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第九章、温もり

この物語はフィクションで、登場する人物や建物は実際には、存在いたしません。

尚この技は架空であり、実際に物理的に出来る技では有りません。

あれから一ヶ月が過ぎて。



玲菜は真理が経営する美容室に居た。



もう既に真理が担当する玲菜の、



専属のスタイリストであった。



玲菜が好きな黒髪の、



ナチュラルガーリーショートに仕上げた真理は、



玲菜の顔を鏡で見て、



「うんやはり玲菜はショートがお似合いね」と、微笑んだ。



するとハーフで美人な玲菜の周りには、



スタッフ達が集まっていた。



男性スタッフの一人、小島 明俊が、



「いやー、今巷で話題の妖精の髪型は、やはりショートですね。



とても可憐なお姿です」と、褒め言葉に一つ華を添えた。



するとこぞってスタッフ達は、参考にと正面から真横から後ろから、



時にはしゃがみ、時には上から覗いて見たりと様々な角度から、



仕上がったヘアースタイルを伺っていた。



真理、「横浜のアイドルだからね。



噂の彼に愛されて綺麗な姿に成りました」と、褒めた。



それから玲菜は真理の手解きで少し化粧を学ぶと、



その美しさをより 一層引き立たせた。



玲菜のヘアースタイルを仕上げた後は、



店をスタッフに任せて、玲菜と買い物に出掛けた。



ベイエリアのショッピングモールに足を運ぶと、



今度は玲菜の為に服を選んで上げていた。



もう時期春を迎えようとしていたこの季節は、



ショーウィンドウに飾られたマネキンの姿は、春爛漫であった。



真理はブティックで玲菜に似合う服を選んで、



着てる服の上から当てて見ていた。



玲菜も喜んで春らしい、綿麻のガーゼ生地モカ色の、



重ね着用の替えチュニックを好んでいた。



二人は上機嫌で、ショッピングモールを満喫していた。



その後二人はショッピングモールの一角に有る、



おしゃれなカフェに足を運び、竜彦と落ち合っていた。



今日はテーブルを挟んで竜彦が一人で椅子に座り、



その向かい側に玲菜と真理が椅子に座っていた。



真理と玲菜そして竜彦とのひと時に話が弾む。



真理は椅子に座りながら、隣の玲菜を抱き寄せて、



「可愛い、玲菜と禁断の世界に走ろうかな」と、



意味有り気に答えた。



すると竜彦は、「それはさて置き、



スケートの強制調教は簡便してくれよ」と、



冗談を言うと真理は、「ならばベッドでの強制調教は良いの」と、



やはり冗談で返した。



竜彦は、「それは玲菜に聞いてくれ」と、呆れたのであった。



今日はベイエリアのカフェから見える海は、穏やかであった。



竜彦はカフェの窓から見える海を見詰めていた。



真理、「竜彦、大分落ち着いたね」と、語ると竜彦は、



「浜の皆んなに言われるよ」と、答えた。



真理、「落ち着かなければ、



この子が巷で悪く言われるからね」と、悟った。



竜彦は窓から真理の方に顔を向けると、



「別に意識している訳じゃない。



だけど玲菜と暮らす様に成ってからは、



俺も大分穏やかな暮らしが出来る様に成ったから、



そのせいではないのかな」と、感じた。



すると玲菜は、「それは私も同じ事。



追われる身でいつも恐怖に駆られて、警戒していたから、



顔がやつれていたけど、竜彦君と暮らす様に成ってからは、



穏やかな表情に成ったと思うの」と、振り返った。



真理はまた、「毎日妖精をベッドで癒す天使が居るからね」と、



二人同時にからかった。



堪りかねたか竜彦は、「お、お前なー、



この頃欲求不満なんじゃねーのかよ」と、



呆れると真理は、「違うの仲が良いカップルを、



からかうのが趣味なだけ」と、反抗した。



竜彦は、「悪い奴だなまったく」と、嘆いたのであった。



玲菜、「でも本当に私は竜彦君のお陰で、



穏やかな毎日を過ごせるから、



