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「ほらほらどうしたぁ、早く本気出さねーと終わっちまうぞ!」
ヤスツナはランドにそう言いながら、自身の両手に握る一対の太刀を凄まじい勢いで振りかざす。
「せっかちな奴だ、この国の剣士はサイガさんのような冷静かつ落ち着いた奴ばかりと思ってたが…お前さんはどうにも違うようだな」
ランドはヤスツナの猛攻を防ぎながらそう言葉を返す。
「わっはっはっ、あの爺さんのような「もの静かな実力者」って雰囲気は俺には向いてねぇからな!」
ヤスツナは笑ってそう返すと、一度ランドから距離を置く。
「俺は自分が楽しく強い奴と手合わせできたらそれで満足だ。まぁそれの度が過ぎて時折仲間には怒られちまうがな♪」
「アンタの仲間は大変そうだな…さっきの三人に少し同情するよ」
「反論ができねぇ♪」
ヤスツナはランドの言葉に笑いながらそう返すと、一度自身の太刀を鞘に仕舞った。
「どうした、止めるのか?」
ランドがそう言うとヤスツナは「馬鹿言うなよ♪」と返すと懐から紐を取り出す。
そしてその紐を、自身の服の袖から背中に向けて回すとギュッと縛った。
「何してるんだ(空気が変わった…?)」
ランドがそう尋ねると、ヤスツナは「なに、ちょっとした願掛けってやつよ♪」と返す。
「お前さんは強い、これまで俺が戦ってきた奴の中でも断トツだ。そんな相手に「本気で来い」と言っておきながら、こっちが本気を出さねぇのも失礼ってもんだからな♪」
「へぇ…それはまた…」
ランドはヤスツナの言葉にそう呟くと言葉を続ける。
「人には本気で来いと言っといて、そちらも本気じゃなかったわけか…」
「悪ぃ悪ぃ、お前さんの力を知りたかったんだよ♪」
ヤスツナはそう言うと改めて両手に太刀を握る。
「ここからは俺も本気だ、Sランクパーティー「剣舞の心得」がリーダー…「双剣演舞のヤスツナ」全力でいかせてもらうぜ。アンタの本気を出させるために…殺す気で行くぞ!」
そう言ってヤスツナは構えをとった。
ランドはヤスツナの雰囲気の変化とその構えから、ヤスツナが本気であることを察して考える。
(本気だな…だとすればこちらとしてもしっかりと応えるべきか)
「普段はただの冒険者、今はランお嬢様の護衛剣士ランド。流石にもう少し生きていたいから全力で抵抗させてもらおう」
そう言って太刀を構える。
「ランドか良い名だな…お前のような強者は初めてだ、それじゃあ……行くぜ!!」
そう言うとヤスツナは、これまでとは段違いの速度と気迫でランドに襲い掛かった。
「おりゃおりゃおりゃ――!」ブォンブォンブォンブォン…
(速い…それに一太刀毎の重さもある、型も不規則だから癖も読みにくいし、こんな男がいるとは…)
ランドはヤスツナの猛攻に、改めてヤスツナの実力の凄さを体感していた。
― ― ―
「…良かった、まだ決着はついてないみたいだわ」
「だな、にしてもなんだこの物凄い音は?」
「ヤスツナとあの男との戦闘音だ、どうやら俺の推測は間違ってないようだな…」
ガッ…ギィン…ガンギン…ガァァン!!
