町へ
ライラ視点
やっぱり暴言しか吐かない。
また、昨日もあのキモいブタに抱かれた。クソキモい。終わった後に速攻で風呂に入って全身隈無く洗った。だけど、なんかアイツの匂いがする気がする。
その後、口直しに村長の息子に抱いて貰った。あのキモブタから、なんでこんな美形が産まれたのか不思議だったわ。多分、母親の遺伝子が良かったのね。良かったわね。あいつの遺伝子が微塵も感じなれない顔で。
なんで、あいつが村長なんてやってんのよ。
暫くして、村で騒ぎがあった。村の子供が、野犬に襲われたらしい。
村中の人が、何かを取り囲んでいるのが、目に入った。
見に行くと子供は瀕死の重傷で、村にいる唯一の医者が、手の施しようがないと言われている。あの医者、良い体してたっけな。
「うわぁぁぁぁ!!」
うん、確かにぐちゃぐちゃね。骨が、剥き出しになってる所とかある。うげぇ。
「お………あさ……」
子供の母親だろう。あんなに叫んで、どうしたんだろう?ゲームなんだから、そんなに騒ぐ事ないじゃない。
「治癒術師を!!」
「大きな町に行かないといないだろう!!」
治癒術師?ああ、治癒魔法を使う人か。そう言えば、私が治癒魔法を使ったらロイト達が褒めてくれたわ。『最高ランクの治癒魔法を使えるのか!』とかって言ってたわ。
「あの、私、治癒魔法使えるわ」
途端に視線が、私の方を向いた。皆に注目されるのって良いわ。学校でもロイト達といると女達が羨ましそうな視線を向けてきてたっけ。
「息子は助かるの?」
「ええ、見せて」
うげぇ。我慢、我慢っと。子供に治癒術掛けた。おお、みるみる肉が再生されていく。
ものの数十秒で、傷なんて無かったみたいになった。 私、凄い。テンション上がるわ。
「…お姉ちゃん、天使?」
「あんた、一体何者だ?」
「この前、村にやって来た人だろ」
みんな、私に興味津々ね。でも、どうしよっかな?「『天使』です」って言ったら、有り難がって、教会みたいな所で過ごして下さいとかってチヤホヤしてくれんじゃないのかな。そしたら、あのブタに抱かれる事も無くなるかも。よし。
「そう、私は、“天からの御遣い”なのです」
「やっぱりか!」
「すげぇ!!!」
ふふん。さあ、褒めなさい。美しい私に惚れなさい。なんか、どっかで「うげっ」て聞こえたような?
「待ってよ!その人、村長の情婦じゃないの!御遣いなんていう崇高な存在じゃないわ!!」
「あんたが自分の身、可愛さに差し出したんだろ!!」
「そうだ、そうだ!!」
「なんて、罰当たりな!!」
「御遣い様になんて事するんだ!!」
私を巡って争ってるわ。あれ、やってみたい。「私の為に争わないで」ってヤツ。
「これは、なんの騒ぎだ」
あれ?ブタと…村では、見たこと無いけど?兵士?……沢山いる!まさか、私を捕まえに!不味いわ!逃げなきゃ!!
