45話 ゲーム少女の拠点制作
魔の森と呼ばれる眼前の森は生い茂った草木により薄暗く、ちらちらと魔物と呼ばれるアストラル体の姿も見えて、教えられたとおりにかなり危険な森の姿を見せていた。
アリスは森林を前にして、ウィンドウに映るステータスボードをポチポチと押す。
カッと眼前が光り輝き空間が歪み、白く光るゲートが生み出されたとわかったときには、その中から光り輝く長い蛇のような体を持つ白い毛皮のような美しい鱗をもつ神秘的な龍が現れた。全長200メートルはある白龍は目を輝かせて口を大きく開き、辺りに響き渡るような咆哮をあげる。
「かき~ん」
空気がびりびりと震えて、周辺は騒然とし始めて、魔物とこの惑星では呼ばれているらしいアストラル体が白龍の力を感じ取り、ドタタと足音荒く逃げていき、空を飛べるものはギャァギャァと鳴き声をあげて羽を羽ばたかせて、あっという間にこの場から離れていく。
うんうんとその雄姿を見て満足するアリスは、ただいまダイショーの街から6時間ほど歩いた場所にある魔の森と呼ばれる場所の入り口に立っていた。
「………なぁなぁ、アリスさん? あの龍の鳴き声はなんとかなりませんかね? 課金って、そりゃたしかに課金アイテムだけどさ? 以前からあの声なのは知っているけどさ………なんか、現実であの咆哮を聞くと悲しくならない? 自分が重課金者だって………」
フンスと鼻息荒くアリスは鏡の問いかけに対して、いつもの如く、無知でしょうがないおっさんフェアリーだなぁと人差し指をふりふりして丁寧に教えてあげる。
「良いですか? 初心者救済アイテムと呼ばれているこのアイテムはかき~んと咆哮するのが特徴なんですよ? あの咆哮を聞いてアストラル体もハンターも思うわけです。あれは課金アイテムの敵だからやばいぞ………と。それに課金アイテムといわれるアイテムを私は山ほど持っているのです。何しろ古代神殿で沢山課金アイテムを見つけた廃課金のアリスちゃんと常々仲間のハンターからは言われていましたから」
ふふんと得意げな表情のアリスへ疲れたような眼を向けて、肩を落とす鏡はゲーム世界の中ではそういう扱いだったのねと嘆息する。たしかにインフレ後、500レベルを超えてしまい、初心者さんお断りを防ぐために導入された課金アイテムででてくる従魔と呼ばれるアストラル体は全てあの咆哮であった。
なるほど、たしかに課金と叫ぶ咆哮ならば、皆が通常より強い敵だとわかるわけだ。ゲームの中では初心者救済アイテムであり、通常の従魔はかっこいい咆哮だったのでネタ扱いとされていただけだったが、ゲームの中では課金の咆哮が脅威だと皆にわかるようになっているのねと納得した。
そんな白龍はアリスが魔の森を開拓するために呼び出した開拓用初心者救済アイテム従魔の白龍さん1号だ。1号までが名前であり、通常の龍は栄光の龍とか破滅の黒龍とか名前がついているので、簡単にわかる優れものであり
「では白龍さん1号、まずは海までの道を作るためにも、ブレスで森を削っていってください」
アリスの命令に、神秘的な瞳を光らせて、またもやかき~んとと咆哮して、パカリと口を大きく開くとぞろりと生えた凶暴そうな牙が見えて、口に光り輝く粒子が集まっていく。
森へと顔を向けて白龍さん1号は口内に収束させた粒子を吐き出す。口の大きさ以上のブレスが生み出されて極光の光は魔の森は一瞬のうちに直線状に道を作るように凍り付き砕け散っていく。
冷気がまるでここまで感じるほどの冷たさであっという間に凍り付き砕け散ってかき氷で覆われた道となった場所を見てから、白龍さん1号はこれでいいの?と確認するようにアリスへと視線を向ける。
うんうんと満足そうにアリスは頷いて、更に白龍さん1号に命令する。
「このまま王都までの一直線の道と途中で丁字路にして、海までの道を作ってください。海側に港つきの拠点を作成する予定ですので」
こくんと大きな体躯に似合わない可愛らしい頷きを白龍さん1号はして、再びブレスを吐き始める。ごおぉとブレスが吐かれて、また森が凍り付き砕け散って道となるのをのんびりと見るアリスである。
そんな白龍さん1号は戦闘力2000の開拓用召喚従魔であり、古代の技術で作られているので現代では再現不能なアイテムだ。
1か月間使用できて、開拓用の土地をジャンジャン作ってくれるが、1か月あれば大体500レベルぐらいにはなるので、アリスも他のハンターも初期にしかあんまり使わなかったアイテムである。
使用の際はマテリアルだけが必要となるがマテリアルはたったの1万で稼働してくれるのでコストパフォーマンスが良いが、戦闘力2000では本当の序盤の開拓にしか使えないので、初心者救済アイテムとして有名でもあった。ちなみに譲渡不能でハンター仲間にあげてもいつの間にか自分の倉庫に戻ってきてしまい、貰ったハンターも勿論使用はできないアイテムであった。
ケチではあるが、こういう時には湯水のように使うゲーム少女は、地球での資源回収を10日程で終えて次はノーマルニュートを連れてくるグリムたちを迎える拠点ですねと、再び地球の騒ぎを放置して異世界へと訪れたのである。
カナタがリベンジ、リベンジ戦をさせてとお願いをしてきたが、あの後、何回か一緒に回収作業を行ったが警察は手を出してこなかったので、カナタはかなりがっかりとしていた。どうも彼女は戦闘民族ではないかとの疑いが微レ存。
