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50話 異世界の因縁

 

 どうにかしてこの状況を打開しなければ...どうやったらこの力から逃れられるのだろう。


「マヤ、この子は可愛いですね。とてもとても可愛らしいです」


 そう言いながらアニマはリードに近付く。そしていきなりリードの腹を思いっきり殴る。


「うあっ」


 リードは顔を歪ませる。


「やめろ、その子を殴るんじゃない。拷問する前にお前の目的を教えろ」


 アニマはこちらを向く。その顔は輝くほどの笑顔だった。


「復讐ですよ。だって仲間がやられたのに、黙っていられますか?」

「じゃあ、俺を殴れ。その倒れている奴を、痛めつけたのは俺だ」


 だが、アニマは気にせずにまたリードを殴る。怒鳴ろうとしたが、謎の力で舌が動かない。

 アニマは何度も何度も殴る。リードの口からは血が垂れ始めた。


「なんで貴方が、この方の隣にいるんですか?それほどの徳を積んだのですか?」


 アニマは今度は腹を蹴り始める。その顔はまるでゆっくりと紅茶を嗜んでるかのような、穏やかな顔だった。

 なんなんだこいつ、イカレてやがる。復讐する奴のはそんな顔をしない。気持ち悪すぎる


「なんで貴方がそんな正義面してこの場に立っていられるのですか?貴方も私と一緒の諸悪の根源なのに!」


 蹴っていくうちにやっと怒りの表情が見えてくる。自分はどうにか舌を動かして、叫ぶ。


「辞めやがれ!お前に何があったかは知らねえが、無力な奴を殴ってるんじゃねえ!こっちを向きやがれ!」


 自分はどうにか謎の力を振りほどき、地面に降りる。アニマは自分を見て、うっとりとしたように顔を緩ませる。

 リードはもうぐったりとしてしまっている。


「ああ、この世界では自己犠牲のヒーローですか?いや、違いました。貴方は使える物はなんでも使う人でした。ただ使い捨てられる自分を、使い捨てているだけですね」


 アニマはこちらに近寄ってきて笑いかける。


「記憶が無くても、あなたは変わりませんね。ずっとあなたが...ずっと愛おしかったんです」


 え、今なんて言った?愛おしかっただと?これやばい奴だ。

 前世の自分よ、よりにもよってヤンデレっぽいのを引っ掛けてしまったんだ。体の芯から震えが止まらなくなってきた。

 アニマはもう一度手を握る。また謎の力によって体が固まる。


「今回は邪魔する者もいないですね。...ああ、とりあえず何をしましょうか?」


 アニマはじっとこちらを見てくる。一見清純で可愛らしい少女だが、もうそうは見えなくなってしまった。天使の皮をかぶった中身悪魔じゃないのか、こいつ。

 いや、それは悪魔に失礼だな。この世界の悪魔はこいつよりもっと理性的だよ。


「うるせえ、メンヘラもヤンデレもタイプじゃあねえんだよ」


 無理矢理体を動かそうとするが、少しづつしか動かせない。アニマは顔を鼻息がかかる距離まで顔を近づけてくる。


「大丈夫ですよ、私はただの恋する乙女ですから。今、私が変なことになっているのは、好きな人を前に、興奮しているだけなんです」


 アニマはそう言うと、いきなり鼻を舐めてきた。

「びゃあ!やめろ!気持ち悪い!」


 うぎゃあ、お前は犬か!全く中身に何が入ってるんだよ!アニマはしばらく顔を撫でた後に、顔を離す。


「ふふ、あまり撫で回していると、本当に何しに来たか分かりませんね。私は好物は最後に残すタイプなので」


 アニマはそう言って懐から手帳を取り出す。そしてそこから一枚の写真を取り出した。


「私は大体の記憶を取り戻していますが、あなたにはあの世界の事は思い出して欲しくはありません。でも、昔話くらいはしたいんですよね」


 その写真を見せつけてくる。そこには笑顔のセーラー服の少女と、角の生えた白髪の少女だ。場所は見知らぬ学校の屋上だ。


「めちゃくちゃかっこいい感じで撮れてますよね、その白いのが私で、黒いのが私の友人ですよ。ちなみに、その子は死にましたよ。そこで萎びている天使に負けて」


 うわあ、面倒くさい展開になってきたなあ。丁度戦闘の記憶だけが消えてこっちに飛ばされたってとこだな。


「まあ、あっちでは私達は人類を全滅させようとしていたんだから仕方が無いですね」


 アニマは懐かしそうに写真を見つめる。


「私があなたを好きになったのは、その最終決戦で死にかけの部下達の為に、違う部隊の能力者を囮に使った所でした」

「能力者を囮に?俺ってそっちで、能力者同士で戦っている側だったのか?一般人役じゃなくて?」


 アニマはちょっと目を逸らして笑う。あれ?前世ではアニメとかのオープニングでかっこいいカットイン入るタイプじゃないんですか?やっぱりすぐやられるモブ?


