Scene12 天使《アンゲロス》なんてさようなら その3
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ラース邸から数十キロ離れた街角で、ネフィエルは壁にもたれて、傷ついた身体を休めていた。
「はあ……はあ……」
まだ日は高いが、狭い路地は薄暗かった。
ネフィエルには、体中が軋んでいるのがわかった。
だが、ヒトの身体に比べればその回復も早いので、少し休めば歩けるようになるだろう。
ラースには裏切られたが――まだ策が尽きたわけではない。
『キーキューブ』を奪い返せばいいだけである。
そもそもラースは、聖域に近付くことができない天使の代わりに、〈超遺物〉を発掘してもらうのが役目だったのだ。
ネフィエルは壁から身体を離した。
いまでも少しなら動くことができそうである。
そこへ――路地を歩いてくる影があった。
杖をついた老人である。
狭い路地を行き交うため、ネフィエルは身体をよじった。
「すまないね。」
と老人は礼を言った。厳めしい顔つきの老人であった。
すれ違うと老人は、はたと足を止めてこう言った。
「ハレルヤ(神を讃えよ)」
変なことをいう老人だなと振り返ったネフィエルの頭に――
老人の杖が叩き落とされた。
ぐきゃっ――
鈍い音が響いて、ネフィエルはその場に倒れ込む。
「うぐ……あが……」
猛烈な衝撃に、一撃で身体の自由が奪われてしまった。
ただの打撃だったはずだ……それなのに、この衝撃はなんだ……
この老人のどこに、そんな力があるというのか――
「アロイの杖。」
口をパクパク動かすことしかできないネフィエルに、老人が語りかけた。
「かのモーセが、天使を叩き殺したという杖だ。天使に人は殺せぬというが……人は天使を殺せるのだよ。知らなかったかな?」
天使殺し……?
そんなことが本当にできるというのだろうか――
しかしこの衝撃は――
「……ま……さか……」
ここにきてネフィエルにもようやく思いいたった。
どうしてその発想がなかったのだろうか。
天使殺しができるとすれば、そいつは――
「聖マザーには世話になったのでね。」
老人は厳めしい顔をピクリとも変えずに、またも杖を振り下ろした。




