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中二ゆえに異世界へ  作者: 咲良喜玖


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第24話 第一覚醒 時を見る瞳 絶対時間

 「がはっ。ひゅー。ふー」

 

 敵が、血を吐いて息を整える。

 劣勢でも冷静な状態なのは、場数だ。こういう死線を潜り抜けてきた経験があるんだ。

 俺はその経験がない。

 この差は埋まらないだろう。

 だから、俺は油断をしない。絶対に目を離さないぞ。


 「なんで、彼女を狙った。何が目的だ」

 「は? ここまで戦っておいて。今さら理由を聞くか」

 

 それはそうだ。

 俺も思うわ。

 たしかに、殴る前に聞くべきだった。

 でも、ケイラが平伏してて、腹立ったから、殴ってから聞こうと思ったんだわ。

 戦いに夢中で忘れてた。

 

 「教えるつもりなしか?」

 「秘密に決まってんだろ。顧客がいるからな」 

 「秘密ね。守秘義務があるのか・・・律儀だな」

 「ああそうだ」


 まあいい。こいつが主体じゃないって事だけは分かった。

 守秘義務なんだから、誰か裏にいる事だけは分かった。

 第一の収穫だ。

 

 「そんじゃ。秘密主義のおっさんはな、あとでたっぷりとあの人たちに搾られろ!」


 嫌味全開のミストさんと、化け物我儘お婆ちゃんにな!

 

 「ガキは単純。楽でいい」

 「は?」


 俺が動いた瞬間、鼻ピアス男が笑った。

 余裕の笑み。

 ボロボロの体の癖に、ここに来ての余裕は何の自信から来る。

 笑えるって事はまだ勝機があるってことだよな。

 この状況から何かを起こせるのか?

 逆転の一手があるのか?


 「ほらよ」


 俺が走っている直線状のラインに、小さな玉を放り投げてきた。

 目を凝らさないと分からないくらいに小さい。


 「失え。世界の光をな」


 猛烈な光が洞窟内で焚かれた。

 光を失うって・・・光を浴びすぎて、視界を消すって事か。


 「しまった。閃光弾!?」


 そんなのこの世界にあんのかよ。

 これは経験の差が出た。

 俺がまだこの世界に来て11年。

 そっちが幾つだが知らんけど、その差だ。

 

 でも舐めるな。

 見えなくても、俺はあんたの位置を掴める。

 魔力探知の力を使って、どこにいるかを把握して、この勢いのまま殴ってやるわ。


 「おりゃあああ」


 俺の叫びに反応したのは敵じゃない。

 彼女だった。


 「駄目だ。ケイオス・・・逃げろ。罠だ!」



 ==ケイラ視点==


 この男。何を狙ってる?

 あいつが今出してるとんでもねえ魔力量に動じてねえんだ。

 何か策があるんだ。


 最後の決着だ。

 全力をぶつけようとしているあいつの魔力って、オレの目にはヤバい量に見えてるんだけど。

 こいつ、なんもビビってねえぞ。

 むしろ笑ってる。


 出た。

 あいつが突っ込んだ!?


 一直線だ。でも速い。

 あれなら手負いの敵をぶん殴れる。

 

 

 敵が動いた。でもあいつに向かってじゃない。ポケット?

 ズボンのポケットからなんか出したぞ。

 あれは・・・。


 「く。これは、雷光玉。珍しい道具を持って来たな・・・雷系の道具だ!」

 

 雷魔法を敵に落とすんじゃなくて、一瞬だけ目を奪う道具。

 でもそれは、逃げるのが目的の道具だぞ。

 なんでこのタイミングで使った。

 使うなら、もっと前。それに・・・。


 あれは、そうか。

 

 敵の動きはもう一つ。

 あいつの動きを単調にする事。

 これで一直線以外の行動は起こさない。

 カウンターが入りやすい。

 

 そこにしかも、あのナイフ!

 ただ突っ込んで来るあいつに向かって、刃を見せるだけで、勝手に串刺しになる。

 やべえ。あれは顔にぶっ刺さる!?


 「駄目だ。ケイオス・・・逃げろ。罠だ!」


 勢いがありすぎる。

 その動き、止められるのか。ケイオス!



