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第七章、やんちゃな妖精

この物語はフィクションで、登場する人物や建物は実際には、存在いたしません。

尚この技は架空であり、実際に物理的に出来る技では有りません。


あれから一週間が経ち、玲菜は竜彦の自宅で同棲していた。



徐々にではあるが、古びた大滝スケートリンクは、



玲菜の華麗な滑りが評判となり、



人がリンクに集まる様に成って行った。



玲菜は仕事の合間のほんの数時間だけ、



滑りに来る様になると、スケートリンクに来るお客も、



それに合わせて滑りに来る様に成っていた。



玲菜がリンクを訪れると、滑っている客はリンクから上がり、



玲菜の一人舞台と化していた。



するとここを掃除しているおじさんが、



滑り終えてベンチでコーヒーを飲んでいる、玲菜の横に座った。



おじさん、「玲菜、日に日に体が解れて、



軽快に滑る様に成ったな」と、褒めると玲菜は微笑んで、



「有難う御座います。



今は指導するコーチが居ないから、



緊張が解れて自由に滑れるからだと思います」と、



その理由を説くとおじさんは、「それで良いんだ。



スケートはリズムと感性で滑るものだ。



緊張していると体が硬く成って失敗し易い。



だから束縛されないで、



自由に演技する事が最も重要だ」と、アドバイスをした。



玲菜は一つ会釈して、「私もそう思いました。



監督されると体が緊張して力が入り、



軽快なステップを踏めなく成ります。



今はお客さんに喜んで貰えるから、それがプラスに成って、



軽快に滑る事が出来ます」と、感謝をした。



おじさん、「長い間このリンクを経営しているとな、



色んな事がある。



思い出すな彼女の事を。



このリンクを建設して間も無くだった。



綺麗で若い女の子そう、当時十八才だったな。



このリンクでは有名でいてな。



華麗にこのリンクで舞っていた。



皆お客は彼女を愛した。



彼女は二十歳に成る頃、骨肉腫に掛かり、



足を切断する事に成ってしまった。



そして彼女はこのリンクを去った。



当事お客から大変惜しまれてな。



彼女も辛かったと思うが、それから音沙汰無しだったが、



去ってから 一年後に亡くなったと聞いたよ。



松本 栄子と行ってな、



ホームスケーターだった」と、語り終えると玲菜は俯いた。



そして大滝が、「生まれ変わりかも知れないな」と、



呟くと玲菜は顔を上げて驚いて、「へ」と、 一言呟いた。



大滝、「松本 栄子の、玲菜は生まれ変わりかも知れない」と、



告げると玲菜は、「ずっとおじさんは、



ここの単なるの掃除係りの人かと思ってた。



でも私に凄く優しくアドバイスしてくれるから、



昔はコーチを務めていた人かとも思ったの。



まさかここの設立者であり、支配人だなんて思いもしなかった。



だから私をおじさんは優しく、



見守ってくれているのね」と、悟ると大滝は笑いながら、



「大滝スケートリンクの華が、



このリンクに戻って来てくれたのだから、ワシも嬉しいよ」と、



玲菜を称えると玲菜は、はにかみながら、



「華だなんて言う程では有りません。



ただ私は大会以外で、人に拍手されるなんて事は無かったから、



自由に滑りお客さんに喜ばれる事が、



何よりも私は嬉しいの」と、微笑んだ。



大滝、「今は何処のリンクでも、



ホームスケーターなど存在しないが、



昔はそう、東京オリンピックが開催された頃は、



必ず時間になると華麗に舞う若い女の子の、



ホームフィギュアスケーターが居た。



スケートリンクのお客を盛り上げていたよ。



イージーリスニングと言うのかな、



古い曲で夏の日の恋と言う曲を知っているかな」と、



玲菜に問いかけると玲菜は首を振った。



すると大滝はベンチから立ち上がり、「掛かるかな。



大分使って無かったから8トラ」と、言うと玲菜の前から立ち去り、



リンク場内の扉を開けて出て行った。



玲菜は聞かれた曲も8トラの意味も解らなかった。



大滝は二階のスタッフルームに行くと、アナウンス室に入り、



そこの棚に置かれていた、



古びた音楽のテーププレイヤーの電源を入れた。



ブーンと言う音と共に、電源ランプが点いた。



それは今は廃れてしまった大昔の、



エンドレステープ8トラックの、音楽デッキであった。



