81 個人がやるなら問題ない
永華とカリヤの決闘が行われた日から三日がたった。
今、永華とカルタ、ミュー、ローレス、ザベル、ビーグルはヘラクレスと共に天高くそびえ立つダンジョンの前に来ていた。
「騎士〜!久しぶりだね〜!」
「なんで、いるんだ?」
永華が久しぶりの再開を喜び肩をポムポムと叩くも、騎士は微妙な顔をしていた。
「久しぶりの再開にそれ言う?」
「再開の場がダンジョン前でなければ言わなかった」
そういったヘラクレスは頭を抱え、ため息を吐いた。
過去、恩を売るためにトラブっているヘラクレスに絡みに行った二人が、またこうしてトラブルの近くにいればこうなりもするだろう。
「本当に知り合いだったのね……」
「変な縁あるな」
ミューとローレスが後ろで感心している。
「君たちはまたなんでここに……」
永華達がここにいる理由だがカモフラージュのためである。
カリヤから訳を聞いたあと、保険医が来て解散の運びとなったが翌日いつもの八人が自然と集まった。
今頃、ヘラクレスが来てカリヤと話していることだろう。ララがそう告げる。
ララの言葉のあとに口を開いたのは八人のなかでも人一倍、正義感が強いといっていいだろうベイノットだった。
ただ一言、「なにか出きることは無いんだろうか」と。
罪悪感でもあったのだろう。
カルタが「急に何を言い出す」と返せば、ベイノットは素直に答えた。
「自分達が怪しまずに素直にカリヤとヘラクレスを引き合わせていたら事はもっと早く動いていたのではないか」とベイノットは言ったのだ。
それにカルタは「錯乱していたと言っても過言ではないカリヤが怪しすぎたので仕方の無いことだった」と静かに返した。
両者の言い分、わかるものだ。
大事な家族が危険な目に遭っていればカリヤのようになってしまうのもわかるし、不審者相手に威嚇するような対応をした八人もわかる。
「ねぇ、仮に騎士に話したとして、騎士学校にきたあとにダンジョンに行くのって怪しまれないのかな?」
永華がふと呟いた。
部屋に静寂が訪れる。
カリヤの通っている学校に、軍所属のヘラクレスがやってくる。妹に会いに来るという建前はあれども、怪しまれるか否かといえば何とも言えなかった。
「別の建前があれば良いんじゃないかしら?たとえば、護衛を予てダンジョンに向かうとか」
このララの発言が決定だとなった。
そこからは早かった。
計画を練って訳知りのザベル先生のもとに突撃。渋るザベル先生を全力で説得、ここはレーピオが大活躍した。
レーピオの家は過去に王族の命を救ったことから貴族の地位を報酬として得たという家だ。
そんな家なのもあって多少の融通が効く、だからレーピオが実家宛に証拠入りの手紙を送れば、ある程度察したレーピオの家族が証拠を王家や近衛兵、軍上層部などに見せるはず。
そうなれば何が起こるのか。例の女軍人の目に止まること無く事件を知らせることができる。それに、もしかりに他にも背徳行為をしているもの達がいたとして、そのもの達に見つかる可能性が低い。
レーピオが予測している手紙を渡す相手が祖父の代からの付き合いだからだ。
それからヘラクレスがダンジョンに行く建前として、生徒の課外学習に安全配慮のためについて行くことにしてしまえば変ではないはずだ。生徒が申請すれば簡単なダンジョンくらいは行けるように手配してくれる学校なのでね。
ザベルも生徒達を巻き込む選択肢はとりたくなかった。だがこれは自分やヘラクレス、カリヤだけではどうにもできない話である。長考の末、ザベルは渋々ながらにも了承した。
まぁ元々、ザベル似合いに行く道中でレーピオが「最近うちの領地で起きてる行方不明事件ってあいつらのせいだったりするんですかねえ?」と表情に出さず半ギレだったり。
ミューが「テスト前から行方不明事件うんぬかんぬって父さんが家に帰ってこないって母さんが不安がってた原因がわかってすっきりしたわ。母さん悲しませるやつは潰してやる」って静か激怒していたり。
ベイノットが「妹のダチが一人行方不明なんだわ」と爆弾を落としたりしていたのでザベルが了承せずともこうなる未来は見えていた。
永華やメメ達も地元の者や世話になった人たちがてを出されるのはごめんなので快く手を貸している未来も見えたけど。
またザベルが頭を抱えそうなので永華は心の奥に閉まっておくことにした。
「まぁ、色々とね」
「その色々が気になるんだよな……」
「終わったら話すって〜」
今にも頭を抱えそうなヘラクレスと呑気に笑っている永華、ため息を吐くカルタ。その後ろでザベルはダンジョンにはいる手続きをしていた。
ほどなくしてザベルから声がかかる。
「手続きがすんだのでは入りますよ」
そのザベルの呼び掛けに数人にわかれて散っていた生徒達が集まる。
「これからはいるダンジョンは上層に行けば行くほど難易度が上がる場所です。まぁ、下層程度ならば心配することもないとは思いますが、安全のため私かヘラクレスさんから離れないようにしてください。特に一年生」
ザベル先生の視線がこっちを見た気がするけど、それはきっと気のせいだ。
「では、課外学習を始めます。私についてきてください」
木製の扉が開くと、その先には光しかない。
「これ大丈夫なんですか?」
さすがに心配になったのか、ローレスがザベルに質問を飛ばす。
「あぁ、大丈夫です。そういう仕様ですので」
「仕様なんだ……」
ダンジョンって不思議だね。何て呑気に考えているとザベル先生が追加で解説をしてくれた。
「この光の壁はダンジョン野中にいるモンスター達を外に出さないようにするためのものですから警戒しなくて大丈夫ですよ」
この結界、自然発生しないらしいので未発見のダンジョンの回りにはモンスターがウジャウジャといるらしい。
想像しただけで地獄絵図なのでお目にかかりたくない。あ、いや、未発見のダンジョンとかロマンの塊だし気になる。
「ビビってんのか?」
「なっ!?ビビってねえよ!」
ダンジョンに数回は行ったことのあるらしいビーグルが不安そうなローレスをからかい、光の壁の中に入っていった。
「んのっ!怖くねえし!」
次にローレスが飛び込んでいく。
「全く、こんなときに喧嘩しないでください。ヘラクレスさん、最後尾お願いしますね」
「はい」
ヘラクレスが返事を返すとザベル先生は二人の後を追って入っていく。
「さぁ、君たちも行きな」
ヘラクレスに促され、他の三人も入っていく。
「ふー……せい!」
「よっと!」
「はぁ……」
上から順にミュー、永華、カルタの順だ。
三人が入ったのを見届けてダンジョンの中には入ろうと、扉のわくに手を掛けた。
「……」
ヘラクレスが振り返る。
振り返った先には何もいなかった。少し見回して、正面を向き直る。
ヘラクレスも光の壁の中には入っていく。
眩しさに目を閉じて少し立った頃、光は引いていき目は開けられるようになった。
目を開ければ、そこには石づくりの塔の中に多種多様な魔法植物や魔物が存在し共存している空間が広がっていた。
その光景だけ見れば神秘的なものすら感じるだろう。
ダンジョンに始めてきた一年生達が感動していると上空から虫のような魔物が襲ってきた。
「いやぁぁ__」
虫嫌いである永華が叫びそうになるも、近くにいたビーグルが慌てて口を襲える。
「“燃えろ”」
ザベルの魔法で虫の魔物は燃え散りになった。
神秘的に見えても、ここはダンジョン。魔物達が虎視眈々と命を狙ってくる場所である。