否定は出来ないけど」と、はにかんだ。



真理はここぞとばかりに、



「ほら、妖精が白状したよ」と、



追及すると竜彦は、「玲菜、真理に同調すると、



何処までも突っ込まれるぞ」と、



忠告したが真理は、「玲菜は正直だからね。



竜彦の鼻っ柱折れる材料が出来た様なものだから、



突っ張るのも年貢の納め時だよ」と、得意気に答えた。



竜彦は顔が強張り、「この悪党が」と、嘆いたのであった。



それを見た真理と玲菜は笑ったのであった。


真理は玲菜と竜彦と別れて、一人で職場に向かうのであった。



二人は竜彦が乗って来た、アメリカンバイクに跨り、



竜彦はバイクを走らせていた。



玲菜はバイクの後で、頬を竜彦の背中に埋めて、



竜彦の温もりを感じていた。



そんな玲菜をバイクを運転しながら感じ取る竜彦は、



掛け替えの無い存在に、成って行く思いが更に増して行った。



竜彦は恋愛に対しては不器用だったが、



玲菜に対する愛情は人一倍強かった。



玲菜が求める事は、全て叶えて上げたかった。



それは人々に愛される妖精に成る事を夢見ている、



玲菜の思いを一頻り、叶えて上げたい竜彦ではあったが、



それを脅かす女が居る事に、竜彦は怒りを覚えていた。



だが大人に成った竜彦は、冷静に対処しようと心掛けていた。



今はこの妖精をそっとして上げて置いてくれと、



願うばかりの竜彦は、いつかは真っ向勝負に成ると踏んでいた。



妖精を愛した一人の画家は、その身を守ろうとする様は、



ワルの心を清浄させた思いに、頑なに玲菜を守る覚悟であった。



山下公園に到着するとバイクを下りて、銀杏並木道を歩く二人は、



その風景に溶け込んでいた。



二人の愛に偽りは無い。



ただ竜彦は玲菜の蟠りを、解いて上げる事だけを胸に秘めていた。



自由に舞うスケートリンクの妖精に、邪魔者を寄せ付けまいとする思いは、



玲菜には伝わっていたのであった。



薄化粧の玲菜は少女から大人へと、その身を変化させた事を、



愛した男性に伝えるかの様に、夜はベッドのフィールドで舞い上がる、



やんちゃな妖精であった。



愛される喜びを得た氷の妖精は、寂れたスケートリンクで舞う、



アイスエルフィンである。



次の日、寝室で目が覚めた玲菜は、



裸の体を転がして掛け布団を体に巻いた。



その格好でベッドから降りて、寝室のドアを開けて、



長い廊下を歩いて行き、リビングのドアを開けると、



竜彦がキャンパスに向かって、



絵画の創作活動に打ち込んでいた。



その横に白い掛け布団を巻いた玲菜が、寝ぼけ眼で佇んだ。



それを見た竜彦は微笑んで、「そこの椅子に座ってごらん」と、



指を差して指示すると、玲菜は窓際に置かれていた椅子に座った。



リビングには不規則に複数イーゼルが置かれており、



何も書かれていないキャンパスに、椅子を持って移動すると、



玲菜を見ながらデッサンをし始めた。



その時、玲菜ははにかんで、「まだ寝起きよ、顔が浮腫んでいるわ」と、



敬遠すると竜彦は、「それも君の美しさだよ」と、覆した。



しばらくデッサンしをていると、玲菜の顔が切なく成る。



それは今でも恐怖に駆られている、



元コーチで在った有田 裕子のストーカー行為である。



必死で玲菜にもう一度フィギュアスケートを、



続けさせ様とする行いが、エスカレートして形振り構わず、



バイト先や通っていた、高校などまで押しかけて来ては、



凄むと玲菜はノイローゼに成り、警察にも相談したが裕子には遭えなく、



注意で終わっただけであった。



だがそれからストーカー行為は、激化の意図を辿った。



すると玲菜は裕子から逃避行せざる負えなく成り、



今の玲菜がここに居る。



そんな思いを感じ取る竜彦は徐に、「君のせいじゃない、



強制的に若い十二才の女子スケーターに、



アクセルスクリューを行わせたコーチの失態だ。



君は頑なにコーチの支持に従い、



新しい技を編み出す事を余儀なくされ、



