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54 担任教師

教室に入ってきた教師は見覚えのある人物だった。


「あ……」


「皆さん、お久しぶりです。試験管をしていた者です」


 そう、入ってきたのは試験管であり、永華達を一番に助けに来たザベル・イービスだった。


「これからは、このクラスの担任であり魔法史を担当するザベル・イービスです」


 この人が担任になるのか。


「では今から必要な教材を配りますので前の人は後ろに回していってくださいね」


 順に教材が配られていく。


 気になったのが占星術、つまりは占いがあったことだ。


占いと言えば朝の番組のものやタロットカードあたりを思い浮かべる人が多いだろう。


 だが占星術は違う。ホロスコープ、別名「星の羅針盤」を使って「個人の生まれもった性格」や「運気や未来の大まかな流れ」を占えるものだ。


 私も名前程度なら聞いたことはあったが実際どうやってするかはじいさんに教えられるまで知らなかった。


「はぁ……」


 篠野部がこっそりとため息をはく。


 どうも篠野部は占いに関してはうまく行かないらしい、打率が悪い。


 じいさん曰く「視界を広げろ。見るべき光を見失っとる」だそうだ。


 私?結構当たるよ。七か八割くらいかな。


 あ、あとは魔方陣いついての教科書もある。


 それから魔法薬学、黒魔術学、魔法生物及び植物学、魔法倫理学、魔法体育及び魔法保健学、白魔法学……。


 魔法があるだけで学ぶものが大分増えるものだ。その代わり国語やら算数やらの教科がない。


 まあ、時代は中世くらいだし妥当なものか。


 仮に学校があったとしても登校する子供より、児童労働をする子供の方が多かっただろうし。


「数は足りていますね?わからないことがあれば遠慮なく教員に聞いてください。それから教員や警備員、用務員などの学校の関係者は校章がかかれたものを着用しています。貴方達の胸元にあるマークです」


 チラッと胸元を見る。刺繍された校章は試験のつけていたバッチのマークと同じだ。


「校章が入っていない者がいれば侵入者ですのですぐに近くの学校関係者に連絡するように」


 この学校、貴族も通うので暗殺や誘拐目的の侵入者があとをたたないのだそうだ。


「それからわが校に入学することになった知り合いに制服等をお下がりで渡すかたもいるでしょうが、それはなるべくやめるように。仮に行うとしたら学校に一報ください。万が一があっては困りますので」


 万一っていうと制服やらを闇市に流されたり、それを利用して暗殺者が入ってきたりってところかな?


「それから地図を無くしたら、すぐに連絡してください。隣の軍学校も、ここ魔法学校も昔からある建物で増改築を繰り返しています。ですので一部迷路化してる箇所があり、そこになると学校関係者でも地図が手放せません。絶対怒りませんので、すぐに連絡してください。校内で迷って行方不明になる方が怒られます」


 ……行方不明者が出るレベルの迷路が学校にあるの?校内で行方不明者出るとか怖くない?


 先生の発言に驚き生徒達は配布されていた地図を取り出す。


 確かにデッドスペースらしき場所や変にいりくんでるところがある……。


「まったく、昔の人たちも、もう少し考えて増改築すればいいものを……」


 まったくもって同意。


 そういえば、海外の話だったかな?元の世界にも似たような建物はあったとかなんだとか聞いたことがある。


「それから軍学校の人たちと余計ないざこざを起こさないようにしてください」


 生徒達からいい加減な返事が聞こえてくる。


 何人かはいざこざを起こすきかもしれない。


 そんな生徒達の様子にザベルはため息をはいていた。


「では、これから一年間よろしくお願いします。本格的な授業は明日からですので今日はこれにて解散です。寮にかえって持ち物に名前を書くなり、王都を散策しに行くなりお好きにどうぞ。では終わります」


 先生の一言で教室にいた生徒がゾロゾロと出ていく。


「軍学校とのいざこざをねえ。なあんでそんなに仲が悪いんだか」


 マッドハッド氏もヘラクレスも興味がないと行っていたから詳しくは知らないが、そうも初代生徒のころからの犬猿の仲らしいと言うことしか知らない。


「ふふ、教えてあげましょうかあ?」


 隣にいるへんた__レーピオが永華の言葉に答えた。


「僕は生まれも育ちも王都ですからある程度話が入ってくるんでよう。まあ、いろんな話を聞くのでどれが正しいかなんてわからないんですけどねえ」


「なんでもいいや。聞かせてよ」


「えぇ、その代わり罵ってくださ__」


「はよ」


「む、はあい。仲の悪さの原因は色々聞きますけど一番よく聞くのは初代軍学校の生徒が初代魔法学校の生徒に向かって「邪教徒」と罵ったことが原因と言われてますう」


「邪教徒?またずいぶんなことを……」


 つまり、宗教戦争でもあったと言うことだろうか。正直、私は神を信じてるわけでもないし、何かしらを信仰しているわけでもないからよくわからないんだよなあ。


「えぇ、同意ですねえ。当時の生徒達が何を信仰していたかまではわかりませんが、それが引き金となって仲が悪くなったようですねえ」


「宗教戦争って言うやつですか?それで遺恨が何年も残ってるなんて、人間はめんどくさいですね」


「海はそういうのないの?」


「基本的に弱肉強食ですから神に祈ってる暇があるなら生き残る努力をしろって感じですね」


「なんか、海の物騒さが垣間見得た気がするぜ……」


「あ、宗教自体はありますよ。まあ、信じてるものの数は少ないですけどね。でも」


 海にも宗教ってありはするんだ。


「あとはそうですねえ。魔法学校の生徒が軍学校の生徒を殺したからって言う話もありますう」


「あら、行きなり別方向に物騒になったわね」


「有名どころは、この二つですねえ」


「王都や近くの町じゃ有名な話よ」


 まあ、有名な理由なんて近場に原因となる学校が両方揃ってあるからってところだろうね。


「へ〜」


「そうなんだ」


「仲悪ぃってことしか知らなかったぜ」


「理由、思ったよりも普通だな」


「でもあんまり私達には関係なくないですか?」


「いいえ、アタシ達は魔法学校の生徒の生徒だって知ったら絡んでくる人もいるから関係ない話ではないのよ」


「そうなんですか」


「待って?メメはわかるとしてあんたら揃って知らなかったの?」


「アタシは知っていたわよ?」


「いや、でも四人も知らなかったってことにビックリしたんだけど……」


「もしかして皆さん、国のはしの出身なんですかあ?」


 そういえば全員揃って端の方の出身だと試験のときに話していた気がする。


「端の方の出身だと存外知らない人は多いんですよう」


 なるほど、それならミューやレーピオが知ってて私達が知らないのおも納得がいく。


「それもあるけど私も篠野部も正直、軍学校と魔法学校のいざこざには興味なかったからね」


 鞄に配られた教科書や教材をしまいこんで立ち上がる。


「さ、そろそろ寮にかえろ」


「僕も帰る」


「あ、僕も帰りますう」


「来るな!」


「いや、お前ら同室だろう」


「はは……」


 変態と、その被害者を見送り私は寮に戻った。

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