棒状の 物を咥えて ベトベトに…
「おや可愛いお嬢さん、お兄さんとお姉さんと祭を見に来たのかい♪」
「違うのじゃ、ランドは妾の伴侶なのじゃ♪」
「アッハッハコレは失礼、お嬢さんは既にお嫁さんだったか♪」
「うむ、わかれば良いのじゃ。ところでこの店では何を売ってるのじゃ?」
「ウチで売ってるのは「チュロス」という食べ物だよ。まぁ棒状のドーナツみたいなもんだね♪」
「おぉ、良い匂いなのじゃ。ランド、妾とコレを一緒に食べるのじゃ♪」
「いいぞリル、だけど丸々食べると直ぐにお腹がいっぱいになるから…一つを買って三人で分けような。ベルゼーもそれていいか?」
「わかったのじゃ♪」
「はい♪」
「よし、とゆーわけで一つで申し訳ないが売ってくれるか?」
「構わないよ、祭ってのは色々見て楽しむもんだからね♪」
「そう言ってくれると助かる、じゃあコレ代金な。半端だから釣りは要らないよ」
「兄さん太っ腹だね、毎度あり。分けるなら手を汚さないように包み紙をつけとくよ♪」
「助かる、じゃあ二人ともどうぞ♪」
「わ~い《なのじゃ》♪」
ランドは店員からチュロスと包み紙を受け取ると、それを同じ位の長さで三等分してリルカルトとベルゼーに手渡した。
リルカルトとベルゼーはランドから受け取ったチュロスを手にすると、とても幸せそうな顔をしてそれを食べ始める。
「おいひい《美味しい》のじゃ、外はサクサクで中はシットリとしたクリームの甘みがくるのじゃ♪」モグモグ…
「美味しいですねリルカルト様、コレは生地にシロップを染み込ませてるのでしょうか♪」モグモグ…
ランドはそう言いながら幸せそうに食べる二人を見て、自身もチュロスを齧りつつぼんやりと考える。
(一応二人とは「婚約者」という事になってるが、こうして見ると年の離れた妹達を引率してる兄のようだな。…まぁ二人が幸せそうだから良いんだけど…ん?)チラッ…
「……たねぇ…」
「ママ……たい……」
「……に……のかな?」
ボソボソ…
ランドはそんな事を心の中で思っていると、少しずつ周りの通行人達が自分達を見ている事に気がつく。
(なんだろ、周りの通行人が俺達を見てるような…?)
ランドが不思議そうな表情を浮かべていると、食べ終えたリルカルトがランドに「ランド〜♪」とご機嫌で声をかけてくる事で「まぁ敵意は感じないしいいか…」と気にするのを止めた。
「チュロスはとても美味しかったのじゃ、コレは帰ったら父上にも作ってとお願いしてみるのじゃ♪」ニパァッ
実年齢は200を越えているとはいえ、人間換算ならまだ幼い少女のリルカルトの笑顔は、純粋無垢でとても眩しかった。
その眩しい笑顔の少女の口には、チュロスの破片が僅かに付いていたが…
「それなら良かったよ、ガリアスさんならきっとうまく作れるだろう。あとリル…口に破片が付いてるぞほら…」ゴシゴシ…
ランドは笑顔のリルカルトにそう返しながら、ハンカチを取り出してリルカルトの口を拭いた。
「おぉすまぬのランド♪…うむ、父上は料理が得意じゃからな。説明したら直ぐに再現してくれると思うのじゃ♪」
リルカルトのその言葉に、ランドは「きっと出来るさ♪」と考えながら、その様子と共に色々と考える。
(あれ、そういえばリルと婚約者という事はガリアスさんって俺の義父になるのか。だとするとバルゼルトさんは義理の祖母となるわけで……だとしたらもしかしてこんな…)
〜ランドの想像〜
ガリアス(エプロン着けて三角巾装着)『よし、あとはコレをこちらの油で焦げないように揚げるだけだ。味付けはシンプルに蜂蜜とシナモン…いや、きな粉や黒蜜をつけるのもまた趣があるか。だとすれば一つ一つは少し短めにして……』
ランド『ガリアスお義父さん、何を作ってるんです?』
ガリアス『おぉランドか、実はリルからチュロスを作ってくれと頼まれてな♪』
ランド『それはいいですね、何かお手伝いする事はありますか?』
ガリアス『じゃあ紅茶を淹れるための湯を沸かして…「何してるんだい?」…あっ母上』
ランド『バルゼルトお祖母さん、実はお義父さんが…「誰がお祖母さんだ!」……ゴォッ!……っと危なっ!?』サッ…!