それを忠実に実行しただけに過ぎない」と、



慰めると玲菜の表情が重くなる。



玲菜は、「今でもあの子が真っ逆さまに、



後頭部から落ちて行っと、聞かされた話が頭を過ぎるの。



私が編み出した技で命を落とした事は、私には拭いきれない過去。



それは私の罪でもある」と、後悔だけが頭を過ぎる。



裕子に追われる恐怖はまさに、過去の自分が編み出した技である。



竜彦に愛されれば愛される程、



追いかけて来る恐怖が、玲菜に取っては堪らなかった。



だが竜彦は玲菜の裏腹な思い感じていた為に、



あえて玲菜を目立たせて、スケートを続けさせていた。



それは多くの人々にアイススケーターとして、



魅了させたかったからである。



それは彼女の望みであり輝ける玲菜でいる事が、



玲菜にとっては生きる術で有る為に。



一頻り恐怖と格闘する玲菜は、



いつかこの柵から解放される事を祈るばかりであった。



そんな思いが竜彦に伝わると、竜彦は椅子から立ち上がり、



窓際に椅子を置いて座らせている玲菜の所に行き、



屈んで玲菜にキスをした。



長い長いキスを終えると、



また自分が座っていた、キャンパスの所の椅子に戻って行った。



そして椅子に座りデッサンをし始めると、



竜彦は何気なくキャンパスを見ながら、



「笑ってごらん」と、呟やいた。



玲菜は笑みを浮かべた。



それを見た竜彦も微笑んだ。



そして竜彦は、「苦い過去は誰にでもある。



有れば有る程輝く自分を見出せる。



それは常に皮肉なものさ。



君はその過去を乗り越えて今が在る。



だが更なる試練が待ち受けている。



強く成るんだ。



それを乗り越えて初めて、



本当に妖精が住む世界へと誘われるんだ。



君はもう一人じゃない。



俺がサポートするから、乗り越えよう」と、励ました。



すると玲菜は、「嬉しいけど今は励ますのを止めて。



涙が出ちゃうじゃない。



あなたの作品が台無しよ」と、



敬遠すると竜彦は皮肉にも、「その涙が作品には必要なんだ。



笑顔ばかりでは芸術に成らない、



その涙は宝石寄りも、妖精の涙は価値が高い」と、玲菜の意見を覆した。



その時、玲菜は涙を拭いながら、「意地悪」と、呟き微笑んだのであった。


デッサンを仕上げたか、竜彦はキャンパスに描いている手を止めた。



そして立ち上がりゆっくりとまた、



椅子に座っている玲菜の所に歩いて行くと、



玲菜を見詰めて軽くキスをした。



そして玲菜を抱き上げると、ゆっくりとリビングから出て行った。



長い廊下を玲菜を抱き上げ、



ゆっくりと歩て行くと、先ほど玲菜が寝ていた寝室に辿り着いた。



そっとベッドに玲菜を下ろすと、玲菜は目を瞑った。



竜彦は玲菜に巻かれている掛け布団をそっと解くと、



妖精その物の姿が露になった。



目を瞑る妖精の瞼にそっとキスをすると、



「は」っと、声を出し指を口に銜えた玲菜。



愛するプロローグであった。



竜彦は目を瞑る玲菜の前髪を後ろにはらうと、



自分の頬を玲菜の頬に付けて、



「これから永遠とわの愛の大海原にさ迷うよ」と、



告げると玲菜は小さく頷いた。



優しくソフトな愛撫が徐々に激しく成ると、



玲菜も次第にその身を揺らした。



妖精の禁断のベールに指が触れると、



大人に成った妖精の泉が溢れ出ていた。



その事を妖精に告げると、妖精は体が熱く成る。



時より見せるはにかむ姿は、



まだ残る幼さを伺わせる様であった。



満ち溢れる愛の世界にエスコートされながら、



一つ一つ喜びを叶えている様な行為に、



大事な心をも、全て竜彦に預ける様であった。



激しさを増すばかりの愛に、



悶える玲菜に竜彦は強く愛する事を、止め様とはしない。



むしろ激しさが増して行った。



深い海の底に、玲菜を落とさんとばかりに、



激しい愛を打ち付けると玲菜は、「このまま天国に行きたいの、



あの人に殺されるくらいならば、