 ◇


 「この時点で自分の強さに溺れてるガキ。この世から消えな」


 余裕の男の声。そして彼女の焦る声。

 同時に聞こえてきた時に、変な感覚に陥った。

 とても心配そうなケイラの声が、俺の体に染み渡った。

 そんな感じだ。


 

 そしたら目が見えたんだ。

 さっきまで白い光のせいで、真っ白な靄が映っていたのに。

 急にだ。

 でも変なんだ。

 見えているんだけど、動きがやたらと遅い。

 それも敵の動きだけがやたらと遅い。


 なんだこれ?

 おい。変だって・・・。

 つうか、あいつ。ナイフ持ってんぞ。

 さっきのなんだっけ。あれだあれ。

 中二的な名称のナイフ。

 そうだそうだ。

 目下の悲劇(カラミティダガー)だ。


 あれを俺の顔にか?

 でもその速度じゃ、俺を刺すに遅いって。

 何が起きた?


 「ん? でも、ケイラは違うぞ」

 

 俺が凝視している敵は、動きが遅い。

 でも、視界の端にいるケイラの動きは普通だ。


 ・・・・。


 これってまさか。あの時考えていた奴?



 ◇


 前世の子供の頃。大体10歳前後のころ。

 この頃から俺は妄想まっしぐらの重症患者だった。

 日頃のストレスがあったのだろう。

 弟たちが順調に育って、親に見向きもされなかったから、自分の世界に閉じこもったんだ。

 でもその閉じこもり少年にも、唯一の遊び相手との楽しいひと時があった。


 爺ちゃん家の庭。


 「爺ちゃん。見よ。俺のこの眼を」

 「なんだ? 何があるんだ!」


 爺ちゃんは俺の目を真っ直ぐ見つめてくれた。


 「これが俺の必殺の瞳。邪眼だ。左目が凄くなってるんだ」

 「おおお。凄いの。こりゃ綺麗だわ」


 リアクションが良かった。

 何にも変化してない瞳なのに、爺ちゃんは手を叩いて喜んでくれた。


 「えっへん」

 「何が出来るんだ。どんな技だ」


 爺ちゃんは、絶対に俺を馬鹿にしない。

 全部付き合ってくれていた。


 「たくさん技があるんだ。多機能だ」

 「ほう。便利なんじゃな」

 「うん」


 多機能ってなんだよ。

 洗濯機とか掃除機みたいな家電製品のように言うなよ俺。


 「俺の邪眼はとんでもなく強い。すげえ勇者の爺ちゃんでも勝てないぞ」

 「そうかそうか。儂でも勝てんか」


 楽しそうに笑ってくれた。

 なんて優しい爺ちゃんなんだ。

 俺の記憶の爺ちゃんよりも、もっと優しいわ。


 「んで。なんで爺ちゃんは勝てんのだ」

 「ふっ。それは、俺のこの瞳が、爺ちゃんの動きを制限するからだ」

 「儂、動きが制限されるの?」

 「うん。俺に見つめられたら最後。時間制限まで、爺ちゃんはゆっくり動くしかできない」

 「なに。儂はゆっくり動くのか。それは大変じゃ。年寄りっぽいな!」


 思い出すと分かる。

 すげえノリがいいな。爺ちゃん。


 「無敵の瞳だ」

 「ほう。それが邪眼か」


 爺ちゃんは俺の瞳を見て言ってくれた。


 「これで倒したから、爺ちゃんは正義の審判にかけられる」

 「なんだそれ?」

 「爺ちゃんが、その後も生きていいかは、正義の審判ジャスティスジャッジメントの判断次第だ」 

 「だからなんだそれ?」

 「とにかく正義の審判ジャスティスジャッジメントが判断してくれるんだ」


 おい。俺、頭空っぽだろ。

 無計画が過ぎる!

 それ。独り歩きしてるよ。言葉だけがさ。

 なんだよ正義の審判ジャスティスジャッジメントって。

 誰の判断なんだよ。それ!

 

 「そうか。そうじゃったか」


 爺ちゃんは何に納得したんだ!?

