィは笑うのを我慢しているね。デフォルトだ。くそう。リカバー。
「取り合えず、こちらが奴隷の首輪のアーティファクトなのですが・・・どうやってつけましょう・・・。」
ギルドで奴隷契約出来るんだと思いながら、犬耳お姉さんが困るのは当然だとも思う。スライムだから首何てどこにもないよね!
ブックマありがとうございます!




