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ゲームの国の異世界アリス〜異世界と日本を行き来してゲームを楽しみます  作者: バッド
13章 夏休みの大冒険?なゲーム少女

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199/199

199話 共闘するゲーム少女

 島はエイリアン植物が繁茂する世界へと突如として変わった。『宇宙の庭』で星を侵食するマザーシードを元にした悪魔の研究によって作り出されたデビルマザープラントが現れたからである。


 地下港から脱出したアリスたちの前にはどぎつい彩色の花や草が生えている。しかも花は風の刃を放ち、草は蛇のように蠢いていた。根はどんどんと地を這い巡り、侵食していく。


 即ち、見慣れた光景であった。こんな光景はバウンティハンターは腐るほど見てきているので。


 出現した理由はアリスにはわかる。ピンときちゃう。凄腕バウンティハンターにとっては簡単なことだ。今日の夕食がなにかと予想するよりも簡単なことなのだ。


「暴走したんですね。基地を攻められて焦ったボスがデビルマザープラントを稼働。すぐに暴走しちゃったんですよね」


 暴走したデビルマザープラントはその根を伸ばして海まで達する。そして、たっぷりの太陽光と栄養を摂って、星を侵食するために種子を撒き散らす。


 惑星あかさたなは絶体絶命。星の滅亡まで時間はない。


 この危機にアリスはキリリと顔を険しく変えて、真面目な顔で呟く。


「今日は大黒字確定です。エルフニュートとの出会いもあって、次のクエストや交易も期待できます」


 ちっこいおててをふりふりと振って、ダンシングと小柄な可愛らしい体躯を揺らして踊っていた。久しぶりの大黒字のチャンスなのだ。惑星の滅亡危機はバウンティハンターにとってはお祭りなのだ。皆が喜び踊るのだ。


「ちょっとあんた、これはなんなのさ?」


 親友の四葉が呆れた声音で声をかけてくる。もう親友である。アリスからの四葉への好感度はマックスだ。なので、美味しいクエストを用意してくれるはずなのだ。


 とりあえず踊るのは止めて、四葉たちへと向き直ると、ムフンと胸を張るとジャジャーンと手を翳す。


「先日手に入れた古代ゴーレムの生体コアを使用した子です」


 ふぅと息を吸い込み、大声で告げる。


「『ヤマタノオロチ』レベル250の機動兵器にして、コストが殆どかからない奇跡の機体なんですよ」


 えっへんと胸を反らしすぎて、後ろにコロンと倒れてしまい、慣れているので何事もないかのように立ち上がるとパンパンと服の埃をはたき落とす。


「生体コアを8基搭載した機動兵器です。このヤマタノオロチは生体コアを使用しているので、エネルギーも1日に1%自動回復する夢の生体機動兵器なんですよ。凄いですよね」


 目の前には全長30メートル、グリーンのメタリックカラーの装甲をした8つの竜の首を持つヒドラ、いや、有名すぎるほど有名な竜、ヤマタノオロチが立っていた。


 生体機動兵器というだけあって、肉体の2割近い部分がバイオドロイドで補われている機械の竜だ。その威容を見れば、誰もがひれ伏す機動兵器。その名がヤマタノオロチだ。


 こんな感じである。


ヤマタノオロチ

レベル250

耐久力12万

防御力15000

機動力1400

スキル:草薙(植物系統の敵に特攻)、竜鱗(全耐性(中))

竜の牙✕8:12000

草薙息吹(植物特攻):9500

戦闘力244500


「凄いですよね? 何しろ古代神殿で初のバイオ機動兵器。古代生体コアを8個揃えるのは少し大変ですけど、無限のエネルギーを持つ大型機動兵器。バウンティハンターたちはこの機動兵器を手に入れようとガチャをしまくったんですから」


 自慢が大好きなのがバウンティハンター。アリスは廃課金姫と呼ばれるほどの凄腕バウンティハンターだ。なので、大変だったんですと、自慢しいしい説明をしちゃう。


「いい思い出だよな。うん、本当に良い思い出だ」


 さり気なくブーンと鏡が羽虫のように飛んできて、アリスの横で遠い目をして、ウンウンと頷く。懐かしき思い出。


 当時、『初の大型生体機動兵器! その名はヤマタノオロチ、その力を自らの手で確認せよ!』と、運営が大々的に発表した生体機動兵器。


 プレイヤーは狂喜乱舞した。大型機動兵器は湯水のようにマテリアルを使用して、ザルに水を注ぐかのように弾薬を使う金食い虫だ。それが自動回復する生体機動兵器が実装されるのならば、使い倒せるとガチャに群がった。もちろん等級は神級。出る確率は0.001%と言われていた。