三人ががそんな会話をしている間も、舞台の方では凄まじい金属音が鳴り続ける。
三人が舞台の下に辿り着くと、舞台の上ではヤスツナがランドに猛攻を仕掛けていた。
ランドもヤスツナの猛攻に対応するように太刀を振るい、互いの斬撃がぶつかるごとに凄まじい金属音が起こる。
「ははっ、ホントにすげぇなお前。ここまでの実力者だとは思わなかったぜ、一体どんな鍛錬をしたのか尊敬するぜ♪」
「尊敬するなら少し落ち着いてくれないかな?」
「やなこった、こんな楽しい経験に手が抜けるかよ♪」
「だろうな…」
そんなやり取りをしながら舞台の上では凄まじい攻防が繰り広げられていた。
三人は舞台の攻防を見て目を大きく見開く。
「ヤスツナの奴…襷を絞めてるぞ、完全に本気だな。むしろそのままあの男を殺すまである勢いだ」
「ヤスツナが本気を出すなんて…あの鎧武者本当に目茶苦茶ね…」
ハヤテとタマモの言葉に、コンゴウは舞台上の二人の戦闘に驚愕しつつ口を開く。
「とりあえず、俺達に出来るのはアイツの戦いの勝利を願うことだけだな…」
「「そうね(だな)」」
コンゴウの言葉に二人はそう返すと舞台の様子を見守ることにした。
三人がそんな会話をしている頃、周りの観客達も二人の攻防に驚愕していた。
「あの鎧武者、本当にスゲェな」
「だがヤスツナも…アイツに遅れは取ってないぞ」
「あのヤスツナとここまでやり合える奴がいるとは…」
「こんな試合見たことがねぇ!」
観客席がそんな興奮に震えている中、ダラス帝国から流れてきた冒険者達は二人の戦いにアングリと口を開けていた。
「どっちも化け物だ…」
「俺達なんかまだまだだよな…」
「ベットレイ王子や近衛騎士のガーネットみたいな奴が他所の国にもいるとはな…」
「だな、あの時のランドって奴も化け物だったが…」
そう呟いて世界の広さを改めて思い知っていた。
そしてランやイブキもまた、二人の戦いの様子に目を見開いていた。
「ランドはんが強いのは知ってたけど、やっぱりヤスツナはんも凄いんやな…」
「ですね、流石はSランクパーティーのリーダーなだけのことはあります…」
「ランドはん、負けたりせぇへんよな?」
「ラン様が信じなくてどうするのですか?」
「せやね…ここまで来たらもうランドはんを信じるしかないわな」
「そうですよ、私達はランドさんを信じましょう」
「うん(ランドはん、どうか怪我せんといてな…)」
様々なところで色んな考えが交錯する中、舞台の上で動きがあった。
「せいりゃあ――!」ブォン…!
「むっ…」ガギッ…!
ヤスツナが左右から交差するように放った斬撃を、ランドが交差する所で太刀を入れて受けた瞬間…
「コイツでどうだ!」バッ…!
「どわっ!?」ガンッ…!
ヤスツナは先程のランドの体術(蹴り)の仕返しなのか、バク転をするように回るとその勢いでランドの太刀を握る手に蹴りを入れた。
予想していなかったヤスツナの動きに、ランドの手から太刀が離れて宙を舞う。
「っと、しまった…」
「ここだぁーー!!」ブンッ…!
太刀が宙を舞い、ランドがそう呟いた瞬間…ヤスツナは再びランドに向かって両手の太刀を構えると斬り掛かった。
丸腰になったランドにヤスツナの太刀が迫る。
「「勝った!」」
「「ランドはん(さん)!!」」
ヤスツナの仲間とラン達がそう叫んだ次の瞬間…
ガッギィィィィィン!!
これまでの中でも一番凄まじい金属音が周りに響いた。
「なっ…!?」
自分の勝利かと考えていたヤスツナは、目の前の状況に初めて驚きの声を出す。
「驚いた…まさかこれ程の腕とはな。にしてもやはり、慣れ親しんだ武器というのは手にしっくりとするもんだ…」
そんなヤスツナにランドは続けて言葉を投げる。
「アンタからの拝観料、確かに支払いを確認した。ここからは料金に見合うものをお見せするためにこちらも務めよう…」
そう言葉にしたランドの手には久しぶりの戦闘による昂りか、それともここ数日他の武器に自身の役目を奪われていた事へのヤキモチか、それとも久しぶりに主の手に戻れた喜びか…まるで感情を持つように青く輝くロングソード…「ラエルソード」が握られていた。
「へぇ…それがアンタの本気の気配か。つーことは、俺はアンタの本気を見るに充分な支払いが出来たってことだな?」
ランドの手にした剣を見たヤスツナは、その美しさと手にした途端から変わったランドの気配を感じ取りそう口にする。
「あぁ、充分なお支払いを頂いたので…ここからは試食ではなく正規品をご堪能いただこう」
そう言うとランドは、ラエルソードを両手にしっかりと握りしめて構えた。
「よっしゃあ、それじゃあ遠慮なく味あわせて貰うとするぜ。俺はなかなか大食漢だぞ♪」
ヤスツナもランドにそう返すと改めて太刀を構えた。
「腹を壊さないようにな…」
「そう言うのは俺に「もう食えない」と言わせてから口にしな♪」
そう言うとヤスツナはランドに向かって攻撃を再開した。




