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2話 ゲーム少女は異世界に立つ

 ぎゃぁぎゃぁと、なんだかうるさいですねと、暗闇の中で少女は思った。今日はオリハルハ宇宙コロニーの港の近くに停泊して、艦の中で寝ていたはずだ。港に停めると停泊料が取られるので、管制官の抗議を無視して、港ぎりぎりに停めて寝ていたはずだ。買い物に行くときだけ、港に停めれば良いナイスアイデアなのに、なぜか他の人は行わない。


 艦にいるのに、なんでうるさいのだろうと疑問に思いながら目を覚ます。ふかふかのベッドで寝ていたはずなのに、なぜか寝ているベッドがジャリジャリとしている。なぜだろう?


 うにゃうにゃと呟きながら、小さなおててで敷布団を触ると、ザラザラとした土の感触がする。


 ん? 変だなと思っていたら、耳元で怒鳴り声がした。


「起きろっ! 起きろよっ! 早く起きないと危険だぞっ!」


 聞いたことの無い声。だけれども危険だと言っている。おかしい、私の危機感知は発動していない。だが危険だと言われたので、即起床して起き上がった。こんな状況はよくあるのだ。危機感知は発動していないにもかかかわらず、突如として敵の大群が来る。ぼんやりしていたら死んでしまう。


 目を覚まして、素早く周囲を見ると見慣れない場所にいた。なんだか古ぼけた今ではどこでも見ない原始的な村だ。木の柵が囲っている村で、その外れに少女は寝ていたのだ。


「ここはどこなのでしょう? 敵に攫われた?」


 疑問に思うと同時に少女は気付く。私は裸だと。真っ裸だ。白い艷やかな肌が目に映る。下着すらも着ていない。なんで裸なんだろうと首を傾げて不思議に思っていたら


「早く装備をしろっ! 目の前の敵が見えないのかっ?」


 さっきから怒鳴っている存在が目の前にいた。おぉ、フェアリーアストラルだよ。これは捕まえて売れば高く売れるかも? でも、フェアリーアストラルは願い事を聞いてあげたら、良いものをくれるよねと興奮した。


 滅多に見ないフェアリーアストラルだ。これは儲かりそうな匂いがぷんぷんするねと、わくわくドキドキで頬を紅潮させる。


 しかも珍しいスーツを着たくたびれたおっさんのフェアリーアストラルだ。20センチぐらいの大きさで羽根は生えていない。ますます珍しい。通常のフェアリーアストラルは光る美少女で透明なトンボのよう羽根を生やしているからだ。


 これは黒字間違いなしですねと、警戒を解こうと笑顔を浮かべようとするが、上手くできない。ちょっと顔が引き攣るだけだった。常日頃、自分の顔立ちをフルに利用するために、演技スキルを活用していたのに。


「頼むから装備をしてくれっ! 早く、早く、ハリー、ハリー!」


 願い事は私が装備をすることらしい。ずっと前に初めて冒険へと旅立つ時に色々教えてくれたフェアリーマテリアルを思い出す。彼女の忠告が自分の今の栄華を作ったのだ。


 とりあえず、自分も真っ裸は嫌なので、マクロを意識する。マクロとは自分の行動を自動化させて、素早く色々な行動をする力だ。その中でも通常装備マクロを意識する。だが、目の前に警告欄が出力されて、エラーとなった。


 内容はと見ると


【スキル、能力のいずれかが足りません】


 そう表示されて焦る。え? なんで? 少女のスキルはマックスだしレベルも最高。史上最強だと各国に言われていたはずなのに。


 慌ててステータスボードを開く。何か呪いでも受けたのかもしれないと思いついたのだ。


 ステータスボードを見ると、驚きの記載だった。


魔風まふう アリス(15歳) 


LV1(-999) next500MP 

ステータスポイント50 スキルポイント11 

種族:ロイヤルニュート

HP:100%

SP:100%

満腹度:20%

状態:体内マテリアル劣化に伴うレベルダウン中

筋力:10

体力:10

器用度:10

超力:10

精神力:10


攻撃力:0

防御力:0


総合戦闘力50


スキル:なし


装備:なし


 ステータスボードの結果に驚愕した。凶悪なマテリアル劣化の呪いを受けている。まさかのレベル1である。


 それならば仕方ない。アリスは常に仕舞っている初期装備を取り出す。亜空間ポーチからいくつかの装備がぽとんと目の前に出てきたので、素早く着込む。


 艶めかしい背徳的な少女の裸体は、取り出した服に隠されて、ポッケに銃を仕舞い込む。装備はこんな感じ。


無限ハンドガン(攻撃力1)

ジャージ(防御力5)

白のぼろい下着(防御力1)


 ネズミをようやく倒せる武器。しかし空気中の炭素を抽出して弾丸が作り出されるので、無限に撃てる夢の武器だ。ジャージとボロい下着はとにかく安い。普通は1000マテリアルするところを、10マテリアルで買える、これまた夢の防具であった。


