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マイペースな冒険者は今日も受付嬢に怒られる  作者: のんびり生きていきたいおっさん


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勝負の決着と女の勘

「せいやぁぁぁぁ!!」ブォンブォンブォン…!!


「なんのっ…!」ガッ…ギン…カァン…!


二本の太刀を巧みに振るってランドを攻めたてるヤスツナと、そんなヤスツナの攻撃を先程よりも上手く捌くランドの攻防は続く。


互いに暫く譲らない攻防をした後、ヤスツナは一度ランドから距離を置き「ふぅ…」と息を吐く。


「はっはっは、やっぱりアンタスゲェや。さっきまでとは動きが全然違うじゃねぇか♪」


「ご要望に答えられたらならなによりだ」


「おうよ、アンタ程の腕のやつはこれまでの人生で初めてだぜ♪」


「そいつは良かったな」


「だがまだまだ食い足りねぇ、俺の食欲はこんなもんじゃねぇぞ♪」


「ならもうちょっと摘んでいけ、くれぐれも胸焼けを起こすなよ?」


「言われなくてもそのつもりだぜ♪」


ヤスツナとランドがそう言葉を交わして再度構えようとしたその時…


「あ…その前にちょっとタンマ…」


ランドがヤスツナに対して「待った」をかける。


「なんだよ疲れたのか?」


ヤスツナがそうランドに問いかけると、ランドは「違う違う」と手を振る。


「さっき俺が落としたそこの太刀だけど、邪魔になるから片付けていいか?」


そう言ってランドは、舞台に転がる自分が先程まで使っていたツバキからの借り物の太刀を指さす。


「あぁ…なんだそんなことか。いいぜ、確かにうっかり踏んじまったりしたら興冷めだしな」


ヤスツナはランドの言葉に了承すると構えを解く。


「悪いな」


ランドはヤスツナにそう礼を言うと、転がる太刀を拾って鞘に収める。


そしてそれを舞台の下で見学していたランとイブキのところに持って行った。


「ラン、悪いがこれを持っててくれないか。と言ってももともとランの家のものなんだけど」


「エエよ、ランドはんの本気見れるんならお安い御用や♪」


ランドの言葉にランはそう返すとランドから太刀を受け取る。


「ありがとな」


「構へん構へん、ところでランドはん一つ聞いてもエエかな?」


「ん、なんだ?」


ランの言葉にランドがそう返すと、ランは「さっきスミレ達の親父さんが言うてたんやけどな…」と前置いて、ランドの耳元に口を近づけて言葉を続ける。


「ランドはん、今年の九月にどこぞの武術大会で優勝しとらん?」ボソッ…


「…」


ランからの質問にランドは一瞬無言になるが、(まぁ…別に隠すことでもないかな、あのペテン王子のとこさえ伏せとけば…)と思うとそっとランに耳打ちした。


「生憎と鷹の仮面は人に渡してもう無いがな♪」ボソッ


「ひゃっ…///」ゾクッ…


ランは仮面越しでも自分の耳にランドの吐息が少しかかったので変な声が出る。


「どうした?」


ランが変な声を出したので、ランドはランにそう声をかける。


「な…なんでもあれへんよ、ほらヤスツナはんが待っとるから頑張ってきてな(ラ…ランドはんの息が耳に///)」


「?…まぁいいか、それじゃあ頑張ってランの勝利を確定させよう」


そう言うとランドは、ランとイブキに背を向けて…ヤスツナに「持たせたな、続きだ」と口にして構えた。


「よっしゃあ、ここからは互いに全力だ。俺はアンタを殺す気で挑むから、そっちも俺を殺す気で来な♪」


ヤスツナはランドにそう返すとイキイキとした顔で構えた。


「殺すって…お前さんちょっと血の気が多すぎないか?」


