55 魔法の授業
入学式から翌日。本格てきな授業が始まった。
「それでは魔法史、始めます」
一番最初の授業は担任であるザベル先生の魔法史の授業。
魔法史は“この学校の成り立ちが……”とかではなく“魔法の始まり”についてだった。
「この世界で生きるものに魔法を与えたのは神であり、一番最初に魔法を使えるようになったのはエルフだと言われています」
魔法の歴史は、それこそ数千年も前から始まっているらしい。
「エルフは人間や獣人、人魚、魔族など多種多様な種族に教えました」
魔法の祖と言われるエルフの中には男もいたらしい、なんか勝手に女だと思ってた。
「その頃、エルフのすんでいた地方で何らかの勢力と争っていた痕跡が残っていますが、その痕跡も曖昧なものが多く最近では“何らかの勢力”は最初から存在していなかったのではないかと言われています」
「先生、なんで最初から存在していたなかった可能性が出てきたのですか?」
「それは元々エルフが争いを好まない性質であったと言うのもあるのですが、あまりにも痕跡が曖昧であることが原因です」
「曖昧?」
「“何らなの勢力”の存在はいくつもの書物で……まぁ、言い方は悪いのですが、匂わせ程度に記載されていました。ですがあまりにも“何らかの勢力”に所属する種族が多岐にわたり、時代背景的におかしいと言う話しになったからです」
チラッと教科書に目をうつす。
「教科書にある通り、当時は種族間での争いが耐えなかったからです」
「え、それどうやってエルフ達は魔法を教えたんですか?」
「先ほども言ったようにエルフは争いを好みません。ですから当時のエルフの多くは中立の立場でしたが、特定の派閥に味方となるエルフもいました。そのエルフ達が教えたのです」
なるほど、エルフも一枚岩じゃないと。
ほどなくして一時限目は終わり、次は二時限目。
二時限目の授業。ジャーニー・ベンズー先生の魔法生物及び植物学。
「えぇ、魔法生物及び植物学はじめま〜す。ふぁ〜」
この先生、しょっぱなからあくびをしてる……。
「えっと、この授業は魔法生物、まぁ魔物についての生体とか魔法植物の生体とかします。はい」
ジャーニー先生が眠そうにしながらも鉢植えを運んできて教卓に置いた。
「せ、先生?それなんですか?」
「ん、いまからちょっとやらなきゃいけないことするから、その間に教科書の6ページ見といて」
ジャーニー先生に言われたページを開く。
そこには魔法植物についてのっていた。
魔法植物、それは自然に霧散している魔力が影響して変質した植物である。
触れれば触れた箇所が爛れてしまうような危険なものがあれば、多種多様な病に聞くものも存在する。
魔法生物といっても多種多様だが有名どころと言えばマンドラゴラだろう。
「まんどら、ごら?」
根の部分が人間のようになっており、地面から引っこ抜くとこの世のもとは思えないようなうるさい叫び声を上げ、その声を聞いたものは即死する。
一般的には鉢植えに植えられ、耳栓や魔法を使って収穫される。
「はち、うえ?」
視線を教科書からあげて、教卓の植えにある鉢植えにうつす。
鉢植えが、ある。
冷や汗が頬を伝う。
「よっと、読めた?そのようすは読めたみたいだね」
にっこりと笑うジャーニー先生にいやな予感が止まらない。
「この鉢植え、マンドラゴラが植わってます」
「やっぱりかよ!」
「先生!せめて耳栓配ってくださいよ!」
あちこちから非難轟々だ。
「安心して、引っこ抜くきはないから。でね〜」
安心できないんだけど……。
ジャーニー先生が鞄を漁り、あるものを取り出した。
「処理済みのマンドラゴラで〜す」
ドンッ!と机の植えにおく。
その大きさは人間の子供、だいたい三歳児くらいのものだ。
「これ昨日取れた大物!これと格闘してたら寝る時間なくってさあ。あ、マンドラゴラってこの鉢植えに収まるサイズが平均で、こんなでっかいの畑で育ててたとしても、ここまで大きくならないんだぞ」
鉢植えは一般的な大きさのものだ。それに比べ先生が出したのは人間の三歳児程度の大きさ、後者の規格外さは一目でわかった。
「あ、マンドラゴラの叫び声聞きたい?ワンチャン死ぬけど」
「先生!」
二時限目の授業はドキドキハラハラで終わった。
三時限目の授業、マーマリア・マリー・メイズの魔法倫理学。
「では、魔法倫理学を始めます」
魔法倫理学、それは魔導師が魔法を使うにおいて大切なものだ。
「当たり前のことですし、もうすでに貴方達の魔法の先生に教わっていると思いますが、とても大事なことですのでやっていきますね」
元の世界で言うところの道徳あたりの授業だろう。
「基本的に魔導師が非魔導師、魔法を使えない方に対して魔法を打つことは非常に危険であり許されるべき行為ではありません」
人相手に魔法、使ったことあるんだよなあ。
「ですが自分の命、友人、知り合いの命が脅かされたときは容赦なく使いなさい。全ては命があるからできることですから」
あ、この人、教会でシスターしてそうな見た目してるけど、わりと好戦的かもしれない。
「ですが、あくまで自衛のためです。やりすぎはだめです」
この人やっぱり見た目に似合わず好戦的だ。
「そして、こちらも当たり前のことですが人体実験やホムンクルスなどは作ってはいけません」
ホムンクルス、人造人間。
科学、魔法などを使って“生殖”以外で人間に作られてた“人間”のこと。
「倫理、人道に反することももちろんですが人体実験は他人の人生も自分の人生も壊してしまいます。ホムンクルスもそうです。今まで成功した例はありませんし、作られたもの達は苦しみ抜いて死んでいったと言う報告が上がっています」
パラリとページそめくると、そこには被害者数が書かれていた。
「禁忌は禁忌。犯してはならないから禁忌なのです。人体実験もホムンクルスを作ることも、行えば相応の罰が下ります。その内容については、とても惨いので伏せさせていただきますが、決して手を出さないように」
すこし罰の内容が気になるものの、折角配慮してくれているのだし特に突っ込むものもいなかったので心にしまっておくことにした。
三時限目の授業が終わり、四時限目。
四時限目、ニーナ・ヴィジュルの魔法薬学。
「では、魔法薬学。始めていきまーす」
普通の教室、というよりも理科の実験で使う理科室のようなところだ。
「君たちが想像しているのはお婆さんがでっかい鍋に材料をいれて混ぜている姿ですかね?魔法薬学、わりとそんな感じで作ります」
……ニーナ先生の使ってる机の上にはマンドラゴラや奇妙な見た目の魔法植物、蜥蜴などが置いてある。
「あぁ、これ?これ魔法薬学で使うものを一部抜粋して持ってきたやつですよ」
蜥蜴使うのか……。
「あ、誰かこれ飲んでくれませんか?」
ニーナ先生が取り出したのはうす緑色の液体が入った瓶だった。
一人の生徒が好奇心を刺激されたのか、手を上げてニーナ先生から薬を受け取って一気に飲んだ。
「にっが!!」
生徒が苦いと叫ぶと同時にボンッと髪の色が変わった。
「髪の色を変える薬ですよ。苦いのが難点ですけどね。はい、これ戻すやつ」
また薬を取り出して生徒に渡す。
今度の薬は薄ピンクというなんとも言えない色をしていた。
あれ、蜥蜴とか入ってるのか……。
色もそうだが、内容物が食欲を削いでくる。
四時限目が終わりる。
そのあとに昼食を食べて、五時限目、六時限目と授業をうけてそのあとは自由時間。
そんな感じのサイクルを続けている。