そしてプレイヤーの上に重ねられていた、



8トラックのテープを一つ手に取り、



そこに収録されている音楽ナンバーを確認すると、



そのテープをガチャっと挿入して、ボタンをガチャガチャと押して、



掛けたい音楽を選曲した。



すると場内に静かに擦れた音で、音楽が流れて来た。



その曲はまさしく、



パーシー・フェイス・オーケストラが奏でた、夏日の恋であった。

http://www.youtube.com/watch?v=nagDhwBWPEM



玲菜はその曲を耳にすると、自然と氷のリンクに誘われた。



そして緩やかなオープニングに合わせて、



右手を後ろに回し滑り始めた。



すると自然に横を向くとイーグルの体制で、



クルクルと回転した。



しなやかな曲に合わせて、



右に左に蛇行してジャンプしてループを遂げる。



今度は嬉しそうにレイバックスピンを行った。



そしてまた蛇行して、ビールマンスピンを軽くこなし、



しなやかな体の動きに、玲菜の体の曲線が美しかった。



そのまま体制を低く据えると、今度はシットスピンから立ち上がり、



キャメルスピンを二回。



体の力が抜け乗って来た所で、軽くアクセル一回。



また加速を付けてアクセルを二回。



再度加速して大きくジャンプして、トリプルアクセルをこなした。



嬉しそうにリンクの角から角まで滑り、



中央に滑って行くとルッツを一つこなす。



その鮮やかなフォームに挫折感など、少しも見られなかった。



むしろ現役の頃よりも、遥かに動きはしなやかであった。



まるで捕らえられていた妖精が、



自由に成りその喜びを体で、表現している様である。



曲がクライマックスに差し掛かると、玲菜はアクセルを行う体制で、



足を上げずにエッジを、もう片方のエッジにぶつけた瞬間、



大きく舞い上がった。



体が斜めに成りながら真横の体制に成ると、



スクリューの様に七回転した。



着氷する前に体を起こして、見事転ばずに着氷に成功。



その嬉しさにはしゃぐ姿は、氷の上のやんちゃな妖精、



まさにアイスエルフィンであった。



そして曲がフェードアウトされると、



リンクの中央で止まり、ポーズを決めたのであった。


演技を終えるとここに居た 十数人程度客は、



拍手をしてその演技を 称えたのであった。



その中に竜彦も居た。



玲菜は竜彦の姿を見ると、竜彦の前に滑って行った。



そしてリンク上と床の上との縁を挟んで、



二人は軽くキスを交した。



それを見た観客は、冷やかしたのであった。



するとこの場内に大滝がやって来て、「見事だったな。



お帰りこのリンクに戻って来てくれた、美しい妖精さん。



戻って来る事を信じて、こんなにボロボロに成るまで、



このリンクを残して置いたよ」と、



告げると玲菜は、決して実感は沸かなかったが、



「有難う、私が輝けるリンクを与えてくれた事に、



感謝します」と、礼を告げた。



竜彦も微笑み、「要約柵から解放されて、



輝ける場所を見つけたな」と、



語ると玲菜はリンクから上がり、自ら竜彦の胸に飛び込んだ。



玲菜はその時、何も答えずただ竜彦の温もりを、



感じていたのであった。



そして玲菜と竜彦の愛は、深まって行くのであった。





十二月二十四日を迎えた今日は。



近所の子供達、雄太と翔太それに弘美を交えて、



昼間から竜彦の自宅で、クリスマスパーティーを行っていた。



雄太と翔太は芝生の庭で竜彦と一緒に、プロレスごっこであった。



広い芝生に竜彦は横たわり、翔太がプロレスの技を掛けたいた。



弘美はリビングに来て、玲菜と一緒にクリスマスの準備をしていた。



玲菜はテーブルに料理を並べていると、



弘美が玲菜の顔を見詰めていた。



それに気づいた玲菜は、そっと弘美の前に行って膝を床に付けて、



弘美を抱きしめた。



そして玲菜は、「ごめんねお姉ちゃん、兄ちゃんが必要なの。



お姉ちゃんが横取りしちゃったね。



その分これから弘美ちゃんに、いっぱい繕うからね。



許して」と、詫びいると弘美は、



「お姉ちゃん兄ちゃんの彼女にしては、初めてのタイプだよ。



今まで兄ちゃんが私の店に連れて来る女って、生意気で香水が臭くて、



大嫌いな奴ばかりだった。



でもお姉ちゃんは凄く綺麗でまじめで、香水臭く無いし、



兄ちゃんに優しいし私にも優しいし、



きっと良いお嫁さんに成るよ」と、



称えてくれたのであった。



