剣戟の先に
一瞬にして、俺の目の前に刺突が繰り出される。
――――速すぎるだろっ!!
内心、悪態をつきながら、受け流す。
澄んだ金属音が戦闘を再開させたかのように響く。
それを皮切りに、二人の激しい剣戟が周囲を満たした。
それは、俺が今まで一度も体験したことのない、単純な速度の世界だった。
初めの何合かは圧倒的な差で、防戦一方だった。
しかし、徐々に俺の思考が速くなり、体もそれに追いついてくる。
加速し続ける知覚に引っ張られるように、俺の体は普段の倍以上の速度で動き続ける。
―――――右回避、半歩左後退、左横にステップ、弾く――――
嵐をも凌駕する勢いで迫る一撃一撃を、研ぎ澄まされた感覚と、勘で捌く。
―――――呼吸するなら目を見張れ。腕を振れ。脚を動かせ。
すさまじい速さで心臓は鼓動を響かせる。
それに合わせ、軋みを上げる筋肉に酸素がすさまじい速度で流し込まれる。
お互いの眼を照らすのは、火花だけ。
一瞬のミスが敗北を招く。すなわち―――――死。
―――――早く、速く、疾く―――――
時をもおいていく速さで、ためらう必要はない。
瞬間的な反射だけで剣を弾き、刀が弾かれる。
お互いの次の思考を、動きを読み解くため、視線が交わる。
青碧の双眸は俺のすべてを視界に入れていた。
筋肉の瞬間的な軋みから、鼓動のすべてを。
口の中が、じわじわと焦燥に乾いていく。
――――――読まれている。
刹那、一瞬の遅れを見せたソフィに一撃を振るう。
次の瞬間には、金属がせめぎ、擦れあう音が耳を抜ける。
俺の刀は、ソフィが細剣を前で交差させることによって受け止められていた。
「答えてくれ。君は、いったい何者なんだ?白枷の家の使いか?」
俺の問いに、ソフィは僅かに微笑みを返すだけ。
俺は続ける。
「頼む。答えてくれ。君は何者なんだ?俺はもう・・・君と命を削ってまで戦いたくない・・・」
そういうと、ソフィは表情を驚愕に変えた。
俺は、ソフィと剣をぶつけ、火花を散らせることでそれとなく、ソフィを理解しようとしていた。
純粋なまでの剣筋。戦いに意識を置き、相手を傷つける必要なく倒そうとする意志。
それらすべてが、ソフィから感じられた。
「・・・ふふっ。和真さん、面白い方ですね」
ソフィは微笑み、そういった。
そして、細剣から伝わる力が緩まった。
それを感じた瞬間、俺も刀を下した。
「ですが、甘いですよ。一度始まったら、終わらせませんと」
俺の耳に声が届いた瞬間には、決着がついていた。
腹部に走る鈍い痛み。
俺は膝から崩れ落ちる。
「目が覚めたら、すべて話しますから」
意識が暗闇に落ちる前、ソフィの申し訳なさそうな声が聞こえた。




