第74話 亜種のスライム
「つーかーれーたー。」
あれから、30分ほどマディーナ森林を歩いているとグデーとした顔になりながら嘆いている。
うん、付かれた。なかなかスライムの亜種とやらが出てこない。休憩しようかと思い辺りを見回すと、丁度良い所に丁度よさそうな空間があった。
「そこでひ。」
「何を言っている。まだ少ししか歩いていないじゃないか。」
言葉が被り、平然と言っているエリィの言葉に掻き消される。シルヴィも大丈夫なようだ。
「エリィ~。私も疲れた~。」
うるうると泣きつくように言うリリィ。
「仕方ないなぁ。そこで一休みで良いか?」
丁度よさそうな空間を指さす。そこ、俺が言おうとしていた所。しょぼーんとしているとロシィと目が合い、プッと笑われた。
「ロシィ・・・。笑っているが、エリィはリリィの言う事は聞いているのにロシィの言う事は聞かずに、むしろ駄目だしまでしている件について。」
ニヤニヤと言う。
「ハッ!?ちょっとエリィ。説明してもらいましょうか。んん?」
「え、えーっと・・・。あ、あそこに魔物が!」
プンプンとエリィに詰め寄ると丁度よさそうな空間の奥に何やら動く影が。いそいそとそっちに向かって行くエリィ。
「命拾いしたね。」
唇を尖らせながら言うロシィ。
通常、スライムはよくある青色のゼリー状で中に核を持っている魔物だ。物理耐性が高く、初心者はスライムのゼリー状の体で核に剣を届かせるまでに弾かれてしまう。的確に核までの最短距離で攻撃しないと壊せない。逆に、核が見えている為、核に攻撃が届けば簡単に倒せるのだ。しかし、この亜種のスライム。ゼリー状の体をしているのは変わらないが、色は紫色で核が見えたらないのだ。大きさも普通のスライムよりかなり大きく、人を丸呑み出来そうな大きさだ。
「ツンツン。スライムツンツン。」
ふとスライムの足元?足という物は見当たらないが見ると、ロシィが小さい木の枝で亜種のスライムをツンツンしている。
「あ!?」
木の枝がスライムに飲まれ、見る見る消化されるように消えていく。
「ロシィ!離れろ!そのスライムの体は溶解液で出来ている。血潮は酸で、心は硝子。幾度の戦場を超えずに亜種に。ただ一度の敗走もなく、ただ一度の勝利もない、スライムはここに1人、毒草を貪る、ならばスライムに戦いは不要、その体は、きっと溶解液で出来ているはずだ。」
「長い!」
スパーンと頭をロシィに叩かれた。
「とにかく、直接あいつに触るのは危険だ。剣もアーティファクト仕様だが、溶かされるかもしれない。魔法で倒すぞ!」
『に、人間?』
「「「「「「!?」」」」」」
味方の誰でもない言葉に全員が首を傾げる。
『何をしに来たの?僕を殺すの?』
・・・どうやら、声の主はこの亜種のスライムの様だ。よく見ると、何だかビクビクしている様子だ。
「なぁ、スライムって喋れるのか?」
全員が思っているであろう疑問を口にした。
『どうせ、皆と同じように僕も殺すんだろ!?』
口はないようだが、声は明らかにスライムから聞こえてくる。
「・・・少し話を聞こう・・・か?」
何だか、可愛そうになって来たスライムを前に腰を落とす。
『あ・・・れ?僕の言葉、分かるの?それに、人間の言葉も分かる。前に来た人間は意味分からない叫びで僕を見たら直ぐに逃げて行っちゃっみたいで、声を掛けても振り向いてもくれなかったんだ。』
「それは、恐らく駆け出しの冒険者だろうな。まぁ、俺達も何だが。はたから見たらお前は異常だからな。普段はお前みたいなのは現れないらしいから。」
『あ、駄目だよ。襲っちゃ。初めての人間のお客さんなんだ。』
草むらからソロリソロリと青い、通常のスライムが5体出て来たが、それを亜種のスライムが制止する。
「お前がここの親玉になってるのか?」
『うん。僕は戦うのが怖くて、あまり他が寄り付かなさそうな所を中心に雑草ばかり食べていたんだ。あ、スライムは雑食で基本的に何でも食べるんだけど知ってた?』
「そんな気はしてた。」
「・・・ねぇ。スライムと普通に話してるんだけどいいのか?」
「いいんじゃね?」
「まぁ待つとしよう。」
「だな。妾達にも言葉は分かるのだから話を聞いてからでも良いだろう。」
「ですねぇ。」
『それでね。草でも色々な種類があって味も違うから色々と食べてたらある日、毒草を食べちゃってね。食べ過ぎるとスライムと言えど、毒はくらっちゃうから食べ過ぎたら毒で死んじゃうんだ。でもね、僕ね。毒の痺れるのが何だか癖になっちゃったみたいで、ちょびちょびと食べてたらいつの間にか耐性が出来ちゃって、それで食べる量も増やしてある日、目を覚ますと進化してたんだ。ポイズンスライムになったみたい。溶かすのも前より簡単に出来るようになったし、沢山食べられるようになったよ。それから、何だか慕われちゃってね。』
適当に言った事が大体あっていた件について。
「魔物は進化するのか。まぁ、そうなった経緯は分かったが、俺達はお前の討伐依頼を受けているんだ。どうする?戦うか?」
見た目も色は毒々しいが形はぷにぷにと何だが可愛らしい感じもしなくもない。話していても悪い奴じゃなさそうだし。
『出来れば戦いたくはないなぁ。君、強そうだし。』
「まぁ、そこらの奴には負けないとは思うがな。と、なると俺達は初依頼で失敗という事になるんだ。それは正直こちらとしてもよろしくない。かと言って、俺達は核を持って来いと言われている。その場合、お前が死ぬからできないわけだ。・・・となると・・・。」
魔物は人間よりも気配とか危機感が敏感なのだろう。本能的に相手の強さが分かるみたいだ。たぶん。何かいい案はないかと思案する。
『人間ってもっと怖いものだと思ってたけど、君って良い人間なんだね。初めて会った僕の事を気にかけてくれるなんて。きっと、他の人間なら話も出来ずにただ殺しにくるんだろうね。』
「俺が良い奴かどうかは置いといて、まぁ他の奴らはほぼ間違いなく容赦なく殺しに来るだろうな。そもそも、お前ってなんで人間の言葉分かるの?」
『それは僕も聞きたいよ。今まで僕は人間の言葉を理解できなかったし、君がスライム言語を喋っているんじゃないのかい?』
・・・スライム言語なんてあるの?
