青春の管制塔へ
外ではきっと陽炎が、アスファルトからゆらゆらと立ち上っている。実際それを裏付けるように、カーテンの隙間から容赦ない太陽光が僕の部屋を照らしていた。
夏はどうして、懐かしい気持ちになる。
照りつける太陽の光、したたる汗、光るワイシャツに、揺れる陽炎。
夏になると思い出す、あの頃のそれらの景色は、僕の胸を締め付ける。
―― それは今でも見ることができる景色だけれど、まったく見え方が違ってしまった。
夏は暑く、堪らない。営業先のエレベーターの冷房の効き具合に文句を言って、背中に張り付いたワイシャツは気持ちが悪い。
あの頃の僕たちは背中に張り付いたワイシャツにどういう感情を抱いていたのだろうか。
――、なに言っているの。君たちはね、知らず知らずのうちに青春の管理下にいるんだよ。
「シェルター」の店長は僕たちに言った。
今になって思えば、確かに僕らは青春の管理下にいた。
屋上で水をかけあったこと、深夜のプールに忍び込んだこと、文化祭の前夜に学校に泊まったこと――、退屈を紛らわせるための数々の行いが、あるいは退屈その物も今となっては立派な青春だったと知っている。
僕はそれに気がついた時――、それは本当に最近のことで、営業回りの喫茶店から見た、雨上りの町を走る女学生の姿が、僕にふとそれを教えてくれた。
「小宮山さん、小宮山さんの青春はいつですか?」
その時、僕は一緒にさぼっている上司に聞いた。
六十歳手前の、不健康に太った、しかし愛想だけはいい部長は、うーんと唸って目を閉じた。そうして青春を思い出したのか、にやりと笑った。その姿から笑ゥせぇるすまんを連想させる上司は、「やっぱり大学時代かなあ。酒と煙草と麻雀がおれにとっては青春だった」と言った。その昭和部長のかっこつけた姿が面白くって、いい上司だなあと僕は思う。
「福武は?」
「僕は高校ですね、あの頃は楽しかった」
「でもさあ、まだまだ福武は若いじゃないか」
四十近い年上の上司が言う。
「でもやっぱりあの頃は違いましたよ」
僕はその日、家に帰るとパソコンを開いた。なんだか無性に当時のことを書きたくなった。
――、この物語は僕の記憶に沿って書いていく。
庵野と原田、もしこの物語を君たちが手に取った時、なにか僕の記憶違いでおかしなところがあったら教えてほしい。
そうして多少のフィクションは織り交ぜるけれど、それに関しては怒らないで欲しい。
最後にかっこつけた小宮山さんの言葉を借りよう。
「食パンをくわえた少女、西日に照らされる制服少女、うなじの汗が花火に輝く浴衣少女――、それらが僕らにとっては青春だった」




