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四十八話 久助のとっておきなんです


 滝川・徳川連合軍は浜松城を発ち、東を目指して進軍していた。


 武田信玄の進軍を止めるには、織田と徳川の力だけでは不足だ。北条の力も借りて、総力戦で当たらねばならない。そこで、先ずは相模から西へ進軍している北条家と合流するため、駿河国内の武田家の砦を攻めながら軍を進めていた。


 目標地点は、北条方と親密な関係を持っている元今川氏真の家臣・富士信忠が守っていた駿河大宮城。別名・富士城だ。

 富士信忠はその名の通り、現在の静岡県富士市、富士宮市の辺りを統治していた将で、今川家に仕えた後に、今川家滅亡後は北条家と親密な関係を築いていた。

 駿河大宮城は現在の富士宮市・富士宮駅付近にあった城で、甲斐から駿河の向かう際の玄関口となる場所に位置する城である。

 そのため、昨年初めの武田軍の駿河侵攻においては三度の攻撃に遭い、二度は攻撃を防ぎ切ったものの、三度目に武田信玄本隊の攻撃を受けて開城した。

 だが富士信忠自身は武田信玄に城を明け渡したものの降伏はせず、北条家の元で世話になる今川氏真への忠義を貫いて反武田への姿勢を貫き続けている。


 上記のとおり大宮城は武田との戦いにおいて非常に重要な拠点であり、武田軍の本格的な進軍を受け止めるとめには何としてでも奪還せねばならないというのが、久助と氏政による共通の見解であった。

 そのため、武田本隊が駿河に到達する前に速攻を仕掛け、大宮城を攻略せんと行動を開始していたのだ。




◇◇◇




 ハッキリいって、駿河・北近江・南近江・摂津と各地に分散した織田勢の部隊の中で、最も戦力があるのはここ、駿河侵攻部隊だ。


 次世代の織田家躍進の鍵を握る、戦に謀略に兵器開発なんでもござれの傾奇者。その名と武勇を知らぬ者はもはや天下に居ないであろう男、「夜雀」滝川一益。

 森可成らと並ぶ個の武勇を持ち、最近では軍の動かし方も様になり、今や織田家中の最高戦力の一人と言っても過言ではない、「金獅子」蒲生氏郷。

 名槍・蜻蛉切を携え、「東国無双」の異名を持つ本多忠勝を始め、酒井忠次・榊原康政といった徳川家康を支えていた徳川家の重臣たち。

 そして北条氏政が率いる、北条五色備えと呼ばれた猛将たち。中でも五色備えの黄色担当「地黄八幡」で知られる北条綱成は、あの河越夜戦で多大な功績をあげるなど、先代・北条氏康の代から今なお武勇を誇っている猛将だ。


「ぶっちゃけ、過剰戦力じゃないか?」


 と言うのは氏郷だ。確かに戦国最強と呼び声の高い武田軍の強さはホンモノだ。

 しかし、こちらにだって大国三つ分(徳川が大国になるのは後の話だが)の戦力を合わせた連合軍だ。

 氏郷は決して武田を甘く見ているつもりは無かったが、それでもいささか過剰戦力ではないかと思い込んでいた。

 それは自身の実力を過信しているだとかそういった慢心からくるものではなく、単純に近江に残した友、織田信忠や森長可たちが心配だったからであった。


 滝川・徳川軍は浜松城を出発した後、由比城や蒲原城といった武田家の拠点を瞬く間に攻略し、あっと言う間に富士川を超えるところまで軍を進めていたのだ。


「確かに、信忠のところや森殿のところに比べると、ウチはかなり戦力的に余裕があるな」

「だろ! ならこちらから部隊を割いて援軍に……痛ぁ!?」

「今から近江まで、軍を送れる訳がないだろ阿呆……」


 俺は氏郷の頭をスパーンと叩く。

 言っていることはわかるが、提案が極端なんだ、コイツは。

 駿河の国から近江の国まで部隊を戻すなんて、そんな非効率なことをするわけないだろうに……。


「心配しなくても、俺が何の考えも無しに部隊を編制した訳が無いだろ」


 まぁ徳川の反旗は予想外だったけどな……と、頭をさする氏郷に俺は言う。


「宇佐山が激戦になるのは間違いないが……、あそこには我が滝川家から、とっておきの援軍(・・・・・・・・)を送ってある」

「おぉ! それなら安心だな! ……って、そんな人物いたっけ?」


 氏郷は頭を傾げた。そして、何かを思いついたかのようにポンと手を叩く。


「あっ、久助の父の彦右衛門殿だな!」

「違うぞ。今更隠居じーさんを戦場に出しても仕方ないだろ。多分、お前とは面識がないんじゃないかなぁ」


 と、俺は空を見上げていう。

 俺が京から宇佐山に送り込んだ、とっておきの援軍。……それは俺の再従兄弟にあたる人物であるのだが、まーた癖の強い人物であるのだ。

 この頃はまだ名の知れていない人物ではあるが、腕っぷしも強く、援軍には充分な人物だろう。あとは……。


「(アイツ……ちゃんと指示通りに動いてくれるといいけどなぁ……)」


 とにかく気まぐれでテキトーな性格だったその人物を思い浮かべ、俺はため息をつくのであった。





◇◇◇




 その頃、逢坂。

 野田城・福島城では、三好・本願寺勢と織田勢の激戦が繰り広げられていた。


 その一角で奮戦し、一際目立った戦果を上げていた軍があった。

 それは前田利家軍。織田信長の馬廻衆の出であり、史実では後に豊臣と徳川の仲を取り成す大老として天下を支えることとなった人物だが……それはまた別の話。


 その前田軍の中で、当主の前田利家と肩を並べて奮闘する一人の男がいた。


 彼は黒色の馬に跨り、巨大な槍を振り、バッタバッタと敵をなぎ倒していく。が、何を思ったのか、彼は戦場の中で突然ピタッと槍を止めると、何か考え込むかのようにブツブツ言いながら、味方陣の方へ引き返していってしまったではないか。


 そして何かを思い出したかの表情をすると、彼は突然走り出し、戦場を去ってしまったというのだ。


 彼が何処へ行ったかは、そこにいた誰もがわからなかった。しかし彼の近くにいた者達は聞いていた。

 彼がブツブツと言っていた言葉を。


「そういえば……久助のヤツが言ってたよな……、援軍に向かえって。忘れてたわ……」


 利家の制止の声も聴かず、数十人の側近のみを引き連れて去って行った彼……。


 彼こそが、久助が用意したとっておき(・・・・・)であった。





1570年、秋。

久助が用意していた宇佐山への援軍。しかしどうやら彼は久助の指示を忘れていたようだった。

いったい彼の正体とは……なんです。

わかる人にはわかる人物だと思います。

彼は現実でも創作性の高い人物なので……割と自由に描いて行こうかなぁと思ってます。


……実は本編に登場させるの忘れていて、折角だからここで出しておこう! なーんて思ってのです……。

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― 新着の感想 ―
天下御免の傾奇者でしょうな(笑)
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