「はい、子供の命を“天からの御遣い”様が救ってくださったんです」
「“天からの御遣い”?」
足音をドタドタと響かせながら、村長デイブが、やって来た。
「あの女です」
「ほう、君か」
「………はい」
なんか、スッゴい見られてるんだけど。どうしよう。
「ふむ。君は、治癒魔法が使えるのか?」
「はい」
「すげぇんだぜ!!骨が見える程、肉が裂けてたのに治したんだ!!」
「ほお」
瞳が細くなった。何か考えているみたい。なんなの?取り敢えず、身ばれは、していないようだけど。
「町へ来る気は、ないか?」
「!」
え?ブタから離れられるなら町へ行きたいけど。人が沢山いる処だと私の事を知ってる人がいるかも。
ちらりとデイブを見るとわなわなと震えている。折角手に入れた若い女を手放したくないが、相手が兵士では逆らう事が出来ない。黙ってるしか無いのだ。
「無理にとは言わない。しかし、優秀な治癒術師が、こんな国境付近の村にいるよりは、町で治癒術師として働いて欲しいのだがね」
「国境?」
「そうだが?」
つまり、私がいたジェーリェヴォ王国の隣の国ティーア王国に来ちゃってるって事か。じゃあ、私の事を知ってる人は、いないんだ。それが、本当ならこの村に匿って貰わなくても良いんじゃん。なんだ、ブタに嫌々抱かれる必要なんてなかったんじゃん。
「行くわ。私、町へ行く」
「そうか。では、準備があるから明日迎えに来る」
「分かったわ」
兵士の人達は、帰って行った。見送る私の背後にデイブが立つ。
「儂の部屋へ来い」
「嫌よ」
「……餞別をくれてやる」
「わかったわよ」
そのまま、デイブの屋敷へと一緒に帰ると部屋へ直行した。
「で?なにくれるの?」
くれるって言うんだから、貰ってあげる。何かな?宝石?ドレス?お菓子とか?
そう考えていたライラだったが、デイブがベッドへと押し倒した。
投げ出されたライラの手首を掴み、ベッドへ押し付ける。
「ちょっと!なんなの!!」
「お前は儂のだ。何処にもやらん」
「私は、アンタのじゃないのよ!!」
ヤンデレか!ヤンデレは、美形だから成立すんのよ!何処にもヤンデレブタの需要なんてないのよ!!
「儂のだ」
「ちょっと!!」
デイブが分厚い唇をライラの唇へと押し付ける。驚いていたライラの唇を無理矢理に自身の舌で抉じ開けると口内へと侵入させる。
「んん!ん!」
侵入させた肉厚な舌で、ライラの歯列を舐め回し、逃げ場を失った小さな舌を強引に絡ませる。
気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!なんなの!今までキスしてこなかったから油断してた!!しかも、ディープとか!!
ライラは、気に入った人物にしか唇を赦さなかった。デイブは最初、ライラにキスしようとしたが激しく抵抗するので諦め、体だけ繋げる事にした。それ以来、キスをしてこようとは、してこなかった。勿論、ライラはデイブとキスする気など無かった。
「んぶっ!!」
粘つく水音と荒い鼻息とが、静かな部屋に響く。何度も角度を変えて執拗にライラの口内を嬲ると満足したのか、糸を引きながら舌を引き抜いた。
「なっ!なっ!!」
怒りで顔を真っ赤にしたライラの服を乱暴に脱がす。釦が弾け、デイブの前にライラの柔肌が曝され、首元へと吸い付き、舐め回す。
「…やめ……」
「儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ。儂のだ」
怖っ!なんなの、壊れた?美しい私に執着するのは、わかるけど。限度ってものがあるでしょう。
デイブは、ライラの首から鎖骨へと舌を這わす。
ぬるぬるしたモノが、肌を蹂躙する感触に嫌悪感で鳥肌が立つ。
「!やめっ!」
「町へなど行かせんぞ!!」
デイブの目に強烈な情欲と執着の色を読み取ったライラは、いつにない激しい感情に怯えた。
恐怖で抵抗できなくなったライラへと覆い被さった。
その行為は一晩中続き、翌日に使用人によって発見されたライラは気絶し、デイブは死んでいた。
デイブの息子によって死因は隠され、事故死として村の人々には伝えられた。
常日頃からライラを手放さなかった村長が死んだ。村の察しが悪い者でも村長の死が事故死ではないと気付いたが口を噤んだ。
宣言通り、兵士はライラを迎える準備として馬車を用意して来てくれた。
兵士は、村の雰囲気が違う事に首を傾げている。
「さあ、行くぞ」
「ええ」
村を振り返る事なく、兵士達と共にライラは町へと向かった。
読んでいただき、ありがとうございます。
口汚いライラです。
村の男達はライラに喰われてます。やっぱり、貞淑と教養は行方不明。多分、帰ってこない。