愛した男に息の根を止められたい」と、悶えながら呟くと、



竜彦は汗ばみながら、「殺されて堪るか。



お前を守る守り抜く。



お前をその女が傷つける様な事が有るのならば、



俺があの女の息の根を止めてやる」と、闘志に燃えた。



その時、玲菜は深い海の底に落ちて行った。



竜彦は体の動きを止めた。



玲菜と竜彦は一心同体である。



そしてベッドで落ちた妖精を、掛け布団でまたその身を包み、



竜彦は玲菜を見詰めて、思いに更けるのであった。



どの位ベッドに落ちていたのであろうか、



玲菜が目を覚ますと部屋は真っ暗であった。



すると急激にまた孤独が増して行った。



何気なくベッドの上のスタンドの電気を点けると、



一枚の紙が置かれていた。



そこには、[作業ルームに居るよ]と、書かれていた。



竜彦の強い愛情はいつもここに有る。



玲菜を強く愛し目を覚ました時に、孤独にさせない様に施す。



竜彦の親が残して行った邸宅は広く、玲菜が起きて寂しく成り、



竜彦が何処の部屋に居るか探さなくても、



起きてから直ぐ竜彦が居る部屋に辿り着ける様に、



ベッドの上に書置きをして置くのであった。



そんな竜彦の愛情に、心打たれる玲菜であった。



竜彦が言う作業ルームとは、父親が使っていた趣味部屋で、



模型などを作る為に使っていた、



父親のプライベートルームの事であった。



昔食え無かった頃に、アクセサリーを制作して売っていた、



制作ルームの事である。



玲菜は掛け布団を巻いたまま、



言われた部屋に歩いて行き、そっとドアを開けて部屋を伺うと、



小さな円形状の物を加工していた。



そして部屋に入ると竜彦は、その円形状の物を見詰めていた。



それはまさしく指輪であった。



細かい青く光る宝石の粒が鏤めた指輪であった。



竜彦は立ち上がり、



玲菜の前に佇むと、「玲菜、左手を出してごらん」と、指示をする。



玲菜は押さえていた掛け布団の手を放すと、



掛け布団が床に落ちて全裸に成った。



全裸に成った妖精は、竜彦の前に左手を差し出すと、



竜彦は優しく妖精の薬指に指輪を嵌めた。



ぴったりと薬指に指輪が収まった瞬間、



妖精は感動して、自ら竜彦に抱き付き自ら竜彦にキスをした。



そしてキスを終えると、「この瞬間を待ち侘びていたの。



ずっとずっと待ち侘びていたわ」と、告げた。



すると玲菜の瞳から大粒の涙が溢れ出た。



竜彦はその時、妖精を強く抱きしめると、



玲菜は急に感情的に成り、「私はあなたに何もして上げられないの。



あなたに何も与えて上げられない卑怯者。



与えられるばかりで与える事が出来ない、



逃避行を続ける弱くて惨めな、



あなたに甘えるだけの女なの」と、



叫ぶと竜彦は、「俺に与えるのはこれからだよ。



俺が描いた作品で君は俺に与えてくれるはずだ。



感性をそして才能をね」と、悟ると玲菜は今日リビングで、



自分をキャンパスに描いていた事を思い出した。



そして穏やかに成る玲菜は、途方にくれた。



それを感じた竜彦は、床に落ちていた掛け布団を拾い、



妖精に巻き付けて上げると、妖精は玲菜に変わる。



竜彦、「風邪引くよ」と、答えると玲菜は俯き、「氷の妖精は、



寒さには強いの」と、強がった。



竜彦、「意地を張るなよ、誰の妖精なんだ」と、



答えると玲菜は自分の指に嵌められた、



まだ作り立ての指輪の、竜彦の温もりを感じて、「そうね、



今日からあなたの私なのね。



風邪を引くとあなたに、叱られる立場に成ったのね」と、



責任を感じるのであった。



そんな喜びを感じた玲菜は、



竜彦の妻に成る約束をされたと言う思いが、



心に刻まれたのであった。

オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1536491.html

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