77話 エージェント・セレブルムの手記
1日目
転送に成功して無事に異界の地へ、足を踏み入れる。環境は我々の故郷である地球とほとんど変わらず、健康被害が起きる心配も無さそうだ。
エージェント・アンカーは帰りの転送の為にここに拠点を張って、待機するようだ。元々活発な少女であるアンカーは待機するように言われて不貞腐れている。
私は仕事も少ないし、暇を潰せるような、何か面白い物でも持ってきてあげたいな。
3日目
いよいよ出発だ。私達1班は博士の観測外のコンカラーを捜索するために、この世界で観測機での調査を行う。エージェント・トランスポーターの瞬間移動で事前に決められた観測点まで移動する。
おそらくdollランクかpupaランク位しか存在しないだろうが、pupaでも油断すれば全滅の恐れもある。
気を引き締めなければ。
4日目
1箇所目での探索は特に異常なしと判断された。
7日目
5箇所目で大きい反応が出た。おそらくpupa以上であることがデータからも分かる。最後の観測点で発見してしまうとは、運が悪い。もう終わってゆっくりする気満々だったのに。
8日目
コンカラーの位置を特定した。明日には現場まで向かって確保に向かえるだろう。出来るだけ可愛らしくて友好的な子だったらいいんだけどなー。化け物タイプはちょっと苦手。
9日目
どうやら可愛らしい少女が、コンカラーのようだ。その子はあまり友好的な態度は取らなかったが、観測した所によると、pupaランクだろう。明日本格的に交渉か確保か決めなくてはいけないだろう。
10日目
ランクはpupaではなくcladeランクだった。組織の存在を知っていて、こちらが組織だと気付いた瞬間に襲ってきた。
1秒にも満たない間に一撃でエージェント・イズモが殺られた。あの人が殺られるだなんて思わなかった。その次の瞬間にはトランスポーターの首が切断された。
逃げる手段が無くなってしまった。どうにかエージェント・オールドの煙幕弾によって近くの森まで逃げ延びたが、エージェントを同時に2人も失うとは絶望的だ。足もないのにどうやって戻ればいいのだろうか。ここは今戦争の真っ最中らしい。反乱軍が我々に手を貸してくれるかは分からないが、どうにかして戻らなくては。
11日目
解析を進めた所、どうやら奴は時間に干渉しているようだ。恐らく時を止めて攻撃して来たせいで対処も出来ずにみんな殺されたんだ。
奴は追跡してきたようだ。オールドも殺されてしまった。私とエージェント・アンタルチカしか残っていなかったが、神は救いの手を私達に差し伸べてくれたようだ。美しい白い髪の少女が奴を縛り上げて、動きを止めてくれた。その間にアンタルチカが奴を氷漬けにしてどうにか死なずに済んだ。
その少女はグレイプニルと言うらしい。北欧神話の鎖の名前だ。しかも私達を拠点まで送ってくれると言うのだ。しかし、私達は森で活動中の4人を回収しなくてはいけない。しかもまた追ってこないとは限らない。速く移動しなくちゃ。
12日目
どうやら私達の事は見失ったようだ。グレイプニルはあまりコミュニケーションは得意では無いようだが、優しくしてくれている。グレイプニルも森の近くまで行く予定らしい。頼もしい護衛役ができた。ひとまず喜ぼう。
「…ここで日記は終わっているってか。どうやら落としたのを王都軍に回収されたようだな」
自分はトレントに呼ばれて第2軍の基地まで来ている。エウス達が発見した手帳にとんでもない内容が記されていると、聞いて駆けつけたのだ。
「グレイプニルは確かフェンリル軍に入らずに個人で行動していたはずだ。よく分からない集団と行動を共にしているのは心配だな」
トレントは難しい顔をしながら、手帳のコピーを眺める。トレントはこちらの世界の話だろうと、自分を呼んだようだが、自分の世界にもこんなよく分からない組織は存在しなかった。
しかし、これは王都軍が作り出した法螺話では無い事が確認されている。挟まれていた地図に描かれていた、この組織の一員が居るであろう森は存在していた。
しかもそこでは恐ろしい噂が幾つも存在している。そんな所に行ったらもしかしたらグレイプニルも死んでしまうかもしれない。
「俺は森に行こうと思います。出来るだけ早く助けないと危険です!」
「うむ、それならうちのパーミャチも連れて行ってくれないか?」
自分は疑問を感じてトレントを見る。こんな危険な任務にパーミャチを連れて行くのはどうなのかと。だが、トレントは真面目な顔で話し出す。
「あいつは遠距離攻撃に特化していると思っているだろうが、サポートも完璧だ。あいつは最近自信をなくしている。マヤと共に戦いにでも行ったら、自信を取り戻すだろう」
自分はちょっと考え込むが、1人くらいならいざと言う時にも逃がすことは出来るだろう。
「ちょっと心配ですけど、言う通り連れていきます。自分がきっちり守ります」
トレントは自分の肩を叩き、任せたと言った感じで笑う。
「という事でパーミャチと俺とで作戦だ。しかし、相手の正体が掴めないとは言え、無策で突っ込む訳にも行かない」
会議室でパーミャチと話し合う。パーミャチもキョトンとした感じで座っている。
「あの人真面目な人だと思ってたんだけど、意外とやばい人かもね」
「まともなのいねーもんな」
2人でしばらく笑った後に会議を再開する。
「それで対策はどうするの?ヤバい奴らがいるんでしょ?怖くない?」
自分はパーミャチに紙を渡す。それには自分が纏めた色々な情報が書かれている。
「うーん、精神汚染と超常現象?その対策としてアマテラスの加護…って人任せ!」
パーミャチが突っ込んだ通り今回は、対策については人任せである。アマテラスに相談したら精神異常耐性の御札貼ったげるーと言われたので、遠慮なく使わせてもらうことにした。
超常現象については御札の影響で、敵をしっかりと認識出来るようになっているそうだ。
「てかなんでアマテラスなの?」
「ああ、あいつがオタクだからだよ。色んな知識を大量に詰め込んでるから、助けてくれるかなーって」
パーミャチはため息をつく。
「適当すぎない?」
自分は胸を張って答える。
「俺がついてるから安心しろよ!いざと言う時は飛んで逃げるぞ!」
パーミャチはやれやれと言った感じで肩を竦めるが、別に嫌がってはいないようだ。
「まあ、私だって頑張るからね」
パーミャチは杖を掲げて笑う。正直な所パーミャチは強い能力があるとは言えない。まあ、自分もゴリ押しだから、人のこと言えないが。
それで自信すらも無くなっては、何もできない。自分が活躍させて、自信をつけさせてあげなければ。
数時間前の天界でアマテラスとマヤはゲームしながら話していた。
「ん、面白そうだねー!とりあえず1番怖い精神汚染だけ対策してあげる」
「あざーっす」
アマテラスは笑う。
「まさか異世界から財団的な何かがやってくるだなんてねー。収容違反でも起きたのかな?」
「やめてくれ世界が滅んじまう。本当に迷惑だよな」
2人で笑い合いながら、ゲームを続ける。適当な神の加護で適当な男が仲間を助けに行くのだ。傍から見るととても不安だと、知り合いの神は語った。




