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泉 -Spring-  作者: zaku
3/30

麻衣

 この学校は、四月の中旬にクラスマッチ、五月の最終日曜日に運動会が行われる。

 新学期早々、なかなかのハードスケジュールだ。

 まずは、間近に控えたクラスマッチ。

 普通科からは男子一チーム、女子三チームが参加する。

 種目はバレーボール。

 男子は九人しかいないので、自動的に決まった。

 問題は女子だ。

 二十七人を三チームに分けなければならないのだが、すんなり決まるわけがない。

 「あと六人どうする?」

 ぼちぼちグループができつつある教室の中を見渡して、明日香が言った。

 「増渕さんに声かけてみようか?」

 バスケ繋がりで、すでに麻衣と仲良くなっているリカが提案した。

 「いいねぇ」

 いつも面倒なことは早く終わらせたいのは明日香だ。

 「うーん…」

 泉はあまり乗り気ではなさそうだ。

 「ダメ?」

 リカは少し心配そうに泉に聞いた。

 「そうじゃないけど…」

 泉は優太と麻衣のことがなぜか気になっていた。

 「何か気になることでもあるの?」

 今度は明日香が聞いた。

 「…」

 そうだ。

 私は何を気にしてんだろう。

 蒼井くんと増渕さんが付き合っていようがいまいが、私には関係ないことだ。

 「いいんじゃない?増渕さんで」

 泉はリカに言った。

 「わかった。私、増渕さんに聞いてくる」

 リカが麻衣のもとへ向かっているとき、明日香が泉に小声で言った。

 「いいの?本当に」

 「何が?」

 「ううん、別に…」

 リカが麻衣を連れて戻ってきた。

 「増渕さん、OKだって」

 「あの、私、運動できないから役に立てないけど…」

 麻衣は申し訳なさそうに言った。

 「大丈夫よ。私も泉も運動音痴だから」

 明日香はチラッと泉を見た。

 泉は窓の外をぼんやりと眺めていた。


 泉たちのチームは結局七人となった。

 もともといくつかある仲良しグループを無理やり組み合わせただけなので、そんなに都合よくきれいに三等分できるわけもない。

 「私、本当に試合出なくていいから…」

 麻衣が消え入るような声で言った。

 「何で?」

 「大丈夫だよ。下手でも」

 リカと明日香は麻衣を見た。

 「でも…」

 麻衣はうつむいた。

 「ねぇ、最初からそういうのってないんじゃない?」

 泉の言葉はいつになく冷たく聞こえた。

 「泉…」

 明日香が泉を見ると、泉は慌てて目を逸らして、大きくため息をついた。

 「ちょっといいか?」

 優太だ。

 「フチ子は運動できないんだ」

 「ちょっと、優ちゃん…」

 三人は二人を見た。

 「心臓の病気なんだ」

 えっ?

 三人は顔を見合わせた。

 「もう、優ちゃんいいから…」

 「だから、激しい運動は無理なんだよ」



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