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ハレルヤなんてさようなら  作者: 八兼信彦
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Scene12 天使《アンゲロス》なんてさようなら その3

  ***


 ラース邸から数十キロ離れた街角で、ネフィエルは壁にもたれて、傷ついた身体を休めていた。

「はあ……はあ……」

 まだ日は高いが、狭い路地は薄暗かった。

 ネフィエルには、体中が軋んでいるのがわかった。

 だが、ヒトの身体に比べればその回復も早いので、少し休めば歩けるようになるだろう。

 ラースには裏切られたが――まだ策が尽きたわけではない。

 『キーキューブ』を奪い返せばいいだけである。

 そもそもラースは、聖域に近付くことができない天使の代わりに、〈超遺物〉を発掘してもらうのが役目だったのだ。 

 ネフィエルは壁から身体を離した。

 いまでも少しなら動くことができそうである。


 そこへ――路地を歩いてくる影があった。

 杖をついた老人である。

 狭い路地を行き交うため、ネフィエルは身体をよじった。

「すまないね。」

 と老人は礼を言った。厳めしい顔つきの老人であった。

 すれ違うと老人は、はたと足を止めてこう言った。

「ハレルヤ(神を讃えよ)」

 変なことをいう老人だなと振り返ったネフィエルの頭に――

 老人の杖が叩き落とされた。


 ぐきゃっ――

 

 鈍い音が響いて、ネフィエルはその場に倒れ込む。

「うぐ……あが……」

 猛烈な衝撃に、一撃で身体の自由が奪われてしまった。

 ただの打撃だったはずだ……それなのに、この衝撃はなんだ……

 この老人のどこに、そんな力があるというのか――

「アロイの杖。」

 口をパクパク動かすことしかできないネフィエルに、老人が語りかけた。

「かのモーセが、天使を叩き殺したという杖だ。天使に人は殺せぬというが……人は天使を殺せるのだよ。知らなかったかな?」

 天使殺し……?

 そんなことが本当にできるというのだろうか――

 しかしこの衝撃は――

「……ま……さか……」

 ここにきてネフィエルにもようやく思いいたった。

 どうしてその発想がなかったのだろうか。

 天使殺しができるとすれば、そいつは――


「聖マザーには世話になったのでね。」

 老人は厳めしい顔をピクリとも変えずに、またも杖を振り下ろした。


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