涙の理由⑥
その日の夜、俺の興奮の理由、抑制が効かなくなっていた理由が分かった。
俺は生理を迎えたのだ。初めてなので、初潮と呼ぶべきかもしれない。トイレでそれを認識した。俺は、かなり動揺した。大人の女性なら、毎月ある生理現象なのだから、気にしないだろうが、俺は男だ。男の俺が生理になってしまった。どうすればいい。冷静にならなければいけないのだが、コントロール出来ない。仕方ない、相談するしかない。普通の女の子と同じように、相談するのだ。ママに。
俺は、ティッシュで股を押さえ、小走りで、かすみの近くまで行った。
『ねえ、ママ、ママ。ちょっと来て。お願い、ちょっと来て。』
かすみは彩先生とリビングでテレビを見ていた。
『どうしたの?ちひろちゃん。』
『いいから、来て。』
『しょうがないわね〜。』
俺は、洗面所にかすみを連れて来た。
『ママ、どうしよう。なっちゃった。』
『なっちゃったって?何が?』
俺はもじもじして、顔を赤くした。でも、話すしかない。
『なっちゃったの。生理に。どうすればいいの?』
話し終わると、大粒の涙を流してしまった。涙は止まらない。
『ちひろちゃん、泣く必要なんてないのよ。女の子は、みんな通る道なの。私も、小学生の時に、今のちひろちゃんみたいに、泣いたわ。』
『ほんと?』
『ほんとよ。初めての生理のことを初潮って言うのよ。これはね、嫌なことではないの。おめでたいことなのよ。ちひろちゃんが大人の女の子になった証なの。ちひろちゃんの場合は、もっと特別かもしれないけど、そういうのを全部ひっくるめて、せっかくなんだから、女の子の人生を楽しみましょう。』
『ママあ。』
俺は、かすみの胸に飛び込んだ。
その後、かすみは生理のときの対処の仕方や、生理痛のことなど、色々な知識を教えてくれた。そして、彩先生にも報告し、二人で俺を優しく慰めてくれた。
『女の子なんだから、泣いてもいいのよ。私たちの前では遠慮しなくていいのよ。泣きなさい、ダメとは言わないわ。』
俺の涙腺が弱くなり、感情のコントロールが出来なくなったのは、女性としての体の変化が理由であったのだ。
涙の理由は生理であった。




