26話 革命万歳
ベッドから起き上がり、伸びをする。清々しい朝だ。昨日は徹夜していて、眠かったかったので、熟睡出来た。枕元には、何故か元の世界のゲームがいくつか置かれている。1つを手に取る。
懐かしい、このゲームはだいぶやり込んで、完全クリアしたんだったな。何故、こんな所に置かれているのかは分からないが、多分ケーニヒが見つけた物を置いてくれていたのだろう。
まあ、本体も電源もないから遊べないんだけどさ。
「おっはよー! 朝ご飯食べよ」
先に起きていたヨミが呼びに来た。隣のベッドのサヤを起こして、食堂に急ぐ。既に皆揃っていて、ほぼ食べ終わっている人もいる。
自分も席につき、食べ始める。なんだか豪華な食事だ。一応自分たちは革命の英雄的な立場にいるためなのだろうか。
美味いもん食えるのに別に文句は言わない。食べ進めていると、食堂に雪風が入ってくる。
「どうも〜皆さん。私の手料理はいかがでしたか?」
え?今目の前に並べられているオシャレ料理が手料理?嘘だろ…これが女子力ってやつか。
「そして申し訳ないのですが、私もこの街の連絡担当として、同行しま〜す!役職はコックです!」
いや、コックとかこの集団に要らないだろ。別に自分たちは海賊として、海に出る訳ではないんですよ。
「いやいや、いきなりすぎるじゃろ。もうちょっと相談して欲しいぞ、そういうことは」
雪風は悪びれずに、
「大丈夫です!敵は消し飛ばせます!」
そう言って杖を掲げる。パーミャチが死んだ目をしている。役職かぶりは辛いな。後で魔法の特訓、手伝ってあげないとな。
ざわついている皆を横目に見ながら、朝食を平らげる。さっさと食べ終わって、ケーニヒの所に行って、話をつけないといけない。できるだけ好条件で、こちらのバックアップとやらを約束させなければいけない。
正直あの人をそんなに信用していないのだ。一応、今回は代表として、しっかりしなくてはいけない。食器を片付け、準備を済ませて宿を出る。
「はい、これで宜しいですか?あとはどの戦車を作ればいいかのリクエストだけですね」
「はい、お願いします。これが今回作って欲しい戦車です」
なんだか、あっさり決まってしまった。こちらに有利すぎて怪しすぎる気もするが、どちらにも利益があることを懇切丁寧に説明されて、納得してしまった。特に突っ込むことも出来なかった。
今回取り決められたのは、1つ目に拠点の確保だ。
もし拠点を構えるのであれば、ケーニヒ側が選んだ建物ならば、無償で提供してくれるらしい。その代わり、ケーニヒが部隊を派遣して勢力を広げるための拠点としても使われるらしい。つまり共用の基地として、土地を提供してくれるらしい。
2つ目に、兵器の提供及び、メンテナンスだ。自分たちに無償でこの獣人の街、フェンリルシティ製の兵器を提供してくれるそうだ。ただし、技術力が足りないので、兵器の設計や案などをどんどん考えて送って欲しいそうだ。特に銃や戦車関係の物を。
最後に資金援助。どうやら近辺の獣人街や、友好都市に産業製品を売って資金を稼いで援助してくれるようだ。最低限の資金は援助してくれるらしいが、いいアイデアや設計を渡したら、それで生産された製品の売上の一部を上乗せしてくれるらしい。
この条件はこちらとしては、ローリスクハイリターンで、とてもありがたい。これは乗るしか無かった。
「はい、重戦車の方のT34とIS-6と、え…FV4005ですか…ちょっとこれは難題ですね」
ケーニヒは苦笑いしながら、答える。
「どうにか120モル砲の方は今鋭意開発中で、それを載せて、速度で差別化すればT34とIS-6は再現できそうですが、FV4005はちょっと難しそうですね…」
うちの問題児がすみません。急に艦砲クラスの砲作れなんて難しいでしょうしね。ちなみに1モル=1ミリっぽい。
「せめてもう少し技術があれば、作れるのですが…」
技術が足りないのは仕方がない。今まで大っぴらには開発できなかったのだから。
ふと、自分の鞄に入れっぱなしの本の事を思い出す。ヨルムンガンドの本だ。これにはぎっしり兵器についての情報が載せられている。…ちょっとだけなら渡してもいいかな。自分が持っててもあまり役立たないし。
「ケーニヒさん、これ見てください」
ヨルムンガンドの本を見せる。ケーニヒは中身を少し覗き、目を見開く。
「これは大分先進的な技術ですね。是非とも入手したいものです!いくらなら情報提供していただけますか」
どうしようか、金が絡むことなのに本人に相談できないとは。そう思っていたら、
「マヤ〜、その本貸して!」
本人がすぐ横にいる。もしかしたらずっと監視されているのではないのだろうか。怖いなー。ヨルムンガンドはいくつかのページに印をつけていく。
「はい、このページなら丁度いいくらいだと思うよ!あまり変なこと入れ込むと、国が壊れちゃうからね〜」
そしてヨルムンガンドはあるページを開き、
「マヤ、特にこの魔力核融合とJ爆弾だけは流出禁止ね。まあ、この本マヤとヨミちゃんしか読めないようにしてあるから、大丈夫だと思うけど」
そう言ってヨルムンガンドは本を自分に返す。
「もし、戦車完成して納品されたら私の事を呼んでね〜。すぐ駆けつけるから」
そう言って風のように立ち去っていく。ケーニヒは信じられないように、口を開けっ放しにして惚けている。まあ、自分はもう慣れてしまった。ヨルムンガンドは、面倒みはいいんだろうけど、無茶苦茶な事するからな。
「じゃあこのページだけ複写して渡しますね」
惚けているケーニヒに呼びかけ、いくつかのページを複写して渡し、解散する。これから、この街は工業都市になっていくのだろうか。楽しみなような、怖いような、変な気持ちで夕暮れの中歩いていく。
宿に戻って皆に成果を報告する。
「いやー、こんなことになるとはねー」
カヤはしみじみと言う。確かに自分がこっちに来てからもう1ヶ月半ほどしか経っていない。そんな短い期間に山ほどイベントが積み重なり、今ではひとつの都市と契約など交わしたりするほどまでに、自分たちの影響力が大きくなっている。
「まあ、盛大に祝おうぜ!今日はパーティだ!」
エウスが酒瓶を掲げる。皆もそれに賛同し、近くの酒屋まで行って宴会を開くことにした。みんなで食卓を囲むのとは違う浮かれた雰囲気に、最初は乗り切れなかったものの、だんだん慣れていき、楽しんでいた。
トレント夫妻はゆっくりとワインを嗜み。エウスとフィアットはどちらが酒豪か勝負をしている。それを盛り上げながらカヤと伊智代とリズも豪快に呑んでいる。
お酒飲めない、もしくはほとんど飲めない組の自分とサヤ、ヨミ、コメット、パーミャチも宴会料理をバクバクと食べながら(特にサヤの食べ方はえげつない)、しょうもないことを言い合って笑い合う。
雪風はお酒に弱いらしく、机にベターっと伸びている。このどんちゃん騒ぎは夜遅くまで続き、最後には酔っ払い達を部屋に運ぶ羽目になった。片付けた後に風呂に入り、ベッドに入る。
元の世界では体験することの出来なかった事を、こっちで沢山楽しめている。最初は理不尽なこの世界を恨んでいたけど、今はもう馴染めてきている。これからも皆で平和に暮らしたいな。