 なので、鏡はもちろんガチャをした。廃課金者であるおっさんに確率は意味はない。空になるまで引けばよいのだから。たったの5万程度で手に入るなんて、なんて良心的なんだろうと、ウキウキしながらヤマタノオロチを引いた。良い思い出だ。うんうん。


「では、群がる雑魚はヤマタノオロチで倒します。後ろからついてきてくださいね」


「はぁ、こんなごついもんをあんたはもっとんのか」


 四葉たちはヤマタノオロチの威容に驚き、敵を攻撃する手を止めて後ろへと下がる。


 ふんふんと鼻歌交じりに、アリスは片手を掲げると、ムフンと得意げに指示を出す。課金アイテムの力を皆んなに見せるのは大好きなハンター少女なのだ。


「薙ぎ払え、ヤマタノオロチ!」


「ギャオーン」


 意外と可愛らしい鳴き声をあげて、ヤマタノオロチは8つの口を開くと、紫色の空気を口内に溜めて発射した。扇状に広がる紫色のブレスはデビルマザープラントの花や葉、根っこを腐らせていく。トレントウォーリアⅢたちも8つの口から放たれるブレスを受けて、じわじわと身体が腐り倒れていった。


「おお、トレントたちが簡単に倒されるやん」


 四葉たちはヤマタノオロチのブレスを見て、その威力に瞠目する。さすがは大型機動兵器というだけはある。その威力は圧倒的だった。


 が……。なぜかヤマタノオロチの動きはピタリと止まった。


「なんで、攻撃しないんや?」


 首を傾げて不思議そうに尋ねてくる四葉に、アリスはサッと顔を背ける。


「これ、クールタイムが10分間あるんです」


「ブレスのかい?」


「全体コマンドでですね」


 ん? と四葉は最初、何を言われたのか理解できなかった。だが、その意味をじわじわと理解し始めて、違う意味で驚愕した。


「まさか、高速戦闘が基本の戦闘で10分間に1回しか行動できんのか?」


「そうでーす。でも扇状に攻撃できるから雑魚刈りにはちょうど良いんです」


 唇を尖らせて、気づかれちゃったとアリスは頬を膨らませる。鏡は悔しそうに地団駄を踏む。


『詐欺だったんだ! 大型機動兵器を実装するに辺り、バランス調整のためのテスト機体だったんだ!』


 せっかく手に入れて、いざ使用しようとしたところ、コマンドのクールタイムが10分間であることが判明したのだ。オートであれば、指示を出した行動を繰り返すのだろうと当時ヤマタノオロチを手に入れたプレイヤーは落胆した。落胆したが無限エネルギーとなるのならば、それぐらいの制限はあるのだろうと思っていたのだが……。


 その考えはとてつもなく甘かった。少年漫画的にインフレをするAHO。その運営の酷さをまだ甘く認識していたのだ。


 まさかの指示を出した1回だけしか行動しない酷さ。移動はできるが攻撃は10分間に1回。正直、なにこれ? と、皆は呆然とした。使えねーじゃんと。


 鏡も怒り狂って、運営にクレームのメールを何通も送ったものだ。もっと良い機動兵器を実装してくださいと。


 運営は快くその願いを聞き届けて、武装関連はマテリアルや弾薬を消費する別装備としてカウントするように変更した生体機動兵器を実装することにしたのだった。


 なので、無限エネルギーを持つ歩く粗大ごみ。それが哀しきヤマタノオロチなのである。


「あっはっはっ! なんやそれ? 役立たずやんか」


 ウシシと馬鹿にしてくる四葉。アリスだってわかってはいる。でも、タダという言葉はとにかくアリスの心の琴線を奏でるのだから仕方ないのだ。


 それに加えてバウンティハンターは常にアイテムの使い方を考える。ギャラクシーライブラリが予想もしない使い方をするのが、バウンティハンター。


「ヤマタノオロチの使い方は実はこれではないんです」


 周りのアストラル体はまだまだたくさんいる。さすがに島全体の植物アストラル体を駆逐することは不可能だ。しかし、ボスを倒しに行く間の敵はできるだけエンカウントを増やして倒すつもりである。