ヤスツナの言葉にランドがそう返すと、ヤスツナは「気にすんなよ俺の性分だ♪」と返す。


「命を掛けての勝負こそ武士の誉れ、死す時も相手に背を向けず、その身果てても前を向くべし。武士の恥は主君の恥ってもんだ」


「主君って、アンタ冒険者なら主もなにもないだろ…?」


ランドがそう突っ込むとヤスツナは「あ、そういやそうだな」と呟く。


「確かに俺には仕える主はいねーや、となると雇い主にってことになるのかな?」


ヤスツナの言葉にランドは「その辺はアンタの判断でいいとは思うが…」と口にしてから「でも考えてみろ?」と言葉を続ける。


「今アンタを雇ってるのはあのアホな馬鹿息子だぞ、アイツに命かけるのか?」


ランドの言葉にヤスツナは「あっ!」と声を出す。


「そうだった、今俺はアイツに雇われてんだ。うーん、幾ら俺でもアイツのために死ぬのは嫌かなぁ…でもお前さんとの戦いは楽しみたいし…」


そう言って悩み始めるヤスツナにランドは…


(俺が言うのもアレだが、裏表の無いやつだな。自分に正直な奴だしいい奴そうだし…)


と少し親近感を抱いた。


「まぁ…あのアホに命かけるかはともかくとして、アンタを満足させる戦いが出来るようにこちらも努力するよ」


ヤスツナにランドがそう言うと、ヤスツナは悩んでいるのを止めてハッとする。


「おぉそうだな、とりあえずあのアホ息子の今後はどうでもいいや。今はとにかくアンタとの勝負だ、全力でやらせておらうとするぜ♪」


切り替えの早いヤスツナは、そう言うとしっかりと構え直す。


「御期待に添えるよう頑張るよ…」


「おうよ、それじゃあ行くぜぇ。殺す気で来いやーー♪」


そうして再度二人は、互いの武器を手にこれまでよりも激しい戦闘を繰り広げた。


「おらららららぁーー!」


「はぁぁぁぁぁぁぁーー!」


ガン…ギィン…ギャリン…ガァン…!


二人の武器のぶつかる音が周りに響き渡る中、観客達はその凄まじい試合に息を飲む。


「す…すげぇ…」


「さっきよりも早くてなにがなにやら解んねぇ…」


「ヤスツナの実力は勿論知ってるが、あの鎧武者も武器を替えてから一段と凄みが増してるな…」


そんな声が所々から聞こえてくる中、ヤスツナのパーティーメンバーの三人も…二人の戦いを見ながら互いに言葉を交わしていた。


「アイツの武器、さっきコンゴウとハヤテが聞いたっていう奴の特徴に一致してるわよね…」


「だな…やはりコンゴウの推測は間違ってないようだ…」


「あぁ…出来れば違ってて欲しかったが…」


「どうするの、ヤスツナに話す?」


「いや、後で良いだろう。今は集中させてやれ」


「だな、あんなに楽しそうなヤスツナは久しぶりだしな」


三人はランドの正体に気が付いたようだが、自分達のリーダーがあれ程楽しそうに戦っていることに水を差すことになると考え、決着がつくまで見守ることにした。


そしてランドの正体について、三人以外にも気が付きつつある人物達がいた。


それはたまたまこの場にやって来て、先程蕎麦屋のヤヒチから「試合」の話を聞いたダラス帝国から流れてきた冒険者達である。


「あ…あの鎧のやつ、武器を替えてから更に強くなってねぇか?」


「あぁ…見映え的にはさっきの太刀のほうが似合ってたが、あのロングソードを持ってからの動きが段違いだ…」


「つーかよ、あのロングソードだけどどっかで見たような気が…」


「良かった、そんな気がしたのは俺だけじゃないんだな」


そんな会話をしていた冒険者達は、ランドの剣を見てとある事を思い出していた。


少し前に自分達の出場した武術大会にいた男…鷹の仮面を着けて予選から規格外の行動で覇者となった男、その男が手にしていた武器と…今舞台で凄まじい攻防を繰り広げる鎧武者の手にしている武器は瓜二つと言う言葉では収まらないほど酷似していた。