それを聞いた玲菜はその時、弘美を強く抱きしめるのであった。



弘美は肌で竜彦に対する玲菜の強い愛を、感じるのであった。



玲菜は弘美を放すと弘美を見詰めて、



「有難う私も精一杯兄ちゃんを大事にするね。



私も弘美ちゃんと同じ様に、兄ちゃんに甘える一方だけど、



これからは兄ちゃんに 精一杯愛情注ぐつもりなの、



私の事を褒めてくれて有難う」と、告げると弘美は微笑んで、



何も言わずに居間から大きなガラス窓を開けて、



庭に出ると竜彦の所に行き、



竜彦の前で、「いい女手に入れたじゃないか、



大事にしろよ」と、言って竜彦の尻を一つ叩いた。



それを聞いた竜彦は、



「お前なー、いい加減生意気なのも大概にしとけよ」と、



軽く弘美の頭に拳骨を食らわした。



すると弘美は頭を手で押さえて、「痛いなあ、



パパに言い付けてやるからな」と、激怒した。



竜彦も負けじと、「言い付ければばいいじゃねーかー。



逆にお前が悪いってパパからも、拳骨食らわされるぜ」と、



言い返すと弘美は更に激怒して、「兄ちゃんだってちっちゃい頃は、



手が付けられない程、生意気なガキだったってパパが言ってたぞ」と、



対抗すると竜彦は呆れ顔で、「お前程じゃねーよ」と、言い返した。



その事で言い争う二人を見て、



その微笑ましさに、幸せを噛み締める玲菜であった。


その夜、二人は自宅近くの小さな教会に出向いていた。



今日は大事な日、キリスト誕生の日のイブである。



それはキリスト、カトリック教徒にとっては大事な日。



大勢の人々が教会に集まっていた。



二人は祭壇で十字を切り指を組んで、お祈りをした。



竜彦の自宅に戻ると、



リビングのソファーで竜彦に抱かれていた玲菜。



時より竜彦の胸に顔を埋めて、甘える玲菜であった。



竜彦、「今日、弘美に何を言っていたんだ。



あいつがあんな事言うなんて初めてだ。



いつも俺が秋山さんの店に女を連れて行くと、



弘美は嫌って奥に引っ込むが、



玲菜の事をいい女なんて口にする様では、



玲菜が弘美に何か感謝したか、何か謝ったかだと思うが」と、



勘の良い所で、弘美が竜彦に告げた玲菜の評価の要素を探ると、



玲菜は甘えながら、「うん、『ごめんねお姉ちゃん、兄ちゃんが必要なの。



お姉ちゃんが横取りしちゃったね。



その分これから弘美ちゃんに、いっぱい繕うからね。



許して』と、言ったら弘美ちゃん、



『お姉ちゃん兄ちゃんの、初めての女タイプだよ。



今まで兄ちゃんが私の店に連れて来る女って、



生意気で香水が臭くて、私の大嫌いな奴ばかりだった。



でもお姉ちゃんは凄く綺麗でまじめで、香水臭く無いし、



兄ちゃんに優しいし私にも優しいし、



きっと良いお嫁さんに成るよ』って、



称えてくれたの」と、告げた。



それを聞いた竜彦は、「あいつ、日本中で生意気なガキ集めて、



順位決めたら優勝するだろうな」と、冗談交じりに呆れたのであった。



その時、玲菜は笑いながら、「兄ちゃんも相当ちっちゃい頃は、



生意気だったと聞いたけど」と、からかうと竜彦は我を振り返り、



「そうかな、あそこまで生意気だったとは思えないが、



秋山の兄貴がそう言うんだから、



そうだったかもな」と、思い返した。



玲菜、「でも嬉しかった。



ずっと竜彦君を慕ってた子に、褒められた事が。



何よりあの子に竜彦君との結婚を、



認められた事も私にとっては、



万感な思いだった」と、胸の内を明かすと竜彦は、



「あいつ今まで見せて来た女が、女だっただけに、



玲菜が輝いて見えている様だな。



ろくでなしな女ばかりあいつに見せていたから、



まじめに俺や弘美に接する玲菜が、



繊細に見えるのだと思う」と、



顧みると玲菜は、「私も大して変わらない。



スケート人生から足を洗いたくて逃亡中の身よ。



私がしっかりとコーチに、スケートを止める事を宣言して、



納得が行くまで話し合わなくてはならないのに、



こうして逃避行している。



そしてあなたの腕に抱かれて、また他の土地でスケートをして、



私もろくでなしなの」と、自ら貶すと竜彦は、「それは違うな。



玲菜はコーチに、所属していたチームだけを引退する事を、



宣言したが根本的にスケート事態を、



止めるとは言っていないのだろ。



コーチは玲菜をチームに無理矢理にでも、引き戻そうとする。



挙句の果てはストーカー行為まで発展している。



