べーへー クエ
しっかり脳に日本を打ち込む、子供を狙った卑劣なる洗脳工作。日本政府とその内部に蠢く恐るべき帝国たちは将来の臣民を増やす為脈動を続けていた。
それは何も銃後を狙った戦略爆撃だけではない。戦争と言う一代消費行為が行われ、そこに全米から兵士たちが集まるのだから、企業帝国たちは色めき立つ。
古来より兵営と戦場は文化の揺籃の地であった。例を挙げれば明治日本に置いてボタンの締め方も靴の履き方知らない江戸時代に生きていた層に洋装・洋食が広まったのは帝国陸海軍に入営した兵士たちからであり、かの有名なスパムスケッチを産み、スパムメールの語源となった缶入り肉詰めは二次大戦時における米国からの対英レンドリースの一環で、餃子やらラーメンあたりも敗戦日本が大陸から持ち帰った食文化だ(所説あり)
屈強な兵士とて永遠に兵士で居る訳がない。彼らも何れ除隊し故郷に戻り新しい生活を始める。その時、彼らは兵営や戦地で学んだ文化文物を故郷に持ち帰るのである。中華一番デスマッチに蛮族枠である米国を支援する事に決めた日本政府はこの機会を利用する事に決めた。
日本政府は衣食住、パンツから車まで米国を支援し、日本漬けになった米兵にお帰り頂こうというのだ。この時代、人種差別が厳然と存在し、未来国家で別枠だとは言え、未だ東アジアの島国と此方を舐める連中に、日本良い国凄い国世界に冠たるメイドインジャパンと覚え込んでもらう。
これは何も米国だけを狙った物ではない。日本は対中戦で米国を本格的に支援する事を打ち出したと同時に、ある時払いの催促なし無利子無担保でのレンドリースを「対中戦」参加国に行うと発表したので、共産圏以外の各国はこれに飛びついたのだ。
英仏は元より、両側を敵に挟まれたポーランド、ソ連が怖いフィンランド、黄色人種からの支援と言うのは気に食わないが金と技術くれるならの低地諸国、何とイタリアからも義勇軍名目で来ていると言うのが驚きだ。この世界の統領はドイツは赤くなるし、フランスは殺す目で睨んで来ているので臨機応変かつ柔軟に戦略を変える心算のようなのだ。
この雑多な軍団に小火器を主とした武器弾薬、移動車両、前述した衣食住を全て提供する。そう体と軍籍以外はパンツまで日本製品にしようと言うのだ。これに沸き上がっているのは朝鮮・台湾である。正直な所、民生品は兎も角、日本国にとってクソの役にも立たない二線級装備のラインを引く余裕はない。国内軍需産業は自衛隊装備の研究・維持・量産にヒーヒー言っているからだ。
そこで一定の人数がおり、新規の工場を立てる余裕がある台湾府・朝鮮自治政府は打ってつけなのだ。現在両地方は空前の軍需バブルに湧いている。どう考えてもそんな物は後で酷いしっぺ返しを受ける諸刃の剣なのだが、軽工業が主体の朝鮮政府に取っては気にしてられない。
それにである。何かあったら宗主国に泣きつけば良い。朝鮮自治政府首班は元より、政権中枢は日本を訪れその力を知っている。自分達の負債など彼らに取って毛ほどでも無いと悪い意味で理解してしまったたのだ。これが後に新世代で「やっぱ政府は役に立たないから日本と完全合邦しようぜ」派閥を産み、戦後酷い政治危機を産むのはまだ先の話である。
兎も角、この様な次第で中華の大地に降り立った将兵たちは日本国のおもてなしを存分に受ける事になったのである。
「何これ?」
米国満州派遣軍への増援として送り込まれたワイアット一等兵は目の前に置かれた、食い物だと言うペラペラの丸い物体に疑問符を浮かべていた。カンザス生れの彼にしたら見た事も聞いた事もない食べ物。これを補給担当の日本人は「アメさんだったらこれだよね!」と出してきたのだ。
「これだよね!じゃねえよ。なんだよコレ」
チャイナ派遣が決まって直ぐ、小銃も持たない着の身着のままでカリフォルニアに輸送され、輸送船は?となった所で彼の属する中隊は巨大飛行場に降り立った日本製巨人機に詰め込まれ、そのままマンチュリアの大地に半日かからずに到着してしまった。そして気付けば箱型簡易住居のズラリと並んだ宿営地に放りだされ、中隊長より