「んー、能力の割にまあまあ強かったんですけど、能力不足を補うために、敵からしたら卑怯、味方からしたらいつ使い捨てられるのか怖いって感じでした。なので、対能力者組織ではあなたが率いていた部隊は通称殺戮重戦車と呼ばれていましたね」


 おっと、そんな嫌な役回りだったのか。なるほど、オープニングの中盤あたりで、で部隊のメンバーがまとめて映し出されて、悪い顔するキャラだ。

 どうせ、後で主人公に刃向かって殺されるか、ボコされて追放される奴だ...


「それで、私が転移した時はまだあっちに居たはずなんですけど...なんでこっち来たんです?」

「知るかよ!知ってたらこんな話聞かされることもねぇーよ!」


 アニマは暫く、くすくす笑って自分を見ていた。


「そうですよね...まあ、前世の記憶ってのはこっちでは、オマケみたいなものですし、どうでもいいですよね」


 アニマは顔をグッと近付けてきた。もう鼻と鼻がくっつきそうだ。


「そろそろ時間もあれなので、いただきますね」

「え、おいやめろ、びゃあああ!もう、変なやつとのキスはいやだああああ!」


 ...はあ。たっぷりとキスをされた。今までで最悪の気分だ。

 なんか重要そうな無駄知識を頭に詰め込まれた挙句に舌まで口に突っ込まれるとか、気色悪いったりゃありゃしない。


「ふふ、もう1回位行きましょうか?この天使の姿なら、どんな熱いキスも許されるでしょう」


 アニマはウキウキしながら踊っている。

 誰か...早く助けてくれぇ...

 そう思っているといきなりアニマが真上に吹き飛んだ。びっくりしてアニマがいた場所を見ると、大きな包丁が突き出ている。

 アニマが天井に跳ね返って床に叩きつけられると、その横でひょこっと葵が顔を出す。


「うっす、困ってそうだから助けに来たぞー。そいつとキスするんだったら私にもしてくれよー」


 葵はニヤニヤしながらこちらを見ている。その様子をアニマは横目で見て、微笑む。


「ふふ、仲間いっぱいできたみたいじゃないですか。この世界はあっちに比べて平和ですからね、じゃあ私はボスとして君臨するために、逃げ出しますね!」


 そう言ってアニマは仲間の天使を脇に抱えて窓から飛び出した。

 自分はそれをぼーっと見ていたが、リードが倒れていることを思い出して近寄る。どうやら気絶しているものの、重傷にはなっていないようだ。葵も歩いてきて、リードを眺める。


「これってアイドルの子だよな。眼鏡かけると一気に地味だなあ」


 結構酷いことを言ってるが、それよりも葵がアイドルの存在を知ってることに驚きだ。


「とりあえずみんなと合流しなくちゃならないな...一緒に来るか?」


 リードを担ぎながら葵に聞くが、葵は首を横に振り剣を担いで。壁の方まで歩いて行く。


「私は面白そうな事には首突っ込むけど、会議は眠いから嫌だね。じゃあまたねー」


 そのまま壁をすり抜けてどこかに行ってしまった。あれくらいお気楽の方が人生楽しそうだな。自分はちょっと仕事があるから、大変だけどな。



「今回は協力してくれてありがとう。リードは怪我しちゃったけど、命には別状が無くて良かったわ」


 フェイブルはリードを抱き抱えて、礼を言ってきた。


「しかし、今回は特に情報が得られませんでしたね。釣られたと言ったところでしょうね」


 自分は疲れて寝てしまっているサヤをおんぶしながら答える。


「ええ、そうだけど、ここでの教会の建設は防げたでしょうね。私たちも暫くルルイエを拠点にするわ。何かあったら伝えるから、よろしくね」


 フェイブルはそう言ってメンバーを連れてホテルに入って行った。

 自分は横で夢心地のグランとやたら今日の事を慰めてくるヨミと一緒に帰路に着く。

 これからどうなるかは分からないが、ちょっと気を引き締めないといけないな。元の世界では自分の仲間だけを守る為に、必死になっていたようだ。

 この世界では、自分は仲間全員を守れるようにならなければいけない。そう誓って、ヨミ達と共に歩き出した。


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