まぁ、そんなことはどうでもよくアリスは新たなスキルをポチポチッと取得する。残りスキルポイント2を使い、装備作成と機械工作学を取ったので、これで機動兵器を作成できますねと、ふふふと口元を可愛らしく微笑ませて得意げな表情になる。
貯めていた鉱石類を使用して、ポチポチっとなとお目当ての機動兵器を作成し始めると、空間に光の粒子が集まってきて、シュワシュワと音をたて始める。
工廠がないので、低レベルしか作れないが今は低レベルなので全く問題はない。アリスがわくわくと見ていると光の粒子は実体化をして5メートルぐらいの大きさの小さき機械腕やビーム発射装置が搭載されているメカニカルな未来的なブルドーザーが出現した。
工作用機動兵器であり、これまた自動AI搭載、頑丈が取り柄なだけの拠点製作用だ。ポチポチとボタンを押下して10台同じ機体を作り出して、ズラッと並んだブルドーザーはそれなりに精悍であるように見えた。まぁ、レベル21で作れる代物だ。弱い事はわかっているが機動兵器は生身よりも遥かに耐久力も攻撃力も高い。ブルドーザーは攻撃力はないけど。
「では、ブルドーザーのみなさん、かき氷のように砕け散った氷を素材としてホーリーロードを作成してくださいな。ゴー!」
ビシッと氷でできた道へと紅葉のようにちっこいおててを振りかざすと、ブルドーザーはブルルとエンジン音をたてて、搭載されているビームを放つと氷の残骸が白い石となっていく。それらをブルルンと道に合うように敷き詰めはじめて突き進むのであった。
白い石は白龍さん1号で凍り付いた無機物を素材利用して作られる物である。これは弱いアストラル体が近寄るのを嫌がる聖なる波動を生み出して1000年程持つといわれる代物である。道づくりの素材も用意できる課金アイテム白龍さん1号は凄いというわけである。
この惑星での弱いという定義がわからないので、鏡は一切の魔物が通れなくなるのではと危惧しているが、まぁいっかと考えるのをぶん投げた。通れなくなるというか近寄るのを嫌がるだけで、通ろうと思えば通れるのだ。そして、もはやアリスが開拓すると決めた以上、この周辺の魔の森は環境破壊確定で魔物は大移動をするのはわかりきっている。それがスタンピードとなり他の街を襲わないようにと祈るしかない。
そんなことはゲームでは関係なかったので、まるで気にしないアリスはビームバズーカをスチャッと取り出して
「鏡、自動機動兵器で敵をいくら倒しても経験値は入りません。白龍さん1号を恐れて逃げ出す魔物を片端から倒しますよ」
亜空間ポーチからフライボードを取り出し飛び乗って空中へと飛翔を始める。フライボードは時速80キロまで出せて高度20メートルまで飛べるアイテムである。20レベルを超えたので、移動手段と装備を変えたアリスはこんな感じになった。
総合戦闘力385
装備:ビームバズーカ(攻撃力80)
エネルギーガン(攻撃力30)
バトルブレザー(防御力50)
バトルブーツ(防御力10)
バトルグローブ(防御力10)
縞々の下着(防御力5)
バトルブレザーは一見、学校の制服に見えるが、体の各所に通常は仕舞われており、展開可能な装甲がついているスカート一式の女性用の服である。見かけがハンタースーツではなくなり、ようやく女の子らしく可愛らしい姿となったアリスであった。
かき~んと咆哮して白龍さん1号が森を貫く道を作成していき、化け物から逃れようと多くのアストラル体が急いで逃げるのを空中を移動しながらアリスは眺める。
「大物から狙っていきますよ。雑魚は爆発に巻き込まれて倒れるのを期待します」
眼下を必死に逃げているアストラル体を調べて、感覚的に同じ強さは感じないので、弱いのを見つけるアリス。
この間のアイアンボアのような大きさの猪が足音荒く逃げているので、素早く解析を行う。
『戦闘力310』
「いいですね。貴方を中心に狩っていきましょう。ハンターの花形ですね」
肩に担いだ小柄な身体に合わない大きなビームバズーカを構えて狙い撃つ。
『ハードショット』
与えられるダメージに制限はあるが、ダメージ倍率2倍の20レベルの銃術を発動させる。バズーカの銃口の少し前にビームが生み出されて、通常の2倍程度の大きさとなり空気を切り裂き猪へと向かい、大爆発を起こした。あっという間に猪は高熱にまかれて死に、爆発は周りも巻き込んで高熱を発して、逃げていた雑魚のアストラル体も倒されていく。
「レベル上げです。最初からこうやっておけばよかったですね」
ふんふんと鼻息荒く、単発式なのが弱点ですねとリロードを行い再度他の敵へとバズーカ砲を向けるアリス。ビシュッとビームの白光が再び撃ちだされて、アストラル体がドカンドカンと吹き飛んでいく。
ふははと調子にのって胸を反らして、フライボードから落ちそうになり、あわわと慌てるアホなアリスを見ながら、鏡は呟いた。
「魔王かよ………、酷い光景だな、これ」
冷や汗をかく鏡の前にはアリスがビームバズーカを撃ちまくり、後ろでは白龍さん1号が全てを滅しそうな氷のブレスを吐きまくっているので、絵面が酷いとおっさんフェアリーは嘆息した。
「なにをいっているのですか、鏡は。失礼ですね、ハンターはいつもこんなことしていますよ? 素材狩りに戦艦で森を焼き尽くすなんていつもしていましたし」
平然と怖いことを言うゲームの中の理論で動くアリスは、ここがレベル上げのチャンスですと張り切って敵を倒しまくるのであった。どうやらスタンピードは心配する必要はなさそうであった。