ガリアス『ちょっ…ランド急に躱したら…ギャァァァーー!!』
バルゼルト『あっすまんガリアス…』
ランド『お…お義父さんが丸焦げに…あとチュロスも木炭みたいにっ!?』
〜ランドの想像終わり〜
(………バルゼルトさんは今後もバルゼルトさんと呼ぶことにしよう。あとガリアスさんの事も…次にお会いした時にどう呼んだらいいか確認はしておこう…)
ランドは内心で密かにそう決めると、リルカルトの口を拭いたハンカチを仕舞った。
「さて、他にも面白そうな店は一杯あるだろうしな。今日は楽しむぞリル♪」
「勿論なのじゃ、ベルゼー次のお店を見に行くのじゃ♪」
「ま…待ってくださいリルカルト様、私もすぐに食べ終え…あっ!?」ブニュッ…!!
リルカルトの言葉に焦ったベルゼーは、チュロスを持っていた手に力が入り…
「ふぇぇ…クリームが顔に飛びましたぁ…」
チュロスの中のクリームが飛んでしまい、顔にクリームをつけたベルゼーがそんな言葉を口にする。
※因みにその時周りの一部の男性が「うっ…///」と小さく呟いたが、ランド達は気が付かなかった。
「ベルゼー…少しは落ち着かぬか…」
「リルカルト様が急かしたんですよぉ…」
リルカルトの言葉にベルゼーはそう呟く。
そんな二人を見ながら、ランドは「ほらベルゼーも拭いてあげるから…」と声をかけてベルゼーの顔についたクリームをハンカチで拭いた。
「うぅ…すいませんランドさん…」
「いいからいいから、ほら次はどの店を見ようか?」
「リルカルト様とランドさんにお任せします」
「そうか、まぁ途中で気になるものを目にしたら言ってくれ」
「はい、ありがとう御座いますランドさん♪」
「それじゃあ他にも見て周るのじゃ♪」
「そうですねリルカルト様、祭を楽しみましょう♪」
「それじゃあ行こうか、二人とも俺から逸れるなよ。まぁ手を繋いでるから大丈夫だとは思うけどな」
「のじゃ《はい》♪」
そう言葉を交わしながら三人は、祭を全力で楽しむために歩いて行くのだった。
因みに、ランドが気にするのを止めた通行人達がなにを話してたかというと…
「あの娘、すごくいい笑顔で美味しそうに食べてたねぇ…」
「ママ、私もあの屋台のお菓子食べたい」
「あんなに幸せそうな顔して…よほど美味しいのかな…?」
とか、ベルゼーがチュロスを強く握ってしまった時は…
「くっ…不覚にもあの姉っぽい娘の顔にクリームが飛んだ時…変な気持ちが。……ちょっと彼女に渡してみようかな///」
「「すいません、私達にも売ってください」」
なんてやり取りが行われ、屋台は売上が上がったのだった。
因みにその頃ランド達はというと…
「にしてもベルゼーよ、お主は慌てすぎなのじゃ。妾でも(チュロスを)口にしたのは初めてでも少し口に(破片が)ついただけじゃというに…」
「だ…だってぇリルカルト様…うっかり(チュロスを)握ったら、いきなり(クリームが)顔に飛んできて驚いたんですもん。それで少しベタつきましたし…」
「驚いたって…お主は普段から棒状の物(刺突剣)を握ってるではないか?」
「そ…それ(戦闘)とは感触が違うんですよぉ。(敵の返り血が)顔にかかることなんてめったにないですし…」
「情けないのぉ…今度しっかりとランドにその辺の(物を握る力)加減を指導してもらうのじゃ」
「わ…わかりました、ランドさん協力してくれますか?」
「そりゃあ別に構わないけど…」
「あ…ありがとう御座いますぅ〜」
「ベルゼーよ、その時は妾も一緒に見させてもらうからの」
「リルカルト様に見られながらはちょっと(ドジしたのを見られるのが)恥ずかしいんですけど」
「なにを言っとるか、妾は既に何度も(お主が刺突剣を)握ってるのは見ておるではないか?」
「そうですけど、ランドさんと(手合わせを)してるのはまだ(自分が勘違いした時の)一回だけですし…」
何気なくそんな会話をしていたので、三人とすれ違う通行人達に…
((この三人、なんかとんでもない会話をしてないか…?))
と一部の人に勘ぐられたりしていたが、それに気付くことなく祭を賑わいの中を歩くのだった。
リン「タイトルと後半の会話に悪意がある!」
作者「さーせん♪」
リルカルト「…?…ランドと妾達の会話のどこが変なのかや?」