「ていっ」


『幻虫香』


 亜空間ポーチからどこにでもある虫かごを取り出すと、ヤマタノオロチへとぶつける。巨体にぶつかった虫かごはあっさりと砕け散り、中からホタルのように光る虫が現れて、胴体に纏わつく。


 その瞬間からヤマタノオロチへと、植物アストラル体の攻撃が降り注いだ。風の刃からビームまで様々な攻撃がヤマタノオロチを襲う。


 爆発が起こり、爆風がヤマタノオロチを覆う。アリスたちは腕を顔の前に掲げて、爆風から防ぐ。


「な、なんやなんや?」


「敵を誘引するアイテムを使いました。本来は生命体にしか使用できないアイテムで、機械属性であるはずの生体機動兵器には使えませんが、ヤマタノオロチだけは生命体扱いになるんです。なので動く誘引装置となるんですよね。そして、もう一つ」


 大型スナイパーライフルをアリスは取り出して、装備する。性能はこんな感じである。


オリハルハ製スナイパーライフルグーニル

攻撃力:11000

補正効果:貫通Ⅳ、衝撃Ⅳ、自動装填Ⅳ、単発式


 取り回しの悪いスナイパーライフルで、アリスの背丈と同じぐらいの銃身の銃だ。アリスにしては珍しい実弾タイプの武器である。だが、今回は必要経費なのだ。一撃で敵を倒せるパワーが欲しいのである。


 むふふと笑って、アリスはスキルを使用する。


『パトリオットスタイル』


 いかなる攻撃でもカウンター攻撃ができるスキルだ。便利に聞こえるが、武技も超術もアイテムすら、このスキルが発動している間は使用不可という1日に1回しか使えない『ガンナー』専用の使い勝手の悪いスキル。ただし解除しなければ、永遠に発動するスキルだ。


『パーティー共振』


 己のスキルの効果をパーティー全体へと広げるスキルをさらに使用する。蒼い粒子がアリスから広がっていき、ヤマタノオロチとスキル効果を広げた。


「これで準備完了です。こうなるとどうなるかというと」


 アリスの身体が勝手に動くと引き金を引く。スナイパーライフルがカチリと音がして、爆発音が響き渡る。銃弾が飛び出すと、空中で鋭角に曲がり、どこかに飛んでいった。


 ズズンと音が少し離れた場所から響き、マテリアルが取得されたと表示される。ふふっと微笑むアリスの指は激しく動き、単発式であるはずのスナイパーライフルは、マシンガンのように激しい連射をする。


 空中をライフル弾が飛んでいき、彼方へと飛んでいくと爆撃にでもあったかのように彼方から爆発音が響く。ヤマタノオロチが攻撃を受ける毎に反応して迎撃をしていくアリス。


「見てください! 雑魚を大量に倒すこのコンボを。これで大黒字は確実ですよ」


 レベル300代で流行ったアストラル稼ぎである。多少レベルの低いアストラル体でも大量に倒せばマウンテン作戦である。ヤマタノオロチは硬い。攻撃ができなくとも、盾となるなら問題はない。大型生体機動兵器にしか使えないコンボだ。


 ちなみにこれ以降の他の生体機動兵器は、生命体ではなく、機械属性扱いに運営は変更した。それがヤマタノオロチで運営が困った末の修正であった。


「ふふふふ。さぁ、どんどん攻撃してきてください。どんどん倒して行きますよ!」


 ズンドコマテリアルと経験値が入って、ログが滝のように流れていく。どんどんと経験値が入ってきて、レベルがどんどん上がる。実弾を使用しても問題はない理由である。


「うへ、なんちゅう酷い倒し方やんけ!」


「バウンティハンターの工夫の一つと言ってください」


 ドン引きする四葉たちを他所に、バウンティハンターアリスは島の地形を変えながら突き進むのであった。




『ねぇ、アリスさんや? 放置していたの怒ってない?』


『なんだか羽虫が五月蝿いですね、ブラックリストに入れても良いでしょうか』


『やっぱり怒ってるよな? 少し放置しすぎたな、悪い謝るから!』


 どこかのコンビの相方が謝ってもいたりした。

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― 新着の感想 ―
やっぱり何度読んでも面白い。
[一言] ウサギが出たので読み直し こっちも好き
[一言] おまけにせっかく要請した救援はエルフの捕虜一人も助けずに帰っちゃったからなにか言われそうですなー。
感想一覧
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