「あ!これだ。翻訳のアーティファクトだ。スライムにも適用されていたのか。」
「「「「「あー。」」」」」
後ろでなるほどねと頷いている。
『へぇ。そんなのがあるんだ。人間って偉いんだね。』
「いや、馬鹿の方が多いさ。俺も含めてな。」
関心しているスライムだが、それを否定する。世の中、愚かな人間の方が圧倒的に多いだろう。特に異世界、この世界では殺し合いも普通にあるし、盗賊といった類もあちこちにいるのだ。偉いならこんな人間達が出てくるわけがない。
「そうだなぁ。選択肢をあげよう。潔く殺されるか、俺達に付いて来て仲間になるか。」
『それって、選択肢ほぼないよね?戦っても何だか勝てる気がしないし、仲間になったら助けてくれるの?』
「ああ、出来る限りの事はさせて貰う。取り合えず、街に一緒に来てもらい、討伐対象の亜種、害を成すスライムはこの森林からなくなったということを言う。それで、依頼達成にならなかった場合、俺達に取っては残念だが、初依頼は失敗だ。だが、お前を殺そうと動こうなら俺達は全力でお前を守る。ただ、お前は大人しくして人間に害がないという事をアピールすればいいだけだ。俺だって、話をした相手を魔物だからと殺したくはないんだ。だからこの話はお互いに取って悪くはないはずだ。まぁ当然、お前にも後から働いてもらうがな。いつまでも怯えてここに暮すよりかは良いだろ?」
『・・・分かった。君達に付いて行くよ。』
少し考えただけで亜種のスライムはそう答えた。まぁ、スライムに取ってそう言う以外に生きる術がないと察しているのだろう。
「よし、じゃぁそういうことでこれからよろしくな。」
「「よろしくー!」」
「「よろしくな。」」
「よろしく。」
『よろしくね!』
ロシィとリリィが亜種のスライムとハイタッチしようと手を上げるがハイタッチすることなくそのまま止まる。
「・・・毒とかって大丈夫なの?」
最もな心配だ。
『大丈夫だよ。制御は出来るからね。』
「ヘーイ。」
「へーい。」
亜種のスライムが答えるとすぐに亜種のスライムは体から触手を伸ばしてハイタッチをした。
「ところで、小さくなれたりはしないのか?」
『ん?なれるよ。』
「なぜ、小さい状態でいなかったし。」
『ずっと小さくなっていると疲れてくるんだよね。それでちょうど、一休みしていたら君達と遭遇しちゃったってわけだね。』
何だか、腰をトントンとしているように見えるのは気のせいか?
「悪いが、街に着いたら小さくなってくれ。魔物が攻めて来たと騒ぎになるだろうからな。」
『分かったよ。』
「あと悪いが、他のスライムは連れて行けない。」
付いて来ようとしていた通常のスライムがショボンとする。可愛い。
「偶には戻って来させるから。悪いな。」
『『『『『親分に敬礼!』』』』』
ビシっと手もないけど敬礼して見送る軍人みたいな雰囲気を感じさせてくれる通常スライム達。
『皆、生きてまた会おうな!』
ビシっと敬礼をし(ている感じ。)の亜種のスライム。
――――
「ところで、名前あるのか?」
『ないよ。』
「じゃぁ、名前を付けよう。呼ぶときに不便だ。」
即答する亜種のスライム。魔物では名前がないのが普通なのだろう。
「スラ〇う」
「スラリ〇」
「ア〇―ラ」
「待て、なぜ某RPGで仲間になった時の名前ばかり言うんだ。まずい気がするから却下だ。」
ブーブー。却下されたロシィ、リリィ、ティエが言う。
「安直だが、ライム何てどうだ?」
エリィが言う。スライムからスを取っただけだが、何だがしっくり来る。
「「「それだ!」」」
3人のお許しも出たが、シルヴィと本人は如何に?と顔を見るとシルヴィは頷く。
『僕、ライム。これからよろしくね!』
何だか、機械っぽい喋り方をしているが、体がプルプルと犬が尻尾を振っているかのような動きをする。照れ隠しか。
亜種のスライム、ライムが仲間になった。
ブックマ・評価ありがとうございます。




