74話カラフルウォー
「こんにちは!フェンリル軍の皆さん、カラフルリートです!」
フェイブルが観客に向かって叫ぶ。センチュリオンからの派遣で、味方を鼓舞するためにライブを行っているのだ。
それに乗っかって、自分達も一緒にライブを見ている。
「やっぱり可愛いな!ライブ前に普通に会ったけど、ライブの時はひと味違うな!」
皆で1番前の席を陣取って、全員で手を振っている。戦争中にこんなに呑気な事してていのか、と思うかもしれないが、別にずっと戦闘をしている訳では無いし、休息は必要だ。
「自分達の為にこんなライブを開いてくれるなら、戦地でも死なないように頑張れるな!」
「マヤは死なないけどねー」
ヨミに突っ込まれるが、別に毎回死んでいる訳では無い。
「皆楽しそうで良かったですねー!」
サヤも喜んでいる。グランは言うまでもなく、叫んでいる。
ライブを楽しんだ後に、カラフルに呼び出される。今回は天使を叩きのめす訳ではなく、ただ雑談のために呼ばれた。
部屋の中にはシェフィ以外のメンバーが集まっていた。シェフィは他の仕事がある為に来られないらしい。
「まさか戦争になるとはね。どうやら聖戦のような大虐殺みたいにはなっていないけど不安ね」
フェイブルは頬杖をつきながら呟く。フィジーはモジモジしながらこちらを見つめて、リードも何故かモジモジしている。
「何だか、ちょっと恥ずかしいですね。もう会うことはないかなーって諦めていたので」
「まあ、どちらも忙しいからな。今日はお疲れ様、うちの兵士も喜んでいるよ、ありがとう」
リードは嬉しそうに微笑む。流石天使だ、場を明るくしてくれる。
「そういえば…この戦争って、勝ち目あるんですか?」
フィジーが率直に聞いてきた。自分は少し考え込む。今の所優勢ではあるが、どうしても人員が足りないのは、不安要素だ。
「勝てる可能性もあるけど、いつ逆転されるか分からないからなー。もっと参加してくれれば、いいんだけど」
フィジーは腕を組んで考え込む。
「今はどんな組織が参加しているんだっけ?」
ヨミが自分をつついて聞いてきた。
「そうだな、まずは俺達フェンリル軍、カラフルの皆が所属するセンチュリオンだな」
「確かエルフの組織もあったよね!」
「ああ、自由エルフ解放軍だったけな。エルフの大元の組織が分裂して、フェンリル側と王都側に別れたんだったな」
自分はメモ帳を取り出して、確認し始める。軍としては協力体制だが、戦い方も思想も完全に同じでは無いために、個人としての関わりは薄い。
「ただいまー、終わらしてきたよー!」
急にシェフィが楽屋の扉を開けて入ってきた。だが、噂をすればなんとやら、胸に自由エルフ解放軍の紋章を付けていたのだ。
「あれ、シェフィちゃんってセンチュリオンじゃなかったっけ?」
シェフィは荷物を、ゴソゴソ漁りながら答える。
「派遣されて、エルフ解放軍のマスコット見たいな事してるんだよねー。まあ、大した事はしてないんだけどさ」
そんなシェフィを横目に見ながら、ふと気づいたように、フェイブルが聞いてきた。
「そういや、フェンリル軍って階級とかあるのかしら?悪魔軍には大佐とか少将とか言われている人が要るのは聞いたことあるけど、フェンリル軍では聞かないわ」
「うちでは階級制度は無いですねー。偉い人には、肩書きくらいは有りますけど、せいぜい隊長とか司令とかですね」
元からそこまでかっちりとした軍では無かったからだろうか、意外と適当なところが多い。でも、自分もマヤ大佐とか、マヤ中将とか呼ばれてみたかったな。やっぱり憧れる。
「竜人連合も無いわよねー。まあ、あそこは規模が小さいから仕方ないかー」
グランは椅子に座って足をぶらぶらさせながら呟く。グランが言った竜人連盟と言うのはその名の通り、ラザフォードの故郷やその他の竜人の街が、連合という形で集まっている組織だ。
「後は多種族連合独立軍も一応階級はあったはずだよね。あそこは軍と言うより財閥的な物だけど」
今のフェンリル連盟では今名前が上がった組織で全部である。フェンリル軍直属でなければ大体多種族連合独立軍である。
そこは色々な種族の大企業が集まった寄せ集めの組織で、主にフェンリル軍のバックアップに動いている事が多い。フェンリル軍の兵器を量産しているのも、連合の重工業だったりする事が多い。
それらの組織のおかげで、どうにか戦えているとも言えるだろう。
「やあやあ、悪魔の話をもっとしないかい?私達だって頑張ってサポートしているだよ!」
いつの間にか部屋に入り込んでいたヨルムンガンドが話しかけてきた。
「やあ、ヨルムン。暇だからって不法侵入は辞めろよ」
ヨルムンガンドは笑いながら、自分の横にどっかりと座る。ヨルムンガンドはルルイエの1件で相当落ち込んでいたが、最近はいつもの勢いを取り戻してきたようだ。
「ヨルムンガンド様…居るだけで、物凄いオーラです…」
シェフィが震えながらヨルムンガンドを見つめる。ヨルムンガンドはシェフィに向かって、にこやかに手を振ってから、話し始める。
「悪魔軍は大っぴらには参戦していないことになってるけど、ちゃんと東部魔族共闘軍に紛れて参加しているからねー」
東部魔族共闘軍、フェンリル連盟には参加していない、いわば義勇軍的な位置付けの軍隊だ。西部地域は不参戦を決めているため、東部と名前についている。
「魔王領の魔族が住んでいる所って北部だから大分寒いらしいわね。もしかしたら暖かいところに逃げてきたのかもね」
フェイブルが言うように、この大陸は南北に長く、北部に魔王の領地が広がっている。冬になると最北端では、北海道より寒いらしい。
多分この世界でも緯度は、日本と同じくらいの地域なのだろう。
ヨルムンガンドは苦笑いしながら頷く。戦争する方がマシなくらいの寒さってどういう事なのだ。まあ、流石に領地拡大のために参戦しているとは思うが。
「王都が嫌いなのが1番だと思うけどねー。いつも何もしていないのに勇者に殺される魔族がよくいるし」
ヨルムンガンドは少し表情を曇らせる。やはり王都と言う単語自体が軽いトラウマになっているようだ。それも当然だろう。元はただの人間だったのだから、そんなにすぐには立ち直れない。
「まあ、今は皆で協力する時だから、頑張ろう!」
そう言ってから、ヨルムンガンドはフェイブルと話し始める。自分は推しと話せて嬉しそうなヨルムンガンドを暫く眺めてから、カラフルのメンバーやサヤた達と話し始める。
夕方になり、カラフルリートのメンバーと別れて、その基地の宿舎に向かう。
こうやってあまり慣れていない道を歩いていると、ルルイエの城が懐かしくなる。
「何だか、寂しい感じがしますね。皆今は離れ離れで、死ぬかもしれない恐怖と戦っていますし」
サヤが夕焼けで赤く染る空を見ながら呟く。
4人で黙って空を見つめながら歩く。偶に自分が何をして、どう生きればいいのか分からなくなる。
自分はそっとヨミの手を握る。
冷たいその手は自分の頭を覚ましてくれた気がした。