「「まさかアイツって…」」


冒険者達が自分達の予想を口にしようとしたその時、舞台の上での戦闘も佳境に入っていた。


ランドを攻めていたヤスツナが、自身の攻撃を防いだランドに対して勝負に出たのだ。


「こいつを防げるか!」


「っ!?」


ヤスツナは両手に持っていた太刀を順手から逆手に持ち替えると、左右からでなく同方向から二本の纏めてランドに振りかざす。


「五月雨円舞!!」


自身の身体を軸として、凄まじい速度の回転を加えた二本の斬撃がランドに襲いかかる。


ランドは咄嗟にその斬撃をラエルソードで受けるが、その勢いに目を見開く。


(今までの攻撃よりも早くてかなり重い、無理に力尽くで止めると彼の腕も壊しかねないな…となると…)


ランドはその攻撃を弾くのではなく、ラエルソードを片手に持ち替えると力を抜いた。


「なにっ!?」


ヤスツナは突然の緩みに…先程と同じ様に体制を崩しかけた。


その瞬間をランドが見逃す筈もなく、ランドは即座に空いた片手でヤスツナの外側にある手首を掴んだ。


「しまっ…!」


「どおりゃあー!」ブォン…!


「のわぁー!」


ランドは手首を掴むとそのまま「合気道」の要領でヤスツナを放り投げる。


「ぐはっ!」ビタンッ!


背中から舞台に打ち付けられたヤスツナは、うめき声をあげる。


そして次の瞬間には…手の空いたもう片方のランドの手にした剣が自身の顔に振り下ろされるのを視界に入れた。


自身の眼前に迫るランドの剣を見たヤスツナは、今の体制からそれを防ぐ手立ては無いことを察した。


(参った、まさか剣や体術だけでなく合気道まで使いこなせるとは。ふっ…こいつの剣なら俺も真っ二つだな、アイツ等には悪い事しちまったな…先に死ぬなんてよ…)


そう覚悟を決めたヤスツナは目を閉じたが…一向に自分の頭に剣が刺さる気配がない。


「?」


不思議に思ったヤスツナが目を開けると、自分の目前でランドの剣は刃を止めていた。


「…どうして刃を止めた、俺は殺す気で来いと言ったハズだぜ?」


ヤスツナがランドにそう尋ねると、ランドは剣を引いてから口を開く。


「殺す理由がないしな、俺は決着がつけば特に拘らん」


「それは俺に対する哀れみか、生かされるのは武士の恥と思わないのか?」


「悪いが俺はこの国の人間じゃないからな、武士の何たるかなんて知らん。それに出来ればなるべく人に恨まれるような事はしたくない」


「恨みだと、俺を殺して誰が恨むと言うんだ?」


ランドの言葉の意味がわからずヤスツナはそう尋ねる。


そんなヤスツナにランドは「ほら…」とある方向に親指をクイッと向けた。


「?」


ヤスツナがランドの指さす方向に視線を向けるとそこには…


「…」ガチャ…


「…」チャキ…


「…」ズラッ…


コンゴウ、ハヤテ、タマモの三人がそれぞれの得物を手にランドに向かって鋭い視線を向けていた。


「お前…勝手に命かけてるんじゃねぇよ…」


「全くだ、お前が居なくなると依頼が難しくなるだろうが…」


「馬鹿…勝手にいなくなろうとしないでよ!」


「お前ら…」


三人の様子にヤスツナがそう口にすると、ランドはヤスツナに声を掛ける。


「な…アンタを斬ったら彼等に恨まれそうだ、なによりSランク冒険者が減るってのはこの国の不利益にしかならないしな」


そう言うとランドは寝そべっているヤスツナに手を差し出して言葉を続ける。


「良い仲間を持ったな、生きてりゃまた俺とも勝負できるかもしれないぞ。また機会があれば手合わせしよう、俺の知り合いには腕利きも沢山いる。機会があれば紹介するよ、生きてりゃもっと色んな経験も出来るってもんだ」


