第二話 ケスタ c
今回は少し長いです。
シャルルが野菜の取引を全て終えた頃、すでに夕日が町を照らしていた。
「今日は町に泊まって、明日の朝一番で出発しよう。歩きだとだいぶ時間がかかるなあ。」
シャルルは呟き、宿を探すため夕日の中を歩いた。
その頃、町役場では会議が開かれていた。
丸くてそこそこ大きな机を取り囲むように、町の重役たちが座っていた。そしてその中に、レオもいた。
町長と思われる、立派な口ひげを生やした男性がまず口を開いた。
「この旅人が、昨晩森でオークと遭遇したと言っておる。つまり…ついにこの地域まで魔獣がやってきたと言うわけだ。このままでは町の周囲で行われている農業に深刻なダメージが出ることは間違いないと思い、皆を呼ばせてもらった。」
会議の場がざわついた。その場にいたほとんどの者が、町長の言葉を信じられないといった様子だった。
禿頭の男性が頭を抱えて、
「なんてことだ…7年前のあの日以来、この町は魔獣とは無縁だったのに…。」
どんよりした空気に耐えられなくなったのか、白髪の混じった中年女性が口を開いた。
「む、昔からこの町は銃の製造で有名じゃない。魔獣くらい私たちの力で…」
「兵士がいないだろう!7年前を忘れたか!」
その場にいた誰かが叫んだ。女性は大声に驚いたが、やがてうつむき、泣き出した。
ふと、町長が口を開いた。
「7年前ならともかく、今は素人が扱える拳銃くらいしか作られていないのは確かだ。しかし、兵士でなくても魔獣を追い払えるということは、ここにいる旅人が証明しているであろう。」
その場にいた者たちが皆レオのほうを見たが、レオは黙っているだけだった。町長が話を続けた。
「そもそも、この町の名前である『ケスタ』とは、豊かな土地を意味する。先人たちは豊富に採れた農作物を森の獣たちから守るため銃を持ち始めたのだ。そこには兵士と文民などという分け目は無かった。」
町長の言葉に、皆が聞き入る。
「魔獣が手強いからと言って、今我々が戦うことを諦めたら、ケスタの歴史を否定することになる。しかし、我々は魔獣と戦う術を知らない。そこでだ…」
町長がレオのほうを見た。そして、それまで一切話に参加しなかったレオが口を開いた。
「そこで俺の出番という訳なりました。皆さんには俺の指示に従って魔獣対策を進めてもらいます。」
再び会場がざわついた。
「こんな若造の指図を受けろだと!」
「そもそもおまえは誰なんだ!」
会場に怒号が飛び交った。
「やっぱりこうきたか…」
レオは苦笑しながら呟いた。
「すまないレオ君…ワシが皆を説得しておくから、君は引き続き魔獣への対抗策をまとめておいてくれ。今は時間が惜しい。」
町長がレオに言った。
「分かりました。相変わらず町長は頼りになります。」
レオはそう言い残し、部屋を後にした。
全員が納得し、会議が全て終わった頃にはすでに夜になっていた。
次回、事件勃発