「え~、諸官ら「も」困惑しているようだが、我が中隊はこの場にて装備品の受領と訓練を行い、その後実戦配備となる。先ずは現地に慣れる事に集中して貰いたい。なお必要物品は日本軍が一括して担当する為、諸官らは需品将校を通してこれを適宜配布される手はずになっているので心配しない様に」
との訓示である。もう?しか出ない。昨日まで祖国に居たのにもうチャイナなんて嘘だろ?自分も含め皆頬をつねって夢かと思っている。諸官ら「も」なんていうからには中隊長も本部要員の将校たちも混乱しているのだろう。
そうは行っても腹は減る。取り敢えず飯と言う事になったのだが、炊事班も一切の調理器具を持っていないと来た。さて困ったとなった時に現れたのが日本人たちである。何でも後方にいる間は一切の面倒は彼らが見ると言う。彼らは民間人で軍から仕事を請け負っているとも言っていた。
そこで出されたのが件のペラペラなのだ。どうやら薄い丸型のパンにチーズ、トマト、サラミらしき物、香草等が乗っているのだが、生まれてこの方見た事ない物なので、どうやって食べた物か?見渡せば彼の小隊に属する人間は殆どが疑問符を浮かべ、同時に出されたノンアルコールビール(馬鹿に美味い、本当にノンアルコール?)にばかり手を付けている。
「わ~お!こんな場所でマルゲリータが食えるとはな!」
とそんな中でウメェウメェとがっついているのは、同期のペペ一等兵だ。そんな彼をワイアットは肘で突く。
「なんだよ?メシ位落ち着いて食わせてくれよ」
「お前良く訳の分かんねぇもん食えるな。これなんだか知ってんのか?」
「知ってるも何もピッツァだよピッツァ。御袋が良く作ってくれたってけなぁ」
「御袋さんが?」
「そっ。心配すんなよ、こりゃナポリの郷土料理。ウメェぞ食ってみろよ」
「ナポリ?そりゃどこだ?聞いた事ねぇぞ?アメリカにそんな場所あるのか?」
「馬鹿。ナポリはイタリアの地名だよ。まあ、ピッツァなんて売ってるのはアメリカじゃ俺の地元のニューヨークか後はイタリア系が多い所だけだから、知らねぇのも無理ねぇわな」
「はえ~。イタリア料理ねぇ。なんでジャップは俺たちならこれだろ何ていってたんだ?」
「知るかよ。兎に角冷めない内に食え。飛ぶぞ」
「飛ぶってなんだよ…」
そう言われて、随分と軽い白い合成樹脂で出来たナイフで切り分けるワイアット一等兵。周りで二人の会話を盗み聞きしていた小隊員たちもオズオズと手を付け始める。
「駄目だよ、アンタたちそうチマチマと食べてたら。コイツは切り分けたら豪快に手で行くんだ。ホラ勇気だしていきなよ。伍長どの、男でしょ?」
「分かったよ…おお以外と美味いな。随分と洒落た味だ」
「そうでしょ?こんな地球の裏側でこう美味い物が食えるなら、夕飯も期待できますよ。ラザニア辺りがでないかぁ」
「また分けの分からん名前を…俺は豪華なら焼いた肉と卵をだして欲しいね」
「これだもんなぁ…俺みたいなイタリア系は肩身が狭いよ」
そう言いつつもピッツァマルゲリータを平らげた、ペペ一等兵はお代わり自由と言う事で再度配食を取りに席を立った。ウキウキと席に戻ってきた彼が、メイドインジャパン製ピザの代表格であるツナマヨピザを口にしてむせ返ったのはこの後直ぐの事である。
※ピザの米国全土への普及は第二次大戦でイタリアに上陸した米兵が本国に広めた事から。それまではイタリア人コミュニティでのローカルフードだった。アメリカ人ならピザだろは未来人の勝手な思い込み。
他にもフライドチキン出してキレられたり、ハンバーガーを手で持って食べると説明して「そんな下品な事できるか!!!」と言われたりしてジェネレーションギャップを受け、大手チェーン系列は戦略を改め本土奪還世界征服に邁進する事する事になる。