 優し過ぎだろ。意味わからんって言ってもいいじゃねえか。

 もっと俺を怒っていいぞ。爺ちゃん。


 「それにこれはね。邪眼の必殺技の一つ。だから名前があるんだよ」

 「名前。どんなのじゃ」

 「うん・・・それはね・・・・・」


 そうだったわ。

 これにも名前があったんだ。そうだ忘れてたぜ。

 なんでこんな大事な事を忘れていたんだ。

 大好きな爺ちゃんと、いつもたくさんの技を考えていたじゃねえか。

 たしか、これの他にだって、たくさんたくさん一緒に考えたんだ。

 なんで忘れてんだよ俺・・・。


 ・・・そうだ。この思い出した技で。

 俺は勝つ。

 爺ちゃん、こっちの世界で、女の子を守るために使うよ。

 どっかで見ててくれ。

 伝説のチカラで、世界(女の子)を救うんだよ。




 ◇


 心臓の鼓動が聞こえる。

 俺のチカラが全身から溢れ出しているようだ。


 「邪眼参ノ型。『絶対時間(エンペラータイム)』」

 

 俺の動きは普通。ケイラの動きも普通。

 なのに敵だけがゆっくり動くのは、この瞳のチカラ。

 俺がかつて妄想した。

 凝視した先の時間がズレる技で、時を見る瞳だ。


 敵であるあの男は、自分の脳内では上手く動いているつもりだろう。

 でも実際は物凄くゆっくり動いている。

 なのに、敵がその事態に気付けない。

 脳と体のズレを起こす。それがこの技の正体だ。


 奴は勝ったと思っているから、あれだけ余裕の笑みをしているんだ。

 俺の瞳があんたの企みを暴いているのも知らずにさ。


 マヌケか。

 って言いたいけど、それは違う。

 俺のチカラがあまりにも優秀なんでな。

 まさかだけど。

 こっちの世界で、このチカラ(中二病)が本当に開花するとは思わなかったぜ。


 「あぶねえ。ケイオス。死んじまう」


 ケイラの叫び声が聞こえた。

 お前の目も十分いいな。

 俺の到達点を予測して言ってる。

 このまま敵に向かって進んだらと。

 ちょうどダガーにぶつかってしまうと心配してんな。


 「安心しろ。ケイラ。俺を信じろ」

 「え?」

 「つべこべ言わずに、そこで信じてろ。俺が勝つってな!」

 「・・・う。うん」


 ケイラが俺の言葉に、素直に返事をしたのは初だ。

 意外と素直な奴だったのか。

 可愛らしい子だったわ。

 すまん。そこは疑っていた。生意気お嬢さんかと思ってた。


 「ガキが舐めるなよ。死ね」


 認識のズレと行動のズレの二つが起こっているだけで、口だけは回る。

 敵はまだ勝てると信じてるな。

 そこが残念だね。

 つうかそこがいいのか。

 その分、俺がカッコよくなるか。


 なんか、知らぬ間に相手を倒している。ってな感じかな。

 ふっ。つまらぬものを斬ってしまった感が満載だ。


 「でも、今回は殴りだわ。ぶっとべ。おっさん」


 右拳に全魔力を注ぎ。

 相手のダガーをすり抜けて、俺は敵のみぞおちに拳を入れ込んだ。


 「これが正義の審判ジャスティスジャッジメントだ!」


 感触取ったりと、敵が浮き始めると同時に、その魔力を放出する。


 つまりこの攻撃。

 循環からの放出。

 二段構えの暴発ナックルだ。


 「ごおわは。な、なぜだ。俺のダガーがあ。当たってねえええええあああああああ」


 岩盤破壊しそうな勢いで、おっさんは壁に激突した。

 

 「か。勝った。俺の勝ちだ・・・・審判が下ったぜ・・・正義のな!」


 魔力が空っぽの俺は、とにかく中二的な決め台詞だけはねじ込んでおいた。


 「すげえ。おい。ケイオス。すげえぞお前。なんだよ今の。おいすげえ」


 嬉しそうなケイラの声が勝利の後に聞こえてきた気がした・・・・。

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