二十八話 氏郷の覚悟なんです
シノアリスのリセマラが終わらない・・・(涙
蒲生氏郷は天才であった。
『軍』の織田信忠、『知』の滝川一益と並び立ち、後に『武』の蒲生氏郷と呼ばれることになる彼だが、初陣のその時まで、彼は二人よりも一歩劣った存在だと思われていた。
滝川久助は生まれた直後から常識を逸脱する神童ぶりを見せた。幼少期からどこで仕入れたのか優れた知識を内政改革や兵器開発で発揮し、初陣では城一つ落とす大戦果を上げ、あっと言う間に織田家中で一軍を預かる将軍に成り上がって見せた。彼を天才と呼ばずして誰を天才というだろう。
織田信忠は、天下に最も近い男・織田信長の跡継ぎとして幼いうちから期待され、神童・滝川久助と共に育てられてきた。その後ろ姿を追いながら彼の最も近くで影響を受けてきた天下布武の継承者は、久助と同じく初陣で一城を攻略する活躍で、自身が久助に並び立つ存在であることを世に知らしめた。
氏郷は、そんな二人に置いて行かれるのが不安だった。
自分はそんなに頭が良くないということがわかっていた。久助のように革新的な発明は何も思いつかないし、信忠のように軍を率いて策を謀ることなんてできなかった。
だから、氏郷はひたすら己を鍛えて刀を振るった。自分が二人を越えられるのは、腕っぷしの強さだけだとわかっていたから。
観音寺城で久助と出会い、まるで相手にもされなかったあの日から。
二人の天才の元でずっと刀を振り続けた少年が、その才能を開花させる時が今、訪れたのであった。
〇〇〇
「・・・なんか落ち着きないよな・・・アイツ」
「そうか? 初陣前なのだし、当然じゃないか?」
ブンブンと刀を振って訓練に励む氏郷をコソッと覗き見ながら、俺と信忠は首を傾げていた。
あれから織田軍と北畠軍の戦局は動かぬままであった。北畠軍は相変わらず断固として城に籠る構えで、織田軍が幾度か攻め込んでも防衛はビクともしない。
城内の士気も高く、寝返り工作などの謀略の類や降伏勧告も上手くいっていないようである。兵糧の面で確実に追い込んではいるハズなのだが、これ以上時間をかけたくないのが織田家としての正直なところなのだ。
なので今夜、大河内城に対して夜襲を決行することが決まっていた。この攻撃でなんとか状況打破のきっかけを掴みたいものだ・・・。
しかし、その戦いに氏郷を出したくはないと思っていた。夜襲が成功すれば、城内で敵味方入り乱れての大混戦となる。そんな中で初陣の氏郷を守り切れる安全性が無い。初陣の場としては危険過ぎるんだ。その旨は本人に伝えたし、氏郷も「わかった」と頷いていたのだが・・・。
「(・・・でもあの氏郷のハリキリ様。絶対なんか企んでるよなぁ・・・)」
氏郷は俺から見たらかなりわかりやすいタイプだ。実は意外とニブチンなところがある信忠にはわからないようだが、俺には氏郷が妙に張り切っているのがわかってしまう。
そもそも、あの突撃脳の氏郷が素直に待っているわけがない。
「(変なことやらかさないか、警戒しておくか・・・)」
そう思って氏郷の動向をよりしっかりと見守ることにしたのだが、この判断を下した自分自身に、俺は後々感謝することになるのだ。
△△△
その日の夜。
いつもの軍議を終えて陣に戻った俺は、いつもの如く見回りをしてから出陣しようと、滝川隊の陣内を見回っていた。その時、ふと氏郷の昼間の行動を思い出し、彼の様子を見ておこうと思ったのだ。
ちなみに、今回の夜襲において、信忠と氏郷はお休みの予定だ。
「普段ならこの時間は、アイツはもう寝ているハズだが・・・はあっ!?」
氏郷のいる天幕を覗いて、驚愕した。氏郷が居ないのだ。
「嘘だろっ!? 軍議の間にか・・・アイツっ!!」
見れば、彼の具足も見当たらない。となれば、彼のやることなど一つしか考えられない。
俺は急いで武装を済ませ、馬に飛び乗り駆けだした。
氏郷の姿を見つけられたのは、案の定、織田家夜襲部隊の最前線であった。トレードマークである鯰尾兜を被り、今にも突撃せんと奮い立っていた。
「氏郷お前! 勝手に出てくるなんて何を考えてるんだ!」
「決まってるだろ。この戦で陣頭に立ち、戦果を挙げるのさ」
声を荒げる俺に対し、氏郷はしれっと答える。
「夜襲戦は暗く視界が悪い上に、敵味方が激しく入り乱れる! お前が出るには危険過ぎるって話しただろ!! それに陣頭だなんて、そんなこと許せるか!」
らしくもなく激昂する俺の言葉を黙って聞く氏郷。
そして俺が言い終えると、氏郷は眼を瞑り、そして真っ直ぐと眼を見開いて俺に言った。
「久助。お前から見た俺は、そんなに頼りないか?」
「っ・・・! 頼りないとか、そういう問題じゃ・・・」
「俺はまだ、未熟なのか?」
「・・・」
「俺はお前や信忠と違って、色々考えたりは出来ねぇ。だから、お前たちに並び立つ為に強くなった。槍働きだけは誰にも負けないようにな。
俺が今日まで努力してきたのを、久助。お前が一番近くで見ていてくれたはずだ。だからもう一度頼む、俺をこの戦に出させてくれ」
魂の籠った氏郷の訴え。いつも直感で動いているような氏郷が、考えに考えて絞り出した言葉であった。
氏郷は認めてほしかったのだ。俺と信忠と同じ土俵に立てるものとして。そして、友人として隣に立てる者として。
そして俺は、氏郷がそのために今日まで努力を重ねてきたことを知っていた。なんせ俺が最初に氏郷を負かし、今日まで鍛え続けてきたのだから。
氏郷の腕っぷしは一般兵どころか、そこらの武将では手足も出ないほどになっていることだって俺は知っているのだ。
本当はわかっている。今の氏郷が戦場に出たって、そうそう相手に劣るようなことはないってことを。
結局のところ、俺が心配し過ぎていただけだったんだ。後は氏郷の努力とその力を、俺が認めてやるだけだった。
「・・・わかった。ただし、俺も共に行く。見届けさせてくれ、お前の華々しい初陣を!」
「!! ありがとう、久助! 絶対に見ていてくれ!」
俺と氏郷は拳を突き出し、コツンとぶつけた。
お互いにニカっと笑い、氏郷の努力と力を信じ、大河内城へ向き直す。
「さぁ行くぞ! 目指すは本丸北の魔虫谷! そこから奇襲を仕掛ける! 織田軍の勇者達はこの鯰尾兜を目印について来い!!」
氏郷が先頭に立ち、闇夜の中、大河内城・魔虫谷へ向けて進軍を開始した。
大河内城の攻城戦の均衡を破るべく、魔虫谷奇襲戦が今、始まりを告げる・・・。
1569年、秋。
氏郷の覚悟を受け取った久助は、戦線を打開すべく、ともに奇襲部隊の先陣を駆けるんです。
「ちなみに、信長様の許可は予め貰ってあるぞ」
「それって俺が止めてたの無意味なんじゃ・・・」
丁度、『信長の〇び』でも現在進行形で大河内城の戦いをやってますね。
タイミングがいいのか悪いのか・・・。
次回はやっとこさ戦闘シーンです。北畠の剣鬼が出ます・・・かも?
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