 昔はずっと雑魚にはこれを使っていた。弾丸代もかからないし、狩りの稼ぎの時間効率が、消耗する弾丸代より劇的に良くなるまでは、ずっと使っていた。御守代わり、そしてチンピラを片付けるのに使っていた銃であり、懐かしい。


 他人のステータスボードは見れないはずなのに、おっさんフェアリーは見えたのであろうか?すぐに叫んだ。


「俺のアリスがこんなに弱く! アリス、マテリアルを使用させて回復させるんだ!」


 マテリアル劣化を治すのは、経験値を稼ぐか、通貨にも使われているマテリアルを経験値分使えば良い。わざわざ敵を倒すまでもない。


 だが、問題がある。凄い困難な問題だと、怒気を纏わせて、その可愛らしい唇を尖らせてアリスは反論する。


「レベルを回復するのに、マテリアルを使用? いくらかかると思っているんですか? 3000億はかかりますよ?」


 途方もない金額。小さな国なら支配できる金額なのだ。


「アリスなら持っているだろう? 所持金を確認しろ!」


 命令口調のおっさんフェアリーに、少しうんざりしながらもステータスの所持金をアリスは映す。


【4.999.999.958.965MP】


 うんうんと、その金額を満足しながら嬉しげに見て、そっとウィンドウを閉める。そしておっさんフェアリーへと真面目な表情をして返答を返した。


「全然足りませんね。私の財布は空に近いです」


「嘘つけっ! 余裕でしょう? 余裕だよね? どう考えても使わない理由はないと思うんだけど?」


 わからない人だなぁと、かぶりをふってアリスは馬鹿にしたように答える。


「亜空間倉庫には、たしかにあるかもしれません。もしかしたら使おうかと思う日がくるかもしれません。たぶん来ないかなと思いますが。ですが、私の財布は10万マテリアルしか入っていませんよ?」


 買い物をするのはこれぐらいで充分。艦の燃料は自前だし、弾丸なども自前だ。作るのに面倒な細かい部品を買う時だけ、使うのである。なので、貴重なマテリアルを使う気は全くない。


「死んじゃうよ? 見て、あの光景。アリス死んじゃうよ?」


 おっさんフェアリーが、叫びながら村へと指差すと、犬の耳と尻尾を生やした人間が武器を携えて村人へと攻撃しているみたいだった。


 たしかに無防備すぎるステータスだ。なので、早速ポチポチとステータスボードのスキル一覧を叩いて、スキルを取得した。


 レベル1であり、ポイントも少ない。ステータスは均等にスキルは必要と思われるものを。


 熟練度が上がればスキルレベルは上がるので、幅広く取得する。ポイントでもスキルレベルは上げられる。スキルレベル=スキルポイントだが、まぁ、普通は取らない。基本となるスキルを取得して、あとは頑張って上げるのだ。あと、マテリアル劣化が回復すれば自動的に昔のスキルレベルまで上がるだろうし。スキルレベルは、自分のレベル以上には上げられないから。


 というわけで、こんな感じのステータス。


筋力:20

体力:20

器用度:20

超力:20

精神力:20


攻撃力:1

防御力:6


総合戦闘力107


スキル:銃術lv1、体術lv1、空間術lv1、念動術lv1、治癒術lv1、解析lv1、演技lv1、機械操作lv1、電子操術lv1、気配感知lv1、状態異常耐性lv1


装備:無限ハンドガン(攻撃力1)

   ジャージ(防御力5)

   白のぼろい下着(防御力1)


 これで大丈夫だと、安心する。だめなら仕方ない。少しずつマテリアルを消費してレベルを回復していこう。凄い嫌だけど。血涙を流すぐらい嫌だけど。


「あぁ〜。なんでこんなにケチなんだ? たしかに俺の行動はケチだったけど、ゲームキャラにも影響していたのか……」


 なんだか、がっかりしているおっさんフェアリー。なんだか疲れた感じも見せているが、おっさんだから別に良いだろう。アリスは女性に優しく男には厳しいのだからして。


 そんなおっさんフェアリーは放置して、村へと顔を向ける。どうやらおっさんフェアリーは村を気にしているみたい。だとしたら、助ければなにかをくれそうだからと期待して。


「準備は完了しました。村長を探して、報酬の確約を貰ったら助けに入りましょう」


 所詮、原始的な装備の盗賊だ。あっさりと倒せるだろうと、報酬を期待して、ニコリと微笑む。もちろん、報酬を確約させなければ、助けるつもりは全くない。世知辛い世の中だからして。


「マジですか? 本当にそんな装備で大丈夫か?」


「大丈夫です。問題ありません」


 演技スキルが発動して、花が咲くような笑顔で答えながら、村へと歩き始めるアリスであった。

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