警察に言っても事件が起きた訳では無いので、



精々コーチには注意で終わるだろう。



だから玲菜も感じているのだろう、



もしかしたら自分の身に、何が起きるか分らない」と、悟った。



玲菜はその時、体が震え出し、「そうよ、スケートは続けたい、



でもオリンピックには出たくは無い。



精々全国大会でそこそこの成績で終わり、



後はテーマパークのアイスショーの、一員に成れれば良かった。



私の夢はテーマパークのアイスショーの、お姫様に成る事だった。



決してメダルを取る為に、スケートを続けたい訳では無かった。



それがいつの間にかコーチに欲を掻かれて、



オリンピック候補に成る様指示されたけど、



あの子が亡くなってから私は、彼女に付いて行けなくなった。



次は私が彼女に殺されるのではないか」と、



心の内を語ると竜彦は、「どちらかだな、



俺も同じ立場に成った事がある」と、告げると竜彦の過去を、



少しだけ知っている玲菜が、



「遣るか遣られるか、それか逃亡するか」と、呟いた。



竜彦、「そのどれかを選択して、



俺は攻撃する事を選択したが、そのどれを選択したとしても、



決して良い結果は出なかったと思う」と、悟った。



玲菜は、「ならばどうすればいいの」と、



問うと竜彦は、「だがその三つしか無いと、



考えた事が浅はかだった。



選択の余地はまだ有る。



まずは相手の行動をビデオカメラに取り、証拠を確保する。



そして弁護士に相談する。



もう一つは悩み相談ホットラインのなどの、



公的な相談機関で対策を練って貰う。



もう一つは仲間だ。



良い仲間に味方に成って貰い、皆んなで玲菜を守って貰う」。



それを聞いた玲菜は、「今の私ね」と、呟いたのであった。



竜彦、「仕方がないさ。



俺は玲菜があそこでスケートを行う事は賛成ではない。



玲菜がスケートを諦めても良いと思ってもいる。



いつか彼女は嗅ぎ付けると思うから。



でも今の玲菜は輝いている。



これから横浜市民の大勢の人々に、愛されるだろう。



玲菜は変わった。



緊張の糸が解けて、今はコーチの為にスケートを行うのではなく、



自分があそこで滑ると少数では有るが喜ばれ、



称えられる存在に成りつつあるから、滑る事が楽しい。



だから俺は止めさせない。



俺だけの玲菜では味方は付かない。



皆んなの玲菜に成れば、味方は大勢出来る。



もう玲菜は一人じゃない。



この街の誰もが知っている、大滝スケートリンクの華になるんだ。



彼女が嗅ぎ付けて来たら、俺達を含む大勢の人に守って貰うんだ。



その道筋が一番これからの玲菜に取って、



明るい未来を辿れると思う」と、悟ると玲菜は感動して、



大粒の涙が頬を伝ったのであった。


年が明けて 一月の半ば頃の事であった。



噂は瞬く間に広がり、



午後三時になると格安スケートリンクだけに、



滑りに来る目的だけでは無く、



メインは玲菜の演技でリンクを訪れる客であった。



その器量と華麗な滑りに翻弄され、



大勢のお客が詰め掛ける様に成っていた、



大滝スケートリンクであった。



玲菜は夜の居酒屋のバイトを辞めて、コンビニのバイト一本に絞り、



竜彦の収入で暮らせる様に成り、もう既に新妻の様であった。



竜彦は絵画の制作活動に着手して人々を魅了させ、



玲菜はスケートで人々を魅了させていた。



その噂は浜では瞬く間に人々に、轟いていたのであった。



玲菜は昼間はスケートに打ち込み、夜は竜彦に抱かれる日々が続いた。



玲菜は抱かれる度に、軽快な滑りを演出して行った。



そして美しく成って行く。



笑顔が絶えない玲菜はその愛らしさに、



浜の若い男性のアイドルと成って行った。



次第に竜彦も以前とは違い、落ち着いた格好に成って行った。



すると浜の若い女性も近寄り易くも成り、



竜彦もプライベートでは、



言い寄る女性も少なくは無かったが、



その玲菜の美しさに翻弄されて、女性も諦め気味だった。



玲菜はリンクで曲に合わせて、自由に滑り舞回る。



巷では氷の上のやんちゃな妖精と言われて、評判が立って行った。



次第にアイスエルフィンと、その評判の名が変わった。



その影には彼女が居た。



それは真理である。



夜、大滝スケートリンクでは特別に、お客を呼んでくれる玲菜の為に、



電気を点けて玲菜だけリンクで練習させてくれた。



真理は七時で仕事を終えると、