「へっ…アンタ変わってるな」


ヤスツナはそう言って笑うとランドの手を取り立ち上がる。


「今回は俺の負けだ、だけど次やる時は負けないぜ♪」


「いつでも来い、だけどあまり仲間を呆れさせるなよ?」


「はは、それは約束できねぇな。俺は戦うのが好きだからよ♪」


ランドの言葉にヤスツナはそう言って笑う。


ヤスツナの言葉にランドは「まぁ…他人の俺が強く言うのもアレだが…」と言ってから忠告する。


「あまりハメを外したり、良かれと思ってやりすぎると…知り合いに目茶苦茶怒られて恐ろしい目をみるぞ?」


ランドがそう言うとヤスツナは「なんだそりゃ?」と首を傾げる。


「アンタほどの人でも怒られるのか?」


「その人達は力ではどうにもならんし…苦労かけるからな」


「アンタでも敵わないのか?」


「まぁな…」


そう言うランドにヤスツナは「はは、やっぱり世界は広いんだなぁ♪」と楽しそうだった。


「アンタが敵わない人か、いつかその人等にも会いたいもんだ♪」


「まぁ機会があればな…」


こうして…ワガマのイチャモンから始まった「決闘」はランドの勝利で幕を下ろした。


そしてランドはふと…自分の頭の中で「敵わない」と口にした時に浮かんだ人の事を考える。


(シシリアは元気かな…帰る前に彼女にもお土産を買わなくちゃ。他の皆にもなにか買っていこうかなぁ…)


そんな事をボンヤリと考えるのだった。


― ― ―


同時期、グラン王国の冒険者ギルドでは…


「クチュン!」


「おやシシリアさん風邪ですか?」


「寒くなってきましたものね…」


シシリアが休憩中にやって来たアリスとサトラとお茶をしていた。


「いえ、なんか鼻がムズムズしまして。誰か噂でもしてるんでしょうか?」


「噂ですか、案外ランド様かもしれませんね」


「そ…そうですかね(もしそうならちょっと嬉しいな///)」


サトラの言葉にシシリアがそう口にすると、アリスが「なんと羨ましい!」と口を開く。


「ランドさんに噂されるなんてなんと羨ましいんですかシシリアさん、私なんかクシャミなんて滅多に出ないですからね。私もランドさんに気にかけられたいです!」


「アリス様は馬鹿だから風邪ひきませんからね…」


「サトラ、聴こえてるわよ!」


「聴こえるように言ってますから」


「むきぃー」


なにやら言い合いを始めたエルフの女王と従者にシシリアは「あはは…」と苦笑いする。


「まぁ噂とかはともかく、ランドさんも早く帰ってきてくれるといいですね」


シシリアの言葉に二人は「そうですね」と同意する。


「なにはともあれ、ランドさんが怪我なく帰ってきてくださればなによりです」


「まぁランド様が怪我をするなんてことそうそう無いでしょうけどね…」


アリスとサトラの言葉にシシリアも「ですよね」と頷く。


「まぁ…私としてはランドさんの場合、また無自覚に女性を惚れさせてないかとかの方が心配ですが…」


シシリアの言葉に二人は「確かに」と同意する。


「ランドさんはその辺はとことん無自覚ですからね(私もその一人ですが///)」


「ランド様ですからね(私も気になってしまいますね///)…」


そんな会話をしているのだった。


そしてそんな三人の懸念は…


「やはりランドさんは目茶苦茶ですね、祠の時は愛用の武器でも無かったのにあの強さだったんですから。愛用の武器だと更に規格外ですねラン様…ってどうしました?」


「はぁ〜〜///」


イブキがそう口にしてランの方を見ると…ランは顔を赤くしてランドを見つめていた。


(やっぱりランドはんカッコええなぁ、祠で強さは充分見たつもりやったけど…あの剣を手にした姿もまたカッコええなぁ///)


周りはランドの鎧姿しか見てないが、ランはランドの本来の姿を知っているので…先程までの激しい戦いでも鎧越しにランドの姿が想像できた。


整った顔立ちの男性が、美しく輝く剣を手に自分の為に戦ってくれている姿は…ランのような多感な女性にとって嬉しい限りだった。


(アカンな、見るたびにウチ…ランドはんの事が好きになっていくわ///)


バッチリと的中しているのだった。

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