第12話 最終確認 その2
肉松は産まれてこの方剣など振るったことがない。
それもその筈、現代日本は平和である為剣など握った事のある方が少数派である。
そして肉松は剣道の経験などありはしない。
木刀はおろか、竹刀すら握った事がないのである。
産まれて初めて木刀を握り、模擬戦を行ったがその戦闘は圧巻の一言に尽きる。
なんと剣術で上位の成績を収めているドミヌスが初めて木刀を握った肉松に圧倒されていた。
(なッ、何なんだ勇者殿の剣戟は!?余りにもチグハグ過ぎるッ!!)
ドミヌスがそう思うのも無理はない。
産まれてこの方木刀など握った事のない肉松は当然、剣の振り方や構えなど全てが初心者そのものである。
しかしその構えから繰り出される剣戟が剣術の達人であるドミヌス少尉を圧倒しているのだ。
動きは初心者されど剣戟は達人級とくればそのチグハグさにドミヌスは一種の気持ち悪さを感じていた。
カァン
ドミヌスの木刀が弾き飛ばされた。
「そこまで!勇者様の勝ち!」
メローニャが肉松の勝ちを宣言し模擬戦は終了した。
「流石です勇者殿、完敗です。」
「ドミヌスさんも、オイラ途中何度負けそうになったか。」
肉松のワンサイドゲームかと思われていた試合であったが、その実肉松も中々苦戦していたのである。
肉松は約一ヶ月にも及ぶ制御訓練の結果、何とか自身の天恵を制御できるに至った。
具体的には自身を強いと思えば強くなるその力に制限を掛けることが出来るようになった。
ドミヌスとの模擬戦ではある程度制限を掛ける事により相手が大怪我する事の無いように力を抑え込んでいた。
それでもその力は絶大で剣術の達人であるドミヌスが防戦一方であった。
そしてドミヌスの木刀が弾き飛ばされ模擬戦は肉松の勝利に終わった。
メローニャは肉松の圧倒的な強さに希望を感じ始めていた。
このままパロネアが進軍してくれば為す術なく侵略されるだけであった絶望的な未来に差した一筋の光。
召喚した最初こそはこんな少年にこの国が本当に救えるのかと半信半疑であったが、この強さを見せつけられては希望を感じずにはいられなかった。
その日の鍛錬を終えた後、メローニャは直ぐに王様にこの事を報告した。
「………なる程、模擬戦で勇者殿がドミヌス少尉を打ち破ったと………」
「はい、おと……陛下、彼こそがこの国を救ってくれる救世主であると私は思っております。」
王様はなにやら難しい顔をして考え事をしている。
暫く顔を顰めた後、メローニャにこう問いかけた。
「勇者殿はもう戦線に出せるのか?」
「陛下……?それは、どうゆう意味でしょうか……?」
「そのままの意味だ。勇者殿は戦線に出せるのか、と聞いているのだ。」
メローニャは王様の言葉の意味を理解した。
王様は直ぐにでも肉松を戦線に出すつもりなのだろう。
「それは、まだ、なんともゆえません。今日は基礎能力向上訓練と剣術の模擬戦を行っただけですので………」
「ならば早めに勇者殿の力量を見極めるのだ。10日後、緊急国会が開催される。力量次第では戦線に出すよう進言する事も考えている。」
「しかし陛下!勇者様を戦線に出すにはまだ時期尚早かと!」
メローニャはまだ肉松を戦線に送る事は反対であった。
そんなメローニャに王様は封筒を手渡した。
メローニャは何もゆわず渡された封筒を開け中の書類を確認すると顔が青ざめた。
「これで分かったろう?この国にはもう時間がないのだ。勇者殿を温存してられる余裕はもうないのだ。」
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