リンクに出向いて滑る玲菜を見詰めて、コーチしていた。



だが玲菜の元コーチとは違い、



真理は玲菜を優しく指導するのであった。



真理、「そうよ玲菜ちゃん、もっとリラックスして、



無理しないの疲れたら休んで」と、



声を掛けると玲菜は微笑みながら、真理の所に滑って来た。



玲菜、「真理さんもう呼び捨てで良いですよ」と、



声を掛けると真理は、「そっかそれなばら呼び捨てで、



バリバリ特訓するからな」と、からかった。



玲菜はその時、笑いながら、「急にですか」と、



問いかけると真理は意地悪そうな顔付きで、



「そうよバリバリ行くわよ」と、脅かした。



そんな二人を遠くで見詰める大滝と竜彦が居た。



玲菜はリンクから上がると、真理は玲菜を抱きしめた。



そして、「凄く滑りが華麗に成ったね。



人気が上がる訳ね」と、褒め称えた。



そこへ大滝と竜彦もやって来た。



すると竜彦は、「最初に出会った時に比べると見違えるだろ。



表情が明るくなったし、滑りに硬さが無い」。



大滝、「ワシが最初にこの子をここで見つけた時は、



下を向いてただ、ベンチに座っているだけで心配したよ。



だが今は確かに見違える様だ」と、微笑んだ。



意地悪な真理は、「誰かがベッドで、



毎日愛して上げるからだよきっと」と、からかった。



すると竜彦は、「おめーもなー、



言う事大して弘美と変わらないじゃねーか。



惚れただの張っただの、弘美を生意気にさせたのは、



お前じゃねーのか」と、疑った。



真理、「弘美は親譲りだよ。



私はただ単に竜彦をからかいたいだけ」と、



念を押すと竜彦は顔が強張り、「同じじゃねーか。



弘美もお前も、俺をからかうのが好きなだけだ」と、言い返した。



真理はほくそえんで、「ひっひひひ」と、笑ったのであった。



そして真理は玲菜を放して、今度は竜彦が玲菜を抱きしめた。



それを見た真理は、「冗談抜きでその表情を作り出しているのは、



竜彦のお陰だよ」と、告げると竜彦は、



「俺だけのせいじゃないさ、喜んでくれるお客皆んなが、



玲菜の笑顔を作り出しているのさ」と、



悟る玲菜は竜彦に抱き締められながら、「うん、その通りだよ。



真理さんや竜彦君それに応援してくれる、



お客さんのお陰で私は、



リンクで舞う事が出来るの」と、呟いたのであった。



そんな玲菜に微笑む仲間達であった。



玲菜は次の日、バイト先のコンビニでレジ係りをしていた。



すると例の男連中がまた、玲菜に言い寄っていた。



ベリーショートの金髪の男、「竜彦さんの彼女だとは思わなかったけど、



まあそれはそれで置いといて、結構楽しいんだけどな」と、



相変わらずのしつこい男は、夜のクラブに誘いたくて、



玲菜を口説いていた。



そして茶髪のロン毛の男は、「居酒屋空海辞めたんだ。



今度プライベートで呑みに行かない。



竜彦さんは竜彦さんで置いといて、



コンパ出てよきっと来てくれれば俺達奢るし、



なんなら居酒屋では物足り無ければ、イタリアンでもいいよ。



全てこちらが持つからどう」と、やはり迫っていた。



困り果てる玲菜であったが、後ろから男性が、「申し訳無いのだけど、



レジ済ませたいので、レジ空けて貰えませんか」と、



尋ねられると男性二人はしかめっ面で、「はあー」と、振り向いた。



すると竜彦だった。



急に驚いて態度を変える男性二人は直立不動で、



金髪の男が焦りながら、「あ、あの、いやその、あ、あー、



これには訳が有りまして」と、



弁明すると茶髪のロン毛の男も焦りながら、



「あ、あは、あははは、今日は休みですか」と、伺った。



竜彦は冷静な態度で、「仕事帰りなんだ。



で、レジ済ませたいのだがいいかな」と、



伺うと男達は同時に、「はい済みません」と、



頭を下げてそそくさ、立ち去ったのであった。



玲菜にレジで清算して貰っている最中竜彦が、「あいつら、



俺が咎めるも何も言う前に、



その内に婦女暴行罪で捕まるぜ」と、



嘆くと玲菜は、「もう今日限りでここを辞めて、



秋山さんの所で、働く事に成ったからいいの」と、呟いたのであった。



オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